恋を患い猛毒を呑む 彼女となんて、出会わなければよかった。
首元の煩わしいループタイを取り、それでも抜けない息苦しさからフリルブラウスのボタンも外す。
ベッドに倒れ込んだ拍子に、握っていた水仙の花束が散らばった。
青く燃える炎の髪に黄色い花弁が沈んでいるのを、彼は愛おしそうに目を細めて見つめる。
「そのまま燃えちゃえばいいのに」
鼻で笑いながら、まだ手に残る花の束をギュッと握った。
大きな窓の外にはまだ日が差していて、彼はそれから顔を背ける。わざわざ陽当たりのいいこの場所を寝室にと選んだのは自分だというのに、いまはその眩しさが恨めしい。
その気持ちを汲んでか、わずかに空が翳る。
青白い腕が何かを探すようにシーツの上を滑った。そこにあるはずだった温もりはなく、手触りの良い冷たい布がただただ彼の指の熱を奪う。
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