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    薫翼&輝翼前提で、三人が仲良くご飯食べたりするお話です。朝食篇。

    #薫翼
    aromaticWings
    #輝翼
    glowWing

    おはようからおやすみまで その1「起きろー、桜庭。朝だぞー」
    「薫さん、もうご飯できてますよ」
     布団に包まれたまま微動だにしない薫を、二人は柔らかな声で揺り起こす。今日から二日間、久しぶりに三人揃ってのオフだった。三人とも夜はそれぞれの自宅で過ごしていたが、示し合わせたように輝と翼は揃って薫の自宅を訪れていた。
     両手にスーパーの袋を提げ、勝手知ったる何とやらで輝は冷蔵庫の中へ食材を詰め込む。翼も買い足した調味料を戸棚に仕舞い込んだ。キッチンに立つ許可は前日にとってあったので、輝は早速、朝食の準備へ取り掛かった。――今日はパパッと出来るからパンケーキでいいか。明日はフレンチトースト作ってやるからさ。わあ、ありがとうございます。オレ、輝さんの作ってくれる料理なら何でも大好きです。二人並んでキッチンに立ち、家主の眠っている間にバターとシロップの混ざった香ばしい香りを漂わせ始める。
     薫さん、と翼が再度声をかける。軽く肩を揺すってみるものの、相変わらず朝は苦手なのか、ぐずっている子供のような声が聞こえた。
    「……起きる、から、……少し、待て、」
    「もう待てませんよ。だってあんなにいい匂いがしてるんですよ?輝さん特製の焼き立てのパンケーキ、一緒に食べましょう!」
     ほら、と翼は両手を薫の脇に差し込むと一息で持ち上げた。カーテン越しに差し込む光は容赦なく薫に降り注ぐ。今日という日はまだ始まったばかりのようだった。ベッドサイドを弄り、渋々といった様子で薫は眼鏡をかける。目の前で朝日より眩い満面の笑みを浮かべた恋人と、少し離れた場所に何が面白いのか笑ってこちらを眺めている輝の姿があった。
    「おはようございます、薫さん」
    「やっと起きたか、桜庭」
     寝起きのぼんやりとした頭に翼の柔らかな声がすっと染み入ってくる。柏木、と呼びかければ晴れ渡った青空を彷彿とさせる瞳が人懐こそうに細められた。両手を伸ばし、抱き寄せる。春の陽射しのように温かな温度に、薫の瞼が再びとろとろと降りそうになる。赤いエプロン姿のまま、輝が呆れたように声を上げた。
    「こーら、桜庭。早く起きねぇとメシ抜きにするぞー。翼も桜庭を甘やかさない」
    「薫さーん、起きてください。……もう、このまま運んじゃいますよ?」
     せぇの、という掛け声と共に翼の腕が薫の膝裏に回された。――掴まっててくださいね。右手で背中を、左手で膝裏を支え、しっかりとした足取りで翼が歩き出す。いわゆるお姫様抱っこと呼ばれる体勢だ。
    「っ、柏木、待て、」
    「もう待ちませんよー。このままリビングまで運んじゃいます!」
     慌てて声を上げる薫に、なぜか楽しそうな様子で翼が答えた。二人の後ろから肩をすくめて輝がのんびりと追いかけてくる。寝室からリビングまで一分とかからない距離だったが、まるでランウェイを歩くかのように堂々とした足取りで翼は進んだ。
     悪気は全くないのだろう、朗らかな口調で薫に話しかけている。
    「薫さん、朝はちゃんと食べなきゃダメですよ?一日の始まりなんですから」
    「分かったから下ろしてくれ、」
    「まもなく到着しますよ」
     リビングにある一人掛けのソファーに、翼は恭しく薫を座らせた。雰囲気は柔らかいが、少女漫画に出てくる王子様的なキャラクターと同じように輝いて見える。天然とは恐ろしいものだと薫は内心で独りごちた。輝はキッチンに向かい、パンケーキを軽く温め直している。翼もまたキッチンに向かうとマグカップを片手に戻ってきた。淹れたてのコーヒーの芳醇な香りが鼻をくすぐる。
     器用に腕の上まで皿を乗せつつ、輝がリビングへと戻ってきた。
    「お待ちどうさま。翼は甘いの、桜庭はしょっぱいのでいいか?」
    「はいっ、ありがとうございます!」
     翼の目の前にはこれでもかとパンケーキがうず高く積まれていた。一枚一枚の厚さは薄いが、以前見かけた男道らーめんの愛増盛りに匹敵するほどの盛り具合だ。タワーの横にはホイップクリームとメープルシロップ、ストロベリーにラズベリー、ブルーベリーといった果物がごろごろと載せられている。
     薫の目の前に置かれた皿はシンプルなもので、パンケーキが三枚とよく焼いたベーコン、ウィンナーにレタス、付け合わせにとケチャップがかけられていた。輝と翼は並んで二人掛けのソファーに腰を下ろし、薫の様子をじっと伺っている。
    「……食べればいいんだろう。いただきます」
     軽く手を合わせ、薫はパンケーキへ挑んだ。一口大に切り分けた生地は口に入れた途端、ふわりと溶けた。ほんのりと甘みを感じる。続いて、ベーコンとレタスを食べる。カリカリとした食感にレタスの瑞々しさが加わり、確かに美味かった。味付けも悪くない。自然と頬が緩んでいた。
     オレもいただきます、と翼がフォークとナイフを構え、パンケーキタワーに挑んでいく。まとめて三、四枚ほどを切り崩すとそのまま頬張った。あっという間に空色の瞳が嬉しそうな色で満たされる。
    「すっごくおいしいです、輝さん!」
    「そいつは良かった、作った甲斐があったぜ。んじゃ、俺も」
     いただきまーす、と輝が最後にパンケーキを口にする。輝の皿にはバナナやオレンジ、余ったのだろうベーコンやウィンナーが無造作に添えてあった。適当にアレンジして食べてくれよ、とテーブル上に置いてある様々なトッピングをちらと見ながら輝が呟く。いつの間に買い揃えたのか、チョコレートシロップや色とりどりのカラースプレー、マシュマロなども置いてある。おそらくは殆どが翼の胃袋へと消えることだろう。
     合間に飲むコーヒーも苦味が強く、パンケーキとの相性を考えて淹れられたものだと分かった。天道、と薫が呼びかける。ん、と輝がパンケーキを頬張ったまま小さく首を傾げた。
    「君にしては悪くない」
    「そりゃどーも」
     素直じゃねーんだからなあ、と小さく漏れた言葉は果たして薫の耳に届いたかどうか。輝さん、おかわりってありますか?と翼の明るい声が響くまで、束の間の平穏が訪れていた。


