香 ふわり、と甘い香りがして、フェイスは足を止めた。
くるりと振り返った先には、くるくるの癖毛を揺らしながら歩く後ろ姿があった。
考える前に、体が動いた。
一息で駆け寄って、薄い背中に飛びつくようにして顔を埋める。
「ひゃっ!? な、え、だ、だれ!?」
狼狽える声には構わず、すうと大きく息を吸い込んだ。
ああ、これだ。この甘い香り。
「あ……あの……」
「んー?」
「あ、ふぇ、フェイスくん……?」
「んー……」
声でわかったのだろう。強張っていた体が少しだけ緩んで、それでも惑う気配は変わらない。
「ど、どうしたの? あの、僕、何かしちゃった……?」
「んんー……」
不安そうな声に、フェイスはようやく少しだけ顔を離して、それでも腕を掴む手はそのまま、気もそぞろな返事をする。
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