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    あまおと

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    あまおと

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    リハビリ|短い真ワカ(真←ワカに見えますが、両片想いです)|ドラエマ要素含みます|エマの話を聞くワカの話。

    共通点 きっと誰かに話を聞いてもらいたかったのだろう。

     どうぞ、と緑茶と茶菓子をテーブルに差し出してくれた少女は、そのまま立ち去ることなく若狭の向かいの座布団へと腰を下ろした。
     そうして天気、流行りのアーティスト、近くにオープンした洋菓子店と、ころころ話題を変えながら若狭へ話を振り続ける。
     これは待ちぼうけを喰らっている自分が暇をしないよう気遣ってくれているのだろうかと思ったが、洋菓子店から万次郎への話に変わったとき、それまで笑顔だった少女の表情に些か曇り始め──そこで若狭は気づく。
     ああ、待ちぼうけを喰らわされているのは自分だけではなかったな、と。

     真一郎から彼の実家で昔のアルバムを見ようと誘われたはずの自分は、「悪い。少しここで待ってて」と客間へと案内された。どうやら彼の弟の友人──ドラケンがバイクの希少なパーツを手に入れたらしい。
    「ケンちゃんはいっつもマイキーとバイクのことばっかり。今日は新しいワンピ下ろしたのに、ウチのほうなんて全然見ないまま真兄とマイキーとバイク弄りに行っちゃうし」
     少女──エマは、そう言って三人がいるだろうガレージの方角を睨みつけた。
    「きっとね、女心は男にはわからないのよ」
    「まあネ。同性同士でも互いの腹ん中なんて、結局のところわかりゃあしねえんだ。性別まで違うなら、そりゃあもっと理解が難しいだろうさ」
    「そういうことじゃなくて!」
     もう! っと頬を膨らませて怒るエマに、なにかあると頬を膨らます癖がある彼女の兄──真一郎の姿が重なる。
    「やっぱりエマは真ちゃんと似てるね。素直なところ」
    「それって褒めてる?」
    「もちろん。ワンピもすげぇ似合ってる。かわいいよ」
    「……嬉しいけど──ケンちゃんにそう言ってもらいたかったな」
    「そりゃそうだ」
     どこまでも素直に気持ちを言葉にするエマに、若狭はハハッと声を上げて笑った。
    「なあ、あとでドラケンにオレから服装褒められたって伝えてみな? エマが自分より先に他の男から褒められたってなったら、先にエマに言葉をかけなかったことを後悔するだろうよ」
     ニッと口の端を上げて見せると、エマは一瞬キョトンとしたあと、「そんな風に思ってくれるかなぁ」とやわらかな笑顔を浮かべる。
    「もしそれでもドラケンが澄ましてやがったら、また別の作戦考えようぜ」
    「珍しいね、ワカクンがそんなに乗り気になるの」
     話すだけ話してスッキリしたのか、エマはいつもとは少し違う様子の若狭に興味を向ける。
    「まあ、オンナゴコロってやつはよくわかんねえけどさ──『マイキーとバイクのことばかり』っつーのは、少し気持ちわかるからね。まあ、そこが良いところでもあるんだけどさ」
     そう言って若狭もガレージがある方向へと視線を巡らせる。
     手や顔をオイルで真っ黒にしながら、弟とその友人と楽しそうに笑っているだろう彼の姿を思い浮かべて、こころが微笑ましい気持ちと少し寂しい気持ちの狭間を行き来する。
    「ワカクンも待ちぼうけ喰らってるもんね」
    「ま、そういうこと」
     にしとこうか──胸のうちで言葉を付け足して、若狭は出された緑茶へと手を伸ばす。
     すると、下ろしたてのシャツの袖が自分の視界に映った。
     

    end
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