黄昏泣き皮膚を切ったら血が出るように涙が溢れ出る。
なんということはない、無意識に流れる。夕暮れ時に突然に始まり、放っておいたら1時間くらいで収まる。集合体だからか、バグというやつか、原因はハッキリと分からない。
「黄昏泣きなのだろうな」
俺を腕の中に収めた三日月さんが言う。俺の両目からはダバダバと涙が出ている。いつからか、俺が涙を垂れ流す時、三日月さんは俺を腕の中に収めるようになった。まるで隠すようなその行為は、少し気恥しさと居心地の良さを感じていた。
「なんだそれ?」
「人間の赤子は黄昏時に訳もなく泣くらしい」
ムッとする。赤子扱いしている。
「俺と同じってか?」
三日月さんは、袖で涙を拭った。宝物の埃を払うように。
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