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    桜餅ごめ子

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    桜餅ごめ子

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    思いつきSS(未完)(https://poipiku.com/7411890/9489845.html
    のカービィ視点。続き書くかは未定。

    ##全年齢

    遣らずの雨「あれぇ……?」
     いつもならベッドに差し込む清々しい朝日がぼくを気持ちよく起こしてくれるはずなのに、今日はそれがなかった。不思議に思いながらも、よいしょ、と身体を起こす。すると、自分が寝ていたのが、自宅のベッドではないことに気がついた。
    「……ここ、どこ?」
     そこは、分厚いカーテンに包まれた、大きなベッドの上だった。お布団もシーツもふかふかしていてとても寝心地が良いけれど、どうやら二度寝してる場合じゃなさそうだ。慌ててお布団から出ようとすると、大きな手のひらに身体をガシッと掴まれ、抱きすくめられてしまった。
    「わあっ! ……え?」
     引き寄せられた方向には、ぼくのともだちである、マホロアがいた。しかし、彼の姿は、普段のものとはまるで違う。炎のようにはためくローブ。白い手袋を嵌めたゴツゴツとした手。大きく捻じ曲げられた、硬そうな二本の角。それに纏わり付く、黄金の冠――忘れるはずがない。マホロアは、マスタークラウンを被った、あの日の姿をしていた。
    「な、なんで?」
     全宇宙の支配者になると宣言したマホロアを止めるため、ぼくたちは戦った。砕け散るマスタークラウンの破片の向こうに消えていくマホロアの姿を、ぼくははっきりと覚えている。
     それからしばらく、マホロアが何処に行ってしまったのか、生きているかどうかすら分からない状態が続いた。しかしある日、彼はひょっこり帰ってきた。青空と白雲のローブを身にまとった、あの頃の姿で。まるで何事もなかったようだ、とすら思ったけど、彼の表情から、あの頃とは違う、どこか吹っ切れたものを感じて――ああ、よかったなあ――と、ひどく安心したのを覚えている。
     しかし、今の状況は、まるであの日の戦いに逆戻りしたようだ。むしろ、それよりもっと酷い状況にすら見える。まるで、マスタークラウンを破壊したのも、マホロアが帰ってきたのも、全てが泡沫の夢で、本当はぼくはあの時マホロアに負けていて、此処に囚われている――そんな気すらしてきた。
     ぼくは堪らなくなって、マホロアの顔をじっと覗き込んだ。マホロアは眠っていた。大きな手のひらでぼくを抱き寄せたまま、もう片方の手を腕枕代わりにして。すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていて、苦しんでいたり、うなされていたりする様子はない。まずはそのことにほっとして、次にマスタークラウンを視線を移した。
    「……?」
     あの日、マホロアが被っていた冠からは、禍々しく忌まわしい気配を感じた。しかし今、彼の頭上にある「それ」からは、何も感じない。マスタークラウンは、ぎらぎらと厭らしく光る隻眼の宝石で、ギチギチと締め上げる金色の蔦で、マホロアの全てを啜り尽くそうとしていたのに――今彼の頭にあるのは、単なる宝飾品としての「冠」のように見える。
    「ンゥ……、フワァァ……」
     マホロアが大きくあくびをした。薄っすらと目を開けて、横に寝転ぼうとして――どうやら、身体の変化に気がついたらしい。恐る恐るといった様子で、頭や角をさすっている。ぼくが隣にいることにはまだ気付いていないようだ。びっくりさせすぎないように、声をかけるタイミングを伺っていると、マホロアは突然ガバっと身を起こして、サイドテーブルにあった手鏡を掴んだ。
    「……ナニ、コレ」
     呆然とした様子で、鏡面を見つめている。ぼくはそっと寄り添って、声をかけた。
    「……マホロア」
     夕暮れ色の瞳がこちらに視線を向ける。
    「カービィ……?」
     戸惑いに揺れていたその瞳は、ぼくを捉えた瞬間、安心したように和らいだ。しかしすぐに顔を険しくさせて、ぼくを真っ直ぐ見つめた。
    「カービィ、ココがドコなのか、ナンデここにいるのか、知っテル?」
     ぼくは力なく頭を振った。
    「……ううん、何も。目が覚めたときにはもうここにいて、その姿のきみが隣で寝てて……」
    「……ソウ」
     ぼくの言葉を聞くと、彼は口元にしなやかな指を押し当てて考え込んだ。彼の様子から察するに、どうやらマホロアにも何が起こっているのか分からないようだ。だが、先程抱いた不安が晴れたわけではない。ぼくは確証を得るため、彼のローブを軽く引っ張った。
    「カービィ? ドウシタノ?」
     マホロアがぼくを見下ろす。恐ろしい姿をしているけど、その表情は普段マホロアがぼくに向けるものと同じだった。
    「……この前、ぼくと一緒にローアで映画観たの、覚えてる?」
    「エ? ウン」
     つい数日前、ぼくはふと、ローアのメインモニターがまるで映画館みたいだと思った。マホロアに、このモニターで映画を観たいと提案すると、彼は色々準備してくれて、二人で本格的な映画鑑賞を楽しむことができた。大迫力だったね、と笑いかけると、マホロアは満面の笑顔で答えてくれた。
    「ぼくがポップコーンを食べたいって言ったから、マホロアがいろいろ用意してくれたよね。あれ、美味しかったなあ」
    「ソウダネ。キャラメル、チョコ、イチゴ、バター醤油、カレー……タクサン作ったノニ食べきっちゃうものダカラ、ホントによく食べるナァって思ったヨォ」
     彼が挙げたポップコーンのフレーバーは、まさしくその時マホロアが用意してくれた種類と全く同じだった。
     つまり、今目の前にいるマホロアは、見た目はあの日戦った時のものだけど、中身は確かに「いま」のマホロアのようだ。
    「……うん、うん! そうだね……! ……よかった、いつものマホロアだぁ……っ」
     ぼくは心から安堵して、はあっと大きくため息をつく。マスタークラウンの悪夢が終わってなかったかもしれないなんて、想像するだけで恐ろしかった。
    「ねえ、マホロア。……そのクラウン、本物……?」
     彼の頭上をこわごわと指し示した。あの日見たマスタークラウンのような気配を感じないとはいえ、確認しておきたかった。
    「違うと思ウ」
     マホロアは言葉少なに、しかしはっきりとそう言った。
    「……やっぱり、そうなんだ。マスタークラウンは、すっごくいやな感じがしてたんだよ。でも、その冠からはそういう感じ、全然しないもん」
     ぼくが感じたことをそのまま伝えると、マホロアは冠を軽く撫でて、フウとため息をついた。
    「ソッカ。それならこの冠に危険はナイノカナ。……デモそれだと、ボクがこの格好になってる説明がつかないネェ」
     確かにそうだ。マスタークラウンのチカラで変身した姿なのに、今彼が被っているそれは、おそらくニセモノ。では何故、マホロアはその姿になっているのか。別の誰かの仕業なのか? 誰が、どうして? 何のために? 疑問は尽きないが、ひとつ確かなことがある。
    「まあ、マホロアがいつものマホロアなら、きっとだいじょーぶだよ!」
     いつかのあの日のように、自らの胸をぽんっと叩く。マホロアは薄く目を細めると、大きな手のひらでぼくの身体をひょいと持ち上げた。
    「わあっ、ま、マホロア?」
     驚いて足をぱたぱた動かすぼくを見て、マホロアはククッと意地悪げに笑った。
    「とりあえず、辺りを探索してみようヨォ。状況を把握しなきゃ、何も始まらないシ」
     マホロアの言うことは理解できるが、それと抱っこされていることが結びつかない。小さい子扱いされているようで気恥ずかしくて、ぼくは頬を膨らませた。
    「それは分かるけど、ぼく自分で歩けるよ!」
     彼はそんなぼくの様子が面白いのか、からかうような声色で笑いかけながら、ぼくの足をちょこんとつまんだ。
    「イイヨイイヨ、抱っこしてアゲル! だってキミのチッチャイアンヨじゃ、今のボクに追いつけないデショ〜?」
     幼子を扱うような言葉選びにムッとしてしまうが、この姿で戦っていた時のマホロアはひらひらと素早く浮遊してぼくたちを翻弄してきたのを思い出す。
    「そりゃそうだけど……むぅぅ、ちっちゃい子扱いしないでよぉ」
     理屈は分かるので従うことにするが、やはり子供扱いはされたくない。唇を尖らせて不服なのをアピールすると、マホロアは可笑しくて仕方がないというようにケラケラ笑いながらベッドから降りた。
    「クククッ! しばらくのガマンダヨ、カービィ!」
     マホロアの大きな手が、ぼくの身体をきゅうっと優しく包む。まるで、大事な宝物を失くすまいと決意するような、そんな抱き方だった。
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    桜餅ごめ子

