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    こまつ

    @shimamorota

    整理用
    供養と自主練と書きかけ 総じてらくがき

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    こまつ

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    [概要]
    現パロ同棲RP
    [備考]
    ・このhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19812735世界線
    ・ほぼ完成してる(約15000字)が、気を抜くと無かったことにしかけるので、徐々に晒して自分を追い詰める気
    ・テーマは「言葉」(コミュニケーション)

    [更新履歴]
    23.10.17 ☆まで
    10.18 ☆☆まで

    #リゾプロ
    lipoprocessing

    ユーズ、ビリーブ☆☆☆☆☆

    診断メーカー(https://shindanmaker.com/878367)より、
    『RPのBL本は
    【題】通り雨
    【帯】正反対なのに妙に惹かれ合う不思議な関係
    【書き出し】そういえば今日の星座占いは最下位だった。
    です』

    (タイトル違うのは洋題と邦題的な…)

    ☆☆☆☆☆


     そういえば今日の星座占いは最下位だった。
     ほとんどが動物で、うち大半がヒトを含む哺乳類、加えて中~大サイズの鳥類と水生生物数種、空想上の生き物が二、三、残りは雑貨。十二星座をおおむねそのように認識しており、自身が「何座の男」であるかを、その手のことが好きで隙あらば俎上に載せてきた女との関係が切れて数年全く意識せずに生きてきたプロシュートが、信じる信じない以前のそんな情報を仮にも認知し、トピックとして反芻するまでに至ったきっかけは、とある土曜日の朝だった。
     同棲中の男と揃ってダイニングテーブルに着き、浄水ポットの水を注ごうとして、器が出ていないことに気づいた。手元から顔の高さへちらりと上げた視線を、正面に据わる黒に赤の目が受け止めた瞬間、脇から飛び込んできたのは、「続いては『◯◯監修今日の運勢十二星座ランキングサタデースペシャル』です」というひと息のこなれたナレーションだった。
    「下だった方な」
     交際を始めた二年すこし前には丁寧な表現を心掛けていたかと問われれば、とりたててそんなこともないのだが、時空間を共有するにつれ言語以外でも伝わるところが多くなり、ぞんざいになるところも増えた。その点、相手は以前と大して変わらない。雰囲気や物言いは多少くだけたが、「喜怒哀楽は存外わかりやすいが表情豊かなわけではない」「絶対的に無口ということもないがお喋りとは決して言えない」の枠から出るつもりは現時点ではないらしい。食い違いを起こすこともままあれど、とりあえずは今、プロシュートが見る限り、眼前の鉄仮面は目立った変化も見せず返事もないままに、唐突にふっかけられた言葉足らずな思いつきの意図を正確に汲み取り受諾しているようだった。
    「そういやオメーって、何座?」
     問いかけの幾らかは自分自身にも向けられてはいたが、思うにそれが「他人の星座」にプロシュートがはじめてみずから興味を持ち、尋ね、短い返答により認識した記念すべき瞬間だった。
    「ぽいような、ぽくねぇような……」
     勝てる、という無根拠な自信が現実になったことにはさほど驚きもなく、四位にランクインしたプロシュートは席を立った七位の男の、伸縮性に優れた半袖Tシャツの黒い混紡生地に不規則なゆるい波を立てる夜の海のような背中を、椅子の上からまじまじと見上げた。
    「何かもっとよぉ、熊とかゴリラとか、デカめの犬とか……」
    「何の話だ」
    「オメーの星座」
    「そんな星座はない」
    「なかったっけ? こぐま座とかおおぐま座とかおおいぬとかおおかみとか」
    「星座としては存在するが、あれ……」と立ち止まり見返ったテレビでは早くも次のコーナーが進行していて、捩じられた太い首が元に戻る。「には、ねぇ」
    「そうだっけ」
    「今見てたじゃねぇか」
    「興味ねーし、オレらの以外」
     他愛ないひと言をトリガーにキッチン方面からたちまち漂い来る「好意」は、時に暴走気味に過剰放出されるのみならず、ある種の濃厚な誘引物質として、髪を数度押し撫で「はいはいオレも」で済まないところにプロシュートを容易くいざなってきたりもするので、無防備に受けすぎるのも考えものではある。そもそも今の発言は「勝敗以外興味なし」という意味合いでしかなかったが、まあいっか、なんか、嬉しそーだし、と、ややあって逞しい腕で持ち運ばれ静かに前に置かれた賭物を、プロシュートは満更でもない気持ちですぐさま手に取る。
    「……そういえば」
     仕切り直すような軽い咳払いの後、低い呟きがテーブルに着地した。
    「あれはどうした?」
    「あれ?」と伸ばした右手で掴んだポットの向こうに腰を下ろした男を見れば、やけに強いその眼差しが絡みつくのは自らの手前の手、その中に収まった、無色透明の丸口のガラス容器。「あー、グラス?」
     その言葉にやおら引き結ばれた厚い唇は、喉につかえた大きくいびつなものを覚悟を決めて慎重に嚥下するかのごとき間をとって、ふたたびおもむろに開かれた。「……ああ。見当たらなかったからそれにしたが」
     手にしているのは、これまでもっともよく使っていたものではない。見当たらなかった原因を、
    「割った」
     平然と簡潔に述べる。
    「いつだ」
    「こないだ」
     週の半ばだったか、先に帰宅し水を飲もうとして手を滑らせた。同棲当初にショッピングモールで買い揃えた生活用品のうちの一つで、デザインも使い勝手も良く頻用していたが、思い入れというほどのものはなく、翌朝のゴミ出しに備えてさっさと処理した。
    「言ってなかったか?」
    「初耳だな」
    「わり」説教がやってくる前に手早く素直に謝り、「それより、ゴリラは?」と矛先を変える。
    「……ねぇ」
     二、三は覚悟していた小言は、さっさと話題を切り替えたこと自体にも訪れなかった。なじる目つきや短い溜め息一つでも感知すれば、自らの過失は棚に上げ「しつけぇ男は……」と食ってかかる用意は出来ていたが、その気配もないし、藪蛇になっても面倒なので、少し拍子抜けしつつもプロシュートは続けた。
    「星座自体にも?」
    「それは知らん」
    「あんじゃねー? ちょっと調べ……」と目を走らせたテーブルの上にめぼしいツールは見当たらず、青い瞳からまっすぐ放った強請る視線は、どこか気散じな近距離の同席者になかなか届かなかった。何となく何かが何ともしっくりこない気色悪さを払拭すべく、プロシュートは「そういえばあのグラス、」でひとまず行方知れずの焦点を我が方に手繰り寄せ、「買った帰り食ったタコ焼き、殺人的に熱かったよなー」で、二度の純粋なまばたきと、良くも悪くも力の抜けた息を引き出した。そこから緩慢と始まったラリーのかたわら朝食に手をつけるうち、違和感はそれを覚えたこともろともプロシュートの中から煙のように消えていた。そうして食事、洗濯、排泄、掃除、会話、調理、セックス、買い物、睡眠、入浴、スキンシップ、他雑務を取っ替え引っ替えつつがなくこなし続けた休み明けの早朝、無駄なく整然と完璧にパッキングされたトランクを引き、恋人は黙って家を出ていった。

