君という光、夢見たあとで。正直に言おう。かなりドキドキしている。
ユキから「遊びに行こう」と誘われたのは「波間にkiss」のダンスレッスン後の休憩中だった。
サラサラの髪を見つめながら、しばし固まる。
「一度二階堂さんと遊んでみたかったんだ。二階堂さん可愛いし、持ってるものも可愛いからどういう物を使ってるのかなって。」
そう言ってにこっと笑う。私は尚固まっていたが、ようやく口から出た言葉は、
「ま、まぁ別にいいけど?」
それだけだった。ユキはにっこりと笑いながら、言葉を紡いだ。
「やった!楽しみ!」
詳細はLINEで、と言ってユキは自動販売機へと向かった。今まで友人という友人を作らなかった(面倒くさいから)ので、どう接していいか分からない。どういう反応をしていいか分からなかった。それで出た言葉が、上の言葉だった。
自動販売機で水を買い、隣に設置されていた椅子に座る。そういえば、ミステリーキッスのメンバーとどこかに行くなんてなかったような。
気づくとニヤついている私がいた。私は自分の頬を両手で叩いた。
ユキと遊ぶ日。白のシャツにオーバーオール。帽子を被って私はユキが来るのを改札口で待っていた。
待ち合わせまではまだ30分ある。何をそんなにはしゃいでいるんだ自分。
30分後、ユキは時間きっちりにやってきた。
「ごめんね。待った?」
「いや、別に?」
「そっか、よかった。どこかでお茶でもしよっか。」
そう言って、改札口向かいのコーヒーショップに入る。私はホットコーヒー、ユキはトーストにアイスティを注文し、席に座る。
「でも良かった。二階堂さん」
「ルイ」
「え?」
「ルイって呼んで。」
ユキは少しきょとんとしながらまたにっこり笑った。
「ルイ」
「ひゃ///」
「自分で呼んでって言ったのに」
そう言ってユキは笑った。ユキの笑顔はなんとなく私の心をくすぐった。ユキは続ける。
「じゃあ私のことはユキって呼んでね。」
「…ユキ」
「なぁに、ルイ?」
「恥ずかしい…」
「慣れるよ、その内。」
ちょっとアイスティのおかわり貰ってくるね、とユキが席を立った。私はコーヒーを啜った。今市村さんは何をしてるんだろう。
「お待たせ。ここのアイスティ美味しいんだ。」
「コーヒーも美味しいね。」
「そうでしょ?豆からこだわってるんだって。」
「そうなんだ…。」
しばしの沈黙。ユキは外を見ていた。
「今日は」
「ん?」
「今日はどこ行く?」
「んー…。カラオケ行こっか」
そういうわけでカラオケに来た。ユキは楽しそうに、最近ハマっている(私も知っている)アニメのオープニングテーマを歌っていた。
「やっぱりユキは歌上手いね」
「ルイ程じゃないよ。ほら、次ルイの番だよ。」
「えー…私何歌っていいか…」
「超常恋現象聴きたいな」
「えー…分かった…」
…どうやらオタ芸も出来るらしいユキは頭を振りながらオタコールをしていた。まぁ、悪い気持ちはしないけど…。
「ユキすごいね」
「ルイ程じゃないよ」
歌い終わるとにっこり笑いながら、ユキは拍手をしていた。
「この世界で私一人だね。ルイソロの超常恋現象聞いたの。」
そう言ってまたはにかむ。私はその仕草に、不覚にもきゅんと来てしまった。