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    asagi_di7

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    ワードパレット21アンチイノセント
    言わせない/諦めて/覆いかぶさる
    から。
    初夜を迎えるまでの二人(全年齢)

    手放すのを諦めて。環と初めてキスをしてからままごとのようだった二人のお付き合いは劇的に変わった、というほどでもなかったが、キスは頻繁にするようになった気がする。
     初めてした時のような触れ合うキスから互いを求め合うようなキスに至るまでそう時間はかからなかった。
     環はキスが上手だと思う。
     これはあくまで環以外の人とキスをしたことがない壮五の主観だが、多分上手だと思う。
     だって、キスをして力が抜けてしまうなんて。そんなこと、知らなかった。
     とにかく、初めてしたキスからあまり時間が経たずに求め合うようなキスをした時、壮五は「これはいけない」と思った。
     壮五は二十歳だが、環は十七歳。高校生だ。ただでさえ未成年と付き合うのは問題があるというのに、きっとこのままいけば壮五は環の全てを求めてしまうような気がした。

    「んっ……」
     眠る前にキスをしたい、と言ったのは壮五の方だったが、その提案を今大変後悔している。
    「は、……ん……」
     口で息をしてはいけない、とか環に教えたはずなのに、今では「そーちゃん鼻で息して」と優しく環に言われて頭まで撫でられる始末だ。
     くたりと力が抜けてしまって環にベッドまで連れていかれると「待って!」と声を出した。
    「……わかってんよ」
     環は少し悲しそうに笑った。そんな表情をさせているのは壮五なのに胸がきゅうっと痛んだ。

    『いつか君と一つになりたいって、思ってる』
     キスに慣れた頃、壮五が言った言葉だ。
    『でも、僕が二十歳で君は十七歳だから。今はだめなんだ』
    『うん』
    『君が二十歳になるまでキス以上のことはしない』

     二十歳になるまで、と言ったのはそれまでの期間に環が壮五以外の誰かを好きになった時、関係を持っていない方がいいのだろうと考えたからだ。
     考えた。
    (でも、手放せそうにないな)
     心の中で呟きながら環からのキスを受け止める。
     ベッドの上で環とキスをしているなんてまるで関係を持っているみたいじゃないか、と思う。
    「そーちゃんなんか余計なこと考えてる」
    「そんなことないよ」
     首を横に振れば環は壮五の顔にかかった髪をゆっくりと耳にかけた。
     環が壮五を見下ろすから環の髪がカーテンみたいに壮五の視界を遮断して環だけが壮五の目に映る。
    「そーちゃん、俺、ちゃんと我慢するよ」
    「……」
    「大人になったらそーちゃんとチューよりもっとすごいことするってやつ」
    「あああ……言わないで……」
    「えー、いいじゃん」
    「そ、そうだけど……」
     壮五が環が成人した時、初めて身体を重ねたいと言ったことに環は少しだけ悲しそうな顔をしたけど、それでも「そーちゃんのいう通りにする」と言ってくれたのだった。
    「だから、俺を手放そうとか、そういうこと考えるの、もう諦めて」


    「そーちゃん、寝ちゃった?」
     ふ、と意識を覚ますとふかふかのベッドに寝転がっていた。寮の自分のベッドでも、環のベッドでもなかった。それもそのはず。
     今日は環の二十歳の誕生日。本来ならいつもメンバー全員からお祝いパーティーをされるのだが、今日は二人でお祝いをしたいと言ったのだった。
    「ごめん……寝てたみたい」
     のろのろと起き上がると備え付けのバスローブを身につけた環がそこにいて思わず目を逸らした。
     近年、抱かれたい男の一位にずっと君臨し続けるのは目の前にいる環で、惜しげもなくその姿を今目の前に晒しているのだ。
     壮五の後に風呂に入った環を待っている間に眠ってしまっていたらしい。
    「そーちゃん眠い? 寝てていいよ」
     ゆっくりと壮五の髪を撫でてまるで眠るのを促すかのような仕草に壮五は目を開けて「それはだめだ!」と答えた。
     お祝いをしたレストランのそばにあるホテルに一泊。
     ずっと待ち望んでいた日がようやく来たのだ。
     その間壮五は環だけを、環は壮五だけをずっと一途に大切にし続けた。
     環の腕を引っ張ってベッドに二人で倒れ込むとそのままもう数え切れないくらいにしたキスの回数をまた一つ二つと増やしていく。
    「そーちゃんのこと、大事にしたい」
    「うん。僕も」
    「……優しくする」
    「君はいつでも優しいよ」
     リモコンで照明を落とすと環がいつかのように壮五を見下ろした。
     あの日のような悲しい顔はもうない。
     壮五を愛おしいと叫びたい表情と、今にも目の前の獲物にとびつかんばかりのギラギラとした瞳。
     そしてそんな瞳に映る自分も同じように環を見つめていた。
    「いいの?」
     壮五が聞いた。そんな質問をするなんてずるいな、と思う。環は壮五のことを否定する言葉なんて決して言わないとわかっているからだ。
    「やだって言ってほしい?」
     その言葉に首を横に振るとふは、と環が笑った。
    「そーちゃんの全部、俺にちょうだい」
    「あげるから、僕にもちょうだい」

     返事の代わりにまた一つ温もりが降ってきた。
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