     ☆


     プロシュートは今朝、一週間ぶりのあの番組を一人で見た。そして半日後の今、天然の闇と人工の光とのままの水に包囲され、あらためて思い出す。そういえば今日の星座占いは最下位だった。
     イベントとホットスナックのポスターの狭間、幾分ラフに纏めたブロンドを後背のガラス越しの白い照明で淡く発光させながら、半日前には確実に網膜に浮かべたはずの「オレらの」以外を、戯れ以外の何物でもなく列挙してみる。おとめ……くじゃく……か、はくちょう……みず……うみ、がめ……うみがめ……ん? うみ……?
     右折の意思などおくびにも出さず、駐車スペースの向こうの道路からプロシュートの足先二メートルの車止め目掛け、まっしぐらに猛進してきた黒いSUVのヘッドライトが、昏い天から無数に垂れる無色透明の細い糸の一筋一筋をくっきり色付かせ、色素の薄い双眸の中で緩んでいた瞳孔は、急に怒鳴られた子供のようにひとしくぎゅっと縮こまった。軽く舌を打ちそむけた顔の先、書籍の配架されたラックの背に面したガラスは曇った鏡ほどの明晰さで、先端に橙色をちらつかせる煙草と、眇めた目と歪めた口の半ばあたりでそれを掲げる、いかにもやさぐれたような男を映した。映った手元を注視した男は、小さく息をつき自由が利く右手をポケットに入れた。


     ☆ ☆





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    こまつ

    MAIKING[概要]
    現パロ?パラレル? 21歳のRと、Pの出会い
    [備考]
    ・現代日本的な世界観
    ・診断メーカー(ID878367)より、『RPのBL本は
    【題】通り雨
    【帯】正反対なのに妙に惹かれ合う不思議な関係
    【書き出し】そういえば今日の星座占いは最下位だった。
    です』
    ・『このお題で書いたRP絶対オリジナルになってしまう説』検証第二弾
    [更新履歴]
    23.10.22 ☆まで
    deliveryそういえば今日の星座占いは最下位だった。そんなトピックの期限も残り一時間を切った。時刻だけを素早く確認して消灯したスマホを黒いパーカーのポケットに仕舞い、リゾットは闇に呑まれた公園のベンチの上から、十数メートル先のマンションの明るく切り取られた玄関口を引き続きじっと見つめる。

    ここ数年で急速に開発が進んだ駅前の一帯は、真新しい美容室やチェーンの飲食店の新店舗、モデルハウスのような住宅と、良く言えば比してレトロで味がある外観の理髪店や中華料理屋や民家などが混在していた。
    新しく整備された片側一車線の広い市道と、一方通行ですら難儀する狭く古い道が交差する角にぽつんとある猫の額ほどの公園は、明らかに後者のグループだった。曲がり角に立ち並ぶ二本の銀色のポールの合間から中に入れば、日当たりの悪い敷地中央には、過度に湿った重い砂をたたえた砂場と錆びた滑り台が一つ。出入り口の側に唯一立つ街灯は時計付きだが、文字盤の上の針は静止している。敷地際、離して置かれた二基の朽ちかけたベンチからの眺めといえば、手前から、件の砂場と滑り台、見過ごしそうな手洗い場、手入れのされていない植え込みとポールと街灯、その向こうに歩道、広い車道、広い歩道、そのまた向こうに三棟並びそびえる高層マンションの低層階、そこで行き止まる。
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