天才カーヴェの唯一の失敗 天才カーヴェには唯一失敗したと自認する事象がある。この話をルームメイトのアルハイゼンにしようものなら「君は日々失敗しているというのに失敗が唯一とは、ものの数え方から学び直したほうがいいのではないか?」と言うだろう。しかしカーヴェはそれらの事象は挽回出来ると考えている。多大な借金も、悪い酒癖もいつかは解決出来ると考えているのだ。じゃあ挽回出来ない事象とは。それはアルハイゼンを好きになってしまったことだった。
「君はどうしてこんなところで管を巻いているんだ」
酒場で酔っていたカーヴェは隣に座った男を見る。視界はぐにゃぐにゃと歪んでいてその姿は判然としない。実を言うと男はカーヴェを連れ帰りに来たアルハイゼンだったのだが、泥酔したカーヴェには知る由もなかった。カーヴェはただただ、酒の勢いに任せて口を開く。
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