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    aigamo_kamo

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    aigamo_kamo

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    🌱とセッすることを想像する🏛がモブに言い寄られて困っていたら何故かすごく怒った🌱が現れる話

    計画 酒場で懇々と考えていた計画を反芻し終わった僕は顔を上げた。
     突然だが、僕には計画がある。破産して将来設計もくそもない僕だけど、一点だけ緻密に考えていることがある。それはアルハイゼンとどう初めてのセックスをするかだ。
     僕はアルハイゼンに恋をしている。なんだかんだと言い争うし、反りは合わないけど好きなのだから仕方がない。そう受け入れた僕は開き直って想像を始めた。実際アルハイゼンとセックスをするならどうするかをだ。
     薄暗い夜の帷の落ちたアルハイゼンの部屋、普段はなかなか入らないあの部屋のベッドは大きい。そのふかふかなベッドに押し倒されてキスをされるのだ。そしたら案外優しい手つきで腹を撫でていじらしく挿れさせてほしいとお願いしてくる。そこまでがお約束だ。
     想像は段々と具体性を増し、あらゆるパターンを想定し出し、計画の域へと達していった。後ろを解して快楽を得られるようにしたし、いつだってこの計画を実行できる。
     でも悲しいかな、アルハイゼンは僕のことなんて好きじゃない。うるさくて面倒にルームメイト……居候が正確か。だから僕はこの計画を何度反芻すれど、実行に移すつもりはさらさらない。……想像は自由だから想像するけど。だから、アルハイゼンが生涯をともにできる女性と出会って、僕が追い出されるまでは側に居させてほしい。
     珍しく殊勝な気分だった僕は酒を一杯飲んだところで帰ることにした。アルハイゼンの顔が見たい気分なのだ(僕は酔うと記憶がなくなるので酔って連れ帰ってもらうのは顔を見た中には入らない)。あと、明日は図面を書かなくちゃならない。僕の酒癖を知っているマスターは驚いている。酒癖はいつか直す、……多分。いつも通りアルハイゼンにツケて、意気揚々と酒場を出ようとしたときだった。
    「にいちゃん……助けてくれねえか」
    「どうしたんだ?!」
     助けを呼ぶ声がして僕は振り向いた。端っこの席で飲んでいた男が苦しそうにうめいていた。慌てて駆け寄り、様子を見る。そうたくさん飲んでいる様子はないけれど、酒に弱いのだろうか?
    「肩を貸して外まで連れて行ってくれないか?酔っちまって」
    「わかった」
     男に肩を貸し、立ち上がる。どこぞの書記官様は僕をひ弱と称するけど僕だって男だし、神の目もあるからそれなりに力がある。会計は済ませていたらしい男の肩を抱えて酒場を出た。
    「邪魔になるから路地裏で休みてえ、連れて行ってくれるか?」
    「ああ」
     言われた通りに路地裏に入ると、男が寄りかかってくる。その息は荒い。体調が悪化したのか?ビマリスタンに連れていくべきだろうか?そう考えていると男が腕を絡めてくる。
    「にいちゃん、綺麗だな」
     男の手が不埒な意図を持って体をなぞる。擦りつけられた股間は硬くなっていて、全身に悪寒が走る。まさか騙された?男を見るとニヤニヤと興奮した様子だ。
    「ちょっと宿まで行かないか?」
     どうしよう、こんなところで処女を失いたくない。僕の中で初めてはどうするか何パターンも考えられ綿密に決まっている。少なくともアルハイゼンの部屋の大きなベッドの上で優しくされるんだ!
     男の不埒な手が僕の臀部に伸びて、いよいよ後が無くなっていく。ああ、やだやだ!僕の緻密な計画が全て泡に帰してしまう!男の胸をぽかぽか殴りながら叫ぶ。
    「やだやだ!僕には心に決めた人がいるんだ!」
    「ほう?ぜひその話を詳しく聞かせてもらいたいものだ」
     形振り構わず抵抗する僕の言葉にこの状況ではいるはずのない冷血漢の返事が聞こえた。慌てて僕は振り返る。そこにはやっぱりアルハイゼンが立っていた。腕を組んで、分かる人には分かる怒りの表情を浮かべている。僕は何も悪いことをしていないのに浮気を咎められたような気分になって、目を逸らした。草神様に誓って浮気なんてしていないのに!
