One and Only 目の覚めるような青空の下に、黄金色に光り輝く小麦畑が拡がっている。ラクールではあまり目にしたことのない砂利道には、青やピンクといった色とりどりの矢車菊や、ニゲラ、スカビオサといった野花が乱れ咲き、その合間を蝶が揺らめくように飛んでいた。水車を回す小川には日差しが降り注ぎ、光を照り返した魚の鱗が時折強く煌めいては眼を焼き、レオンはその度に薄く目を細める。
小さな木陰に身を寄せたレオンは、フェルプール特有の優れた聴力で小麦畑の奏でる、潮騒にも似た麦穂のせせらぎを拾いながら、半刻前にクロードが姿を消したアーリア村の村長の家を見上げた。
故郷に——地球に帰る。
宇宙の命運を賭けた戦いを終え、エクスペルを取り戻してから暫くして、歳上の友人はレオンに告げた。最後の戦いを前に、星の海の向こうへ帰って行く彼との別れを予感していたレオンは、落胆はしたがあまり驚かなかった。だが、友人は更に「一緒に来ないか」と言葉を続けた。レオンはそのとき、いつかのエル大陸の集落でのやり取りを思い出した。一度はレオンを集落に置いていくこと提案した彼は、考えを改めた。同じだ。
6156