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    Dictator_kana

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    ヴィドール×オッドタクシー(勝手に)コンピレーション小説
    「オカルト・タクシー」

    2曲目(1曲目はPixivにあります)はRuvieでDaisyです。良かったら。

    #オッドタクシー
    oddCab
    #三矢ユキ
    yukiSanya
    #山本冬樹
    toukiYamamoto

    黒猫 Daisy(三矢ユキ×山本冬樹)「へぇ、珍しいね山本さん。下向いて歩いてるなんて。」
    「ん?あ、あぁちょっとな。三矢はもう終わりか?」
    「うん。これから二階堂さんと市村さんとカフェで打ち合わせ。」
    「そうか。少ないけどこれ、カフェ代の足しにしてくれ。」

     そう言いながら俺は財布から5000円を出して三矢に渡した。

    「わ!いいの!?ありがとう!じゃあね!」

     向こうではかしまし娘たちがキャッキャ騒いでいる。俺はイヤホンを耳に挿し、次の企画を練り始めた。

     ー昔から騒音は好きじゃ無い。友人がいなかったわけでは無いが、笑い声とかのいわゆる金切り声は嫌いだった。
     カタカタとパソコンを打っていると、いきなり首筋に冷気が刺さった。

    「うわっ!?」
    「驚きすぎだよ笑。さっきはありがとう。ささやかなお礼だよ。」
    「お、おう。ありがとな。もう終わったのか?」
    「うん。さっき解散した所。」
    「そうか…」

     ユキが俺の隣に座る。スカートをヒラヒラさせながら、軽く足をバタつかせる。ちらちらと太ももが見えて仕事にならなかった。

    「ふふっ、山本さんどこ見てるの?えっちだね。」
    「いや、わざとじゃないぞわざとじゃ!」
    「分かってるよ。」

     しばらくパソコンの打鍵音と、2人の呼吸だけが空間を支配していた。ユキはまだ元気で、ソファに座りながらスマホをいじっていた。

    「三矢元気だな。」
    「華のJKだからねー。疲れなんか感じないよ。」
    「羨ましいな…」

     15分後。ユキの小さな寝息が聞こえてきた。俺は毛布を掛けてやり、自分も眠ることにした。

     翌朝。

    「あ、山本さんおはよう。朝ごはん出来てるよ」
    「おぉ…美味そうだな。」
    「腕によりを掛けて作りました。」

     ふふん、と鼻を鳴らしながらお互いに椅子に座る。

    「いただきます。うん、みそ汁美味いな。だしは昆布か?」
    「ほんだしだよ」
    「ほんだしかぁ」

     食事をした後ユキはシャワーを浴び、俺の車に乗った。

    「今日はこれからドラマのオーディションだからな。緊張しないでリラックスして励むんだぞ。」
    「分かった。」
    「おはよ…あれ?三矢さん先なの?」

     二階堂が懐疑の目を向けて来る。

    「私が集合時刻間違えちゃったの。それで早く迎えにきてもらったんだ。」
    「ふぅん。それより今日のオーディション負けないから!」
    「気合い入ってるな。いいことだ。」

     市村を自宅で拾い、オーディション会場へと運んでいく。オーディション会場に着くと数多の女の子の中に、三矢と同じ黒猫がいた。

    「見て、あの子。私と同じ毛色。珍しいね。」
    「そうだな。黒猫は幸せを運んでくるって言うからな。」

     ─しかし、その黒猫が発する憎悪にも似た視線に俺たちは気付かなかった。

     オーディション終了後。近くの喫茶店で反省会をする。

    「二階堂さんの演技、怖かったなぁ。」
    「分かる!ヤバかった!」
    「私が主役だったりして笑」

     しばらくの沈黙。

    「まぁ…なんだ。次は歌のレッスンだからな。波間にKISS覚えてきたな?」
    「ちょっと自信ないかな…」
    「私も…振り難しかった。」
    「ちょっとあんた達、そんなでアイドルが務まると思ってんの!?」