    「……邪魔すんなよ」
     男もかの英雄の書記官様の登場に面食らっているようだ。この場で冷静なのはアルハイゼンだけだ。そうなるとコイツは強い。正論の矛と盾で武装して全てを下していく。というか、僕も対象なのか?僕は被害者だ!
    「俺にはその男を監督する義務がある。明日も仕事だと言うのに夜遊びをしようとしている男を矯正するのも道理だろう」
     すごく、ものすごく悪意を感じる表現だが百歩譲って黙っておく。僕は先輩だし一応助けてもらっている立場だ。でも家だったら言い返していただろう。
     男はなおも食い下がろうと言葉を探しているようだ。逡巡する男にアルハイゼンはトドメとばかりにキツい視線をよこす。なんでコイツはこんなに怒ってるんだ?
    「帰るぞ、カーヴェ」
     怯んだ男を捨て置いて、アルハイゼンは僕の腕を引いて歩き出す。腕を掴む力は強いし歩調はいつもより早い。でもそれに文句を言う間すら挟ませてくれない。
     そういえば、心に決めた人がいると聞かれてしまった。借金を負った身で恋愛にうつつを抜かしていることに怒っているのかもしれない。この後の会話の内容次第では追い出されるかもしれない。そう考えると足が重たくなっていく。だって、暮らす場所はなんとかなるだろうけど、アルハイゼンの近くに居られないのは寂しい。
     やがて、家に着いた。鍵の開く音が断絶を示しているようで聞きたくない。僕は家に帰ると母親に怒られるのが分かっている子供のように一歩足を止めた。それを感じ取ったアルハイゼンが振り返って、目が合う。
    「なんで、きみ」
     その視線は怒りに染まっていた。瞳孔を縁取る赤が爛々と光っている。腕に食い込んだ指が痛い。多分跡になっただろうけど、それを咎められる雰囲気でもない。アルハイゼンは怒ったまま、いとも簡単に僕をドアに押し込んだ。
    「――君は」
     しかし居間に踏み入れることも許されず、玄関のドアに身体が叩きつけられた。これは何気なく見た稲妻の娯楽小説にあった壁ドンというやつだ! でもそれってもっと甘いシチュエーションじゃなかっただろうか。少なくともこんな食い殺されてしまいそうな雰囲気ではなかった。
     無言で見合う。アルハイゼンは普段から何を考えているか分かりにくい奴だが今は全くわからない。だって、追い出すなら家の前に捨て置けばいいし、本当に何もないのなら怒ってないしこんなところに足止めもしない。
     アルハイゼンが顔を近づけてくる。僕の好きな顔が視界一面に映る。こうならないかな、と僕が密かに望んでいたこと。でも、その顔は怒りに染め上がっていて、望んだ甘さとは程遠い。なんだか悔しくて僕は抗議してやることにした。
    「なんなんだ、さっきか――痛ッ!」
     首元に鋭い痛みが走る。ぶつりと皮膚が切れた感触がする。まさか、噛まれた?! アルハイゼンの大きな手が傷跡をなぞる。皮膚が引きつる感触とともに、ほんの少し元素力を感じる。
    「他を見ないように囲ってやったのに横奪されるとは、俺の見通しが甘かったようだ」
     何を言っているかはわからないがそこには尋常じゃない感情が浮かんでいる。ひえ、と口から間抜けな声が漏れた。アルハイゼンの手が伸びてきて、僕の頬を包む。そしてもう一度顔が近づいてきて、唇にやわらかいものが触れた。つまりこれは――
    「!!」
    「顔が赤いぞ、生娘か?」
     アルハイゼンはくつくつと笑っている。普段なら絶対に何か言い返すところなのに何も思い浮かばない。岩スライムの装甲よりかちこちになった僕の腹を撫でてアルハイゼンは不敵に笑う。
    「大丈夫か、先輩?――これからもっとすごいことをするんだぞ?」
    「……はっ、は?、――ちょっと待った!」
     僕の頭が急速に回転を始める。もっとすごいことってセックスだよな?何故セックスする流れになったかはわからないけどするって言うなら断る道理はない。待ったをかけるとアルハイゼンは大人しく止まった。
     この状況からアルハイゼンとセックスするとして、最高のシチュエーションはなんだ?頭の中のメモ帳をめくり、いろんなシチュエーションを今の状況と照合していく。計算はすぐに終わる。
    「君の部屋に連れて行ってくれ」
     人差し指を突きつけて、アルハイゼンに言う。僕の手を引いたアルハイゼンは何故かもう怒っていなかった。
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