黒兎は奈落の底の夢を見るか「いやぁ、さすが黒兎くん。今回も、見事なお手並みだったよ!」
「どうも……」
支配人の世辞に、僕は生返事をする。
「黒兎」──裏社会での僕の呼び名だ。
もともと、ここでは秘密裏に闇オークションが開催され、人身売買が行われていた。
僕が来てからさらに大きく利益を伸ばし、今や国内最大級の規模にまでなったのだ。
「別に、情報隠蔽くらい造作もないことさ。身内からの、惜しみない協力もあることだし」
「はは、それもそうか。なんたって君は、エリート警察官でもあるからね。イフリート・ジン・エイトくん」
「……ここで、その名で呼ぶのはやめてくれないかな?」
「ああ、すまないすまない。それにしても、国家警察という立場を利用して、人身売買やオークションの情報隠蔽だなんて悪い男だねぇ」
1898