あったかもしれない東二馴れ初め話10月27日、東隊作戦室でふたりきり
「お疲れ。お前が改まって話なんて珍しいな」
「はい、東さん。俺、20歳になりましたよ」
「ああ…きょう誕生日だったか、おめでとう。焼肉でも食いに行くか?」
「俺、東さんのことが好きです。よければ俺と交際してください」
上体を45度に曲げ、深々とおじぎ。
「…え?」
二宮のつむじしか見えず、表情が読めないので困惑する東
焼き鳥居酒屋でカウンター席に並んで座る沢村と東
「それで…返事はいつでもいいって言うから保留にしてきちゃって…」
「はあ〜〜〜何それ、モテ自慢?いいじゃない付き合っちゃえば。前の彼女と別れてけっこう経ってるじゃない」
「それがその…ボーダー関係者…というか…」
「なあに、何かあったら気まずいとかボーダーの体面とか考えてるわけ?東くんなんてすでに噂立ち放題の色々言われたい放題なんだからそんなの気にする必要ないでしょ」
「ぎくっ」
「表向きは一介のB級隊員なんだから外から何か言われることもないでしょうし。東くんみたいな人が模範的なお付き合いをすればボーダーの風紀的にも望ましいんじゃない?」
「それに…すぐに断らなかったってことは、東くんも相手の子のこと、憎からず思ってるってことなんじゃないの?あんた普段聡いくせにそんなところだけ鈍いんだから…よくよく自分の胸に聞くことね」
「ま、わたしとしては、あんたに公然の恋人ができれば、「東さんと沢村さんって付き合ってるんですか」って聞かれなくなって済むから、願ったり叶ったりだわ〜」
ボーダー本部通路
(自分の胸に聞いてみろったって…でも他に相談するってもなあ…ボーダーは未成年ばっかだし…
ゼミのやつらはアテになりそうにないし…(麻雀組を思い浮かべる)…あいつらは論外だな…)
ぐるぐる考えながら歩いていると
「…東さん。いま帰りですか」
やや照れくさそうに目をそらす二宮
帰り道
「…あの、俺から聞くのはどうかと思ったのですが。この前の話、考えていただけましたか」
「あ?ああ…すまんな待たせていて。このところゼミが忙しくてな(我ながら苦しい…)」
「あっ気を遣わなくていいんです。むしろ俺の方こそ…東さんの気を煩わせたなら申し訳ないです」
珍しく意気消沈気味で目を伏せる二宮
(二宮…本気なんだな…まあこいつの場合、冗談とかないだろうけど…しかしなんて答えれば…)
(ん…よく見るとまつ毛長いな…きれいな顔して…さぞ女の子たちから引く手数多だろうに…(モヤ…))
(モヤ…?)
「あの、東さん」
「んあっ!?すまん、何でもない!」
「いえ。俺は大学の集まりがあるので。ここで失礼します」
「ああ。またな」
(俺も飲みに行くか…)
(色々考えすぎてあまり進まなかったな…)
ひとしきり飲んで夜も深まり、帰り道で飲み屋から出てくる大学生集団の中にややふらふらの二宮をたまたま発見する
横には二宮を気遣うような持ち帰りそうな女子(ボディタッチ多め)
思わずカッとなり、「二宮!」叫び、割って入って二宮の腕を掴んで走り去る東
(なんで…なんでだ?二宮…)
「あ、ずま、さん…?」
人気のないところまできて、息を切らせながら向き合うふたり(街路樹の前)
「お前は…俺のことが…好きなんじゃなかったのか…!?」ハァハァ
「…え…?東さん…おっしゃる意味が…」
息を切らせながらもキョトン顔二宮
(俺は一体何を…)
二宮の赤らめたきれいな顔
(こんなに惚れっぽかったかな、俺…)
自分がヤキモチ妬いてたことに気がつく東
「いきなりごめんな…俺もお前のことが好きみたいだ」
頬に触れる
「待たせて悪かった…これからよろしくな」
「東さん…」
二宮を抱きしめる東
「こちらこそ」
はっぴーえんど♡
エピローグ
「そういえば、なんで20歳になったその日にやってきたんだ?」
「それは…」
(回想)
ボーダー本部の廊下にて 沢村と東
「そういえば東くん、この前中央オペレーターの女の子たちに噂されてたよ、東さんかっこいい、彼女いるのかなーって」
「まさか!10代の子から見たら俺なんておっさんだろうに」
「いやいや、年上の男性っていうのはそれだけで年頃の女の子には魅力的なものなのよ」
「お前が言うと説得力あるな」
「言い寄られても手なんか出しちゃダメよ?発見し次第孤月で真っ二つだわ」
「それは勘弁だな…まあでも安心しろ、未成年の子たちなんてみんなただのかわいい後輩たちだ、まかり間違っても付き合おうなんて思わないよ」
死角になる横道で聞いていた二宮
(回想終わり)
「盗み聞きするつもりはなかったのですが」
「そうか…おまえは真面目だな…」