    DONE #晩夏_魔術師とあの子は
    二次創作ホラー企画「晩夏、魔術師とあの子は」( https://togetter.com/li/2209738 )用作品です。
    「ストーリー5 彼岸花の川」を使用。
    企画終了までもう少し。最後までお楽しみ頂ければ幸いです!
    尚この小説自体は100%私の性癖(ヘケッッッ!!!!!)で構成されています。
    この世で一番怖いのは 目を開くと、そこは知らない部屋だった。ボクはそこで、見覚えのないベッドに寝かされていた。
    「……?」
     しかし、ボクは少しも驚かなかった。それどころか、恐怖や警戒、疑念といった、本来なら発生するはずの感情が全くわかなかった。
     ベッドの中から周囲を見渡す。やはりどこもかしこも記憶にない。窓の外に広がる彼岸花畑も、遠くで流れるメロディも、部屋に漂う甘い匂いも、何もかも。異常事態であるはずなのに、心は警報の一つも鳴らさない。だが、ボクの論理的な思考が叫んだ。この状況はおかしい、ここから逃げ出さなければならない、と。
     自分でこの部屋に来た覚えはない。ならば誰かに連れてこられたのだろう。一体誰が? 何のために? 分からない。推理しようにも手がかりがない。まずはこの甘い匂いの発生源を辿り、少しでも情報を得よう。ボクはそう思い至ると、ベッドから下りた。
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