全部雨のせい 日暮れからの雨が本降りになった夜更けのバス通り。少し強めの風に対抗するように傘を差した咲也が歩いていた。目指すは自宅から徒歩十五分の秀彦の家。どうしてもやりたくなったゲームを返してもらいに行くところだった。
それはまあ口実で、このところ仕事が立て込んでいた秀彦に会いたくて。今日は帰っているはずだった。
雨がやむという明日でもいいとは思ったが、ゲーマーなのにこじつけてでも行きたい気持ちだったのだ。
しかしこの雨。やめろと言わんばかりに吹き付けてくる。足元も腕もそれなりに濡れていた。早くマンションで温かいコーヒーの一杯でも飲ませてもらいたかった。手土産の一つでも持ってくるべきだったかと思ったが、自分が何よりの土産だろうと考えた瞬間、急な突風に傘が大きく煽られた。運が悪いことに、
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