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    imori_JB

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    imori_JB

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    俳優村雨×俳優にょたしし。書きたい所だけ。
    性に纏わる全般に苦手意識があるにょたししにベッドシーンについて演技指導(実地)した世界線の二人。

    もしくは俳優村雨礼二による結婚RTA。

    #JB腐
    #さめしし
    #女体化
    feminization

    午前零時を過ぎても① 厚いドアの隙間に身体を滑り込ませて外に出て後ろ手に閉めてしまえば、中の喧騒はもう殆ど届かない。
     ふう、と体温と酒気の混ざった溜息を吐き出した獅子神はドアの前を離れ、普段は食前食後のアルコールを楽しむためのカウンター席の椅子を引き、座る。
     今日この一軒家の人気レストランはとある映画の製作委員会による貸し切りになっていて、獅子神が此処で勝手をしても他の客の邪魔になる恐れはない。
     限られた人々だけを招いたプレミアム試写会と舞台挨拶を終えた後の打ち上げは、皆羽目を外しているようだ。出演していない筈の親しい俳優の姿もちらほら見えていたのは何故だろう。
     主演女優――正しくはW主演の片割れである獅子神の元には製作スタッフや関係者などが次から次へと押し寄せた。彼等を労い愛想よく答えるのも仕事の内、折角の料理も殆ど手を付けることが出来ず勧められたアルコールだけが胃の中に重なっていった。
     酒に弱い方でもないが、取り立てて強い方でもない。これはまずいとミネラルウォーター一本を失敬して逃げ出して来たのだった。
     カウンターの上に整然と並べられているグラスから一つを借り、ミネラルウォーターを注いで一気に飲み干す。
     酔いが回った所為か。今、猛烈に帰りたい気分だ。帰ってピアスやネックレスを投げ捨てて、化粧を拭い落してシャワーだけ浴びてベッドに飛び込みたい。
     マネージャーの梅野に頼めば車を回して貰えるだろう。主役級の一人が早々に離脱もどうかとは思うが、場の雰囲気から見るにまだまだ宴もたけなわ、日付が変わるまでは続きそうだ。
     ハンドバッグからスマートフォンを取り出した獅子神は画面に指を滑らせる。呼び出したい相手は会場の中で配給会社の人間と何やら歓談中であったが、気が付けばきっと出てきてくれるだろう。梅野がまだ出れないというならばタクシーを呼ぶまでだ。メッセージの送信ボタンを押そうとした瞬間、ドアが開く気配がした。
     いわばもてなす側である筈の自分が此処にいて早々に帰ろうとしている事に対するバツの悪さを感じ、挨拶と、場合によっては何か尋ねられるだろうから当たり障りのない答えを頭の中で書き出しながら獅子神は顔を上げる。
     顔を上げて、僅か目を丸くした。想像しなかった相手が其処に居たからだ。盛装の男は無言で獅子神を見つめる。
     派手な衣装に身を包んでも尚、夜闇のような男だなと散々見飽きた相手に獅子神は思う。この男は獅子神がフロアから逃げ出した時、獅子神よりもずっと多くの人に囲まれていた。
    「主役が出てきていいのか?」
    「ブーメランだな。それはあなたもだろう。酔ったか」
     多少なりともアルコールが入っている筈なのに、それを一切感じさせない涼やかで落ち着いた声。
    「まぁ、少し……」
     今作の主役の一人、村雨礼二は眼鏡越しに観察するような目で曖昧に答えた獅子神を見つめ、歩み寄り、隣の椅子を引いて座った。
     ――W主演、などと銘打たれているが獅子神に村雨に並び立つような俳優としての格は無い。キャスティングが発表された直後、関係者にバーターかと笑われた記憶が残る。寧ろ何故W主演など銘打たれたのか、誰よりも一番獅子神が疑問に思っている。
     獅子神にとっては同じ事務所の先輩でもある。
     初めて顔を合わせた時にその存在感と威圧感にてっきり十は上のベテラン俳優かと思いきやまだ三十前、獅子神とそう変わらぬ年齢と芸歴と聞いて唖然とした。寧ろモデルだった頃を芸歴に算入するならば獅子神の方が長いかもしれない。
     まぁそれはそれとして、この村雨礼二という男は間違いなく今売れている俳優だ。
     整った顔ではあるが鋭利な雰囲気は万人受けはしておらず、所謂イケメン俳優では無く個性派俳優に分類されている。撮影時に世話になったヘアメイクの一人が、あの手の俳優は歳をとっても需要が変わらないから良いと評していた。
     半面その強すぎる存在感は共演者や作品を非常に選ぶ。非常に選ぶのだが、著名な監督や脚本家がこぞって彼を使いたがるのはそれだけの唯一無二の魅力があるからだ。
     聞くところによると気難しく、脚本や他のキャスト、場合によってはスタッフまで確認し何か一つ、誰か一人でも気に入らないとオファーを断っているのだという。それを思えば今作、良く獅子神が相手役で受け入れたものだ。
    「……」
     再び無言、静寂が落ちる。変わらず見つめられ、気まずさに獅子神は思わず目を逸らした。
     そう。気まずい、のである。
     クランクアップまでは良かった。余計な事を考える暇など無かったからだ。明らかに他の俳優陣に比べて経験で劣る以上、全ては勉強だ。彼等の演技を間近で見て、学び、盗み、そうして自分を高めていくしかない。
     ――全ては勉強だ。無駄な事なんて一つも無い。だから、後悔している事も無い。「アレ」に勉強以上の意味は無く、ただ気まずいだけだ。
    『私から目を逸らすな。全て覚えていろ』
     耳の奥に今とは違う、乾いて掠れた声が蘇る。釣られて触れられたところの熱さや身体の奥に与えられた痛みを思い出すと、ぶわりと首筋に熱が集まる。
