ポイント・オブ・ノーリターン 窓からは、雲一つない晴れた青空が見えていた。空港に停泊した艦は駆動音一つ立てず、沈黙している。
耳鳴りがしそうなほどの静けさの中で、外套の留め具に指をかけた。そこへ、呼び出し音が鳴る。
低く掠れた男の声が、シルバーノアの廊下からアークの名前を呼んだ。知った声だ。だが、珍しい。
ロックを外し、キャスケット帽に手を伸ばす。
「どうぞ」
程なくして扉が開いた。黒装束に身を包んだハンターの男が、そこにいた。彼一人だけのようだった。ますます珍しい。
「おかえり、シュウ。早かったな」
疑念を振り払い、微かな動揺を悟らせることのないよう努めて声をかける。シュウは小さく顎を引くように頷くと、部屋の中に入って来た。彼の背後で音を立てて扉が閉まる。
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