    続く
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    SPOILERこの文書は『ブラックチャンネル』の、主にエピソード0について語ります。漫画版・アニメ版両方について触れます。
    コミックス最新刊の話までガッツリあるのでまだ読んでないよこれから読むよって方はご注意ください。
    あくまで個人の考察です、自己満足のため読了後の苦情は一切受け付けておりません。
    タイトルの通り宗教的な話題に触れます。苦手な方はブラウザバックで閉じる事を推奨致します。
    ブラチャン エピソード0について実際の神話学と比較した考察備忘録目次:
    【はじめに】
    【天使Bとは何者なのか】
    【堕天】
    【そもそも"アレ"は本当に神なのか】
    【ホワイト(天使A)とは何者なのか】
    【おまけ エピソード0以外の描写について】


    【はじめに】
    最近、ブラックチャンネルという月刊コロコロコミック連載の漫画にどハマりして単行本最新5巻までまとめて電子購入しました。
    もともと月刊コロコロ/コロコロアニキの漫画はよく読んでいたのですが(特にデデププ、コロッケ!etc)、アニキの系譜であるwebサイト『週刊コロコロコミック』において次々と新しい漫画の連載が始まり色々読みあさっていたところに、ブラックチャンネルもweb掲載がスタートし、試しに読んでみたらこのザマです。
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