     二階堂が吠える。俺はそれを軽く制した。

    「まぁまぁ…。二階堂もあんまり吠えるな」

     ふんっとそっぽを向く二階堂。2人は恐縮していた。

    「お前ら2人もあんまり気にするなよ。出来なくて当たり前なんだ。」
    「うん…。」

     そしてレッスンが始まる。事件は起きた。

    「んー…。次のセンターは三矢くんにしようか。」
    「え!?」
    「はぁ!?」

     社長の一言で、レッスン場は一気にざわついた。三矢が少し震えているように見えた。

    「社長!しかし…!」
    「これは決定事項ね。よろしく。」

     そう言って社長はレッスン場を出ていく。二階堂が三矢に噛み付いた。

    「何であたしじゃないの!?何で三矢さんが!?」
    「二階堂落ち着け!今日は解散!みんな着替えてこい!」

     帰りの車の中は険悪なムードが漂っていた。二階堂は何かをずっと呟いていて、市村は泣いていた。

     二階堂と市村を自宅で下ろし、車の中は再び俺と三矢だけになった。

    「…なんか飲むか?」
    「…うん。ありがとう。」

     車を止め、自動販売機でコーヒーとアイスティーを買い車に戻る。

    「ほら、三矢」
    「ありがとう。うん、美味しい。」
    「今日はすまなかったな。」
    「山本さんが謝ることじゃないよ。二階堂さんもたまたま虫の居所が悪かったんでしょ。」
    「お前は優しいな…」

     くたびれた自動販売機は缶コーヒーを温くするのに最適だった。熱いのが飲みたかったのだが。

    「そろそろ帰るか。」
    「そうだね。よろしく、山本さん。」

     ─それが俺が見た三矢ユキの最後だった。

    「…?」

     頭が酷く痛む。確か、山本さんに車で送ってもらって…。

    「こんばんは、三矢さん。」

     目の前には知らない女の子。持っていたのは金属バット。

    「貴女には、死んでもらうね。」

     そう言ってその女の子は長テーブルから降り、私の首にロープを掛け、強く引っ張った。

    「ぐっ…ぐぁっ…」
    「貴女が死んでくれれば、あたしはアイドルになれる…!」

     だんだんと目の前が明るくなっていくのが分かる。ひゅっという一息と共に、私は意識を失った。
    ――――――――――――――――

    「三矢さん?いるの?」

     暗い会議室。私は気付かれないように懐中電灯で辺りを照らしながら歩く。

    「三矢さ…きゃっ!」

     懐中電灯が照らしたのは、三矢さんの死体だった。私は思わず床に尻もちを付く。するとすぐに会議室の灯りが着いた。

    「二階堂何をして…三矢!?」

     私は呆然としながら三矢さんの死体を見つめていた。

    「二階堂、お前がやったのか?」

     首を横に振る。私が何故三矢さんを殺さなければならないのか。山本さんはどこかに電話をしていた。

    「はい。はい…そうです、お願いします…」

     電話が終わって、山本さんが私のそばに来た。暗い表情で私に言う。

    「二階堂、今から起こることは俺と二階堂だけの秘密だ。いいな?」

     コクリと頷く。すぐに、小さいヤマアラシと大きいシロクマがやってきて三矢さんの死体を車に運ぶ。車は芝浦埠頭に着き、シロクマがビニールシートの上に三矢さんの死体を乗せた。

     ――――そこから先の記憶はない。

    次の日、三矢さんによく似た黒猫が、新しくミステリーキッスに加入した。雪の日だった。

     2週間後、ミステリーキッスのライブが行われた。
     ――――――――そこに三矢ユキはいない。

     悪夢だったのだと思うことにした。そうしないと私が潰れてしまう。

    「ごめんね、三矢さん。」

     心の中で呟く。それが弔いになるか分からないが。

     
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