雨宿り #宿虎怪奇譚 その日は、朝から雨が降っていた。
雨足はそこまで酷くはなかったが、ピカピカのランドセルが濡れないようにランドセルを背負ったまま着られる雨合羽を羽織り、新品の雨靴を履いて。
「差して行きなさい」
と、出掛けに渡された黄色い傘は差さずに手に持ったままの悠仁は今日も元気に学校へと向かって行った。
そんな日の帰り道でのこと。
悠仁が行きと同じく、傘を差さずに道を歩いていると急に雨足が強くなってきた。それは最早雨合羽だけでは対応しきれず、かといって傘を差したところで意味を成さない程の強い雨へと変わっていった。
「わ、わわっ、ぬれる!」
段々と激しくなる雨足に急かされるように駆け出した悠仁だったが、家まではまだ距離がある。走ったところで家に辿り着く頃にはすっかりずぶ濡れになってしまっているだろう。
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