     目の前の男が、すっ、とレンズの奥の紅い目を細めた。動揺を悟られたようで悔しく、そして気恥ずかしい。気まずい空間から逃れたくて、バーカウンターに置いたスマートフォンの、未送信のまま放置したメッセージアプリの送信ボタンを押す。
    「……っつーわけで悪いが、オレは先に帰らせて貰う。そっちはそっちで最後まで楽しんでくれ」
     作り笑いを浮かべながら、早く返事が来いと願いつつ手の中のスマートフォンを握り締める。
     すると、村雨ははぁ、と溜息を吐いた。
    「私もこういう喧しい場は好きではない」
    「お、おう?」
    「ましてあなたも居なくなるというのに、何が楽しいものか」
    「……?」
     楽しい楽しくないに獅子神の存在の有無など関係無いだろうに。妙な事を言う奴だ、という感情が顔に出たのだろう。再びわざとらしく溜息を吐かれる。
     握ったスマートフォンがぶるりと震えてメッセージの受信を伝えた。視線を画面に滑らせる。了解しました、五分後に入り口前に車を手配しますという返事に中座を咎められずに小さく安堵する。
    「ところで、私はそれなりに金銭的に裕福であり、頭脳も優れた方だ。出身は西の方で、実家は十四代前まで遡れる。今でも先祖伝来の土地を所有する地主というものだ。両親は健康で健在、兄は既婚で甥姪が一人ずつ。兄には一時健康不安があったが今は快復した」
     突然始まった自己紹介なのかも良く分からない何かに獅子神は目を白黒させる。初対面の時すら名前しか名乗らなかった奴が、一体何をしたいのだろう。
     獅子神は村雨の年齢や芸歴はインターネットで調べて知った。ついでにその時に彼の学歴なども知ったが、必要な情報では無かったので余り気にしていない。国内最高学府の医学部卒、役柄では無く本物の医師免許を持つ医者だ。それでいて俳優としても成功しているのだから全く以て不思議な存在である。
     その内容にも関わらず鼻持ちならないとは思わないのは、村雨からそれを誇示し自慢しようとする意図を感じないからだろう。ただ単に彼は事実を事実として列挙している。ネグレクト家庭出身施設育ちの獅子神とは全く違う世界の話に、最早嫉妬心すら湧きあがらない。
    「私自身も健康だ。体格にはそれほど恵まれなかったが貧弱という程ではない。持病は無く目立つ病歴も無い」
    「お、おう」
     村雨礼二という役者を、直接顔を合わせる前にもテレビの中で見た事はある。その時に受けた印象よりも数段細く痩せて見え、体力や体調に若干の不安を覚えたのは事実だ。
     撮影を通して共に過ごす時間が増えれば、確かに頑強とまでは言わずとも健康な成人男性の範囲内で、サプリメントと十秒チャージだけを摂取して生きていそうな顔をして撮影後にがっつりと肉を所望し平らげている姿を見て来た。
    「これまでも、そしてこれからも女性関係でトラブルを起こす事は無い。あなたには信じがたいかもしれないが、これでも誠実な男であると自負している」
     それについてはノーコメント。別に強制された訳ではない。提案され、獅子神がそれを受け入れただけだ。
     しかしながら流石に、幾らそういう事に経験が無かった獅子神ですら、性病等の病気を持っていない事を証明する健康診断書を提示して来たのは幾ら何でもおかしいだろうと思う。更にはそれが必要になる程の発展家なのかと邪推もした。
    「あれがあなたに取って逆効果になった事は認める。心配事が一つ減るだろうと思ったのだが」
    「オレが言うのもなんだけど、あんなの見せられたら却って心配になると思うぞ……」
     まぁ、次以降に生かして欲しい。方向は盛大にズレてはいるが村雨なりに誠実さを示そうとした事は理解する。
    「――これらを踏まえ、あなたに提案がある」
    「提案?」
     こくりと頷いた村雨が獅子神の、カウンターの上にある手に自分の手を重ねた。
     小さく目を見張る獅子神には、しかし振り解くという選択肢は生まれなかった。血の気の悪そうな見た目とは裏腹に村雨の手は、獅子神よりも尚温かい。
    「獅子神。私と、交際を前提に結婚して欲しい」
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    takamura_lmw

    DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。

    これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
    桜流し 獅子神敬一が死んだ。
     四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。



     村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
    「——は?」
    「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
     真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
    「……いつだ」
    「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
     村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
    「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
    「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
    「そうか」
    「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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