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    輝さん誕生日祝いです。CPは輝翼と薫翼が共存しています。遅ればせながらお誕生日おめでとうございました!

    #輝翼
    glowWing
    #薫翼
    aromaticWings

    Sweet Sweet Day「お邪魔しまーす」
    「邪魔するぞ」
     おう、と家主の輝が弾んだ声で後ろを振り返った。片手には白い箱を大切そうに抱えている。今日のサプライズプレゼントである巨大なケーキはスタジオのスタッフを含めても食べ切れるものではなく、輝自らが持ち帰ってきた。今日、輝さんのおうちに行ってもいいですか、薫さんと二人で、と更に嬉しいプレゼントの申し出もあった。だからだろう、輝の頬は際限なく緩んでいる。その顔でカメラの前に立つなよ、と薫にこぼされるくらいにはにやけていた。だって仕方ないだろ、と輝は内心で呟く。こんなに最高のプレゼントをもらって、平然としていろだなんて絶対に無理だ。
    「今、コーヒー淹れるからな。二人ともこっちで待っててくれ」
     リビングのドアを開けると冷えた空気が流れてくる。暖房のスイッチを入れつつ、輝は二人に促した。勝手知ったるなんとやらで、翼も薫もソファーに腰を下ろす。今日の収録は大成功でしたね、と翼の声がはしゃいでいた。こぽこぽとケトルの中で沸き上がる水音を聞きながら、輝はカウンターキッチン越しに二人を眺める。薫は微かに頷きつつ、翼と何かを話している。俺も早く二人に混ざりたい、とはやる気持ちを抑えつつ、輝は人数分のカップを用意した。
     フィルター越しに熱湯を注げば、たちまち香ばしい香りが立ち上がる。ぷつぷつと小さな気泡が現れては消えていく。今日のコーヒーはケーキに合わせて少し苦味の強いものにした。今朝挽いたばかりで豆の鮮度も申し分ない。香りにつられたのか、カウンター越しに翼がひょっこりと顔を覗かせた。
    「うわあ、いい匂いですね。輝さん、この豆ってどこで買ったんですか?」
    「ああ、前に翼にも飲ませてやったやつと同じ店だよ。最近いいのが入荷した、って親父さんに勧められてさ」
     輝は空いた片手で翼の頭を撫でる。ふわふわとした感触は毛艶の良い犬を撫でているかのようだ。翼も満更ではないのか、心地良さそうに目を細めている。あと少し、身を乗り出したら唇同士が触れ合う距離だ。つまみ食いしちゃ怒られるか、と輝はちらりとソファーの方を伺う。戻ってこない翼をいつものことと思っているのか、薫は手元に視線を落としている。
     翼。声を潜めて呼びかければ、とろんと気持ち良さそうに蕩けた瞳がじっとこちらを見上げてくる。だめだ、我慢なんて出来そうもない。輝は指先で翼の顎に触れると、そのまま口付けた。甘い匂いがする。ケーキのクリームと苺の香りだ。ちゅう、と音を立てて離れた唇に、翼は名残惜しいとでも言いたげにこちらに向かって手を伸ばそうとしていた。
    「柏木。待て」
    「っ、薫さ、」
     翼の背後から急に薫の声がした。青空の色を写し取った瞳が驚きで見開かれる。薫の手のひらがさっきまで触れていた唇を塞いだ。常ならば凪いだ海のような瞳が、咎めるようにこちらを見据えていた。怒られる。まるで教師に咎められた生徒のように、咄嗟に輝は身構えてしまう。
    「天道。コーヒーは出来たんだろう、早く持って来い」
    「分かってるよ。待たせて悪かったな」
     君もだ、柏木。薫の瞳が不意に柔らかく細められる。僕がいるだろう、と外した手のひらの向こう側へ口付ける。翼の目が再びとろんと蕩けた。甘やかで柔らかなキスを受け、その身体はふにゃふにゃと力なく薫の腕へと収まってしまう。どうだ、と言いたげにこちらを見てくる薫に、輝は降参だと両手を上げた。
     リビングのテーブルには三等分されたショートケーキと淹れたてのコーヒーが並んだ。デザートは別腹だと言うし、おそらく入るだろう。幸いにも翼が同席しているのだから、万が一にも食べ残す心配などない。もっとも、彼らがいなくても輝は自分一人で味わって食べ切るつもりでいたが。
    「輝さん。はい、あーん」
    「いや、自分で食べられるぞ?」
     左隣から当然のように翼の手が伸びてくる。一口大に切られたケーキが輝の目の前に運ばれてきた。有無を言わさず、フォークが唇に触れる距離までやって来る。翼、と呼びかけようと口を開けた途端、甘いクリームとイチゴのほのかな酸味が舌の上に広がった。
     ケーキより、とびきり甘い笑みを浮かべて翼が言う。
    「今日は輝さんのお誕生日なんですから、オレたちに任せてください」
    「んぐ、……オレたちって、」
     右隣からすっとフォークが伸びてくる。薫が渋々といった様子で口を開いた。
    「柏木にねだられたんだ。今日は天道の誕生日だから、甘やかしてやれと」
    「違いますよ、薫さん。オレ、今日くらいはお二人に仲良くして欲しいって思ったんです」
     どちらもあまり意味は変わらないだろう、そう思ったが輝は突っ込むのをやめた。何にせよ、どんな理由にせよ、こうして二人が自分を思って祝ってくれている。しかも自分の地元まで赴いて、材料まで集めてくれた。パティシエが関わっているとはいえ、収録中に見た映像の二人は懸命にケーキ作りをしていた。気持ちだけでも十分に嬉しかったのに、こうして目の前に二人からのプレゼントが置かれている。
     再び自然と頬が緩んでしまった輝に、今度こそ薫は命令を下した。
    「やめろ天道、ニヤけるな。早く口を開け」
    「へいへい、仰せのままに」
     あーん、と口を開けば、言葉とは裏腹にそっと舌の上へとケーキが置かれる。素直じゃねーんだから、桜庭ちゃんは。口にしかけた台詞をケーキごと飲み込む。甘くて少し酸っぱくて、コーヒーで流してしまうのは惜しい気がした。
     美味しいですか、と翼が期待で瞳をきらきらと輝かせて尋ねてくる。薫は素っ気なく、僕たちが作ったんだから聞くまでもないだろう、と呟いた。
    「……ああ、今まで食べたケーキの中でも最高に美味しかったぜ!」
     だから、輝は両手を伸ばして二人をぎゅっと抱きしめた。最高で最愛の恋人と仲間に、心からの感謝を込めて。

    〜END〜
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