髪の毛の話とか高校の時の話とか「柳楽さん、いつから髪伸ばしてるんですか?何か理由とか」
「……やっぱり気になる?この頭」
「いえ、似合ってるし、柳楽さんはかっこいいです!」
(ちりかの脳裏に浮かぶ大学の友人の「ちりちゃんよくオタクっぽいおっきい人と一緒にいるよね」の台詞)
「いや、まぁ俺も気に入ってこの頭してるわけじゃないんだけどね。橘さんは俺が猿の化け物って知ってるだろ。目覚めたのはこっちに越してきてからなんだけど、前兆があってさ。」
「前兆、ですか。」
「高三のセンター試験の当日熱が出たんだ。40度。より上がった時もあった。」
「高熱じゃないですか!?だ、大丈夫だったんですか!?」
「まぁそんなコンディションじゃ試験もマトモに受けられるはずなくて、灰色の浪人生活を送ることになったってわけなんけどね。合格確実って言われてたし単願だったし私立に行く気もなかったから仕方ないんだけど。熱が3日くらい続いて、起きたら髪が伸びてたんだ。3日で40センチくらい。多分それが俺の猿の目覚めのきっかけだったんだ、今思うと。」
「た、大変だったんですね……。」
「勿論そのときには短く切ったんだけど、そっからも猿になる度に伸びてるんだよね。もう面倒くさいし、制御出来るようになるまでは適当に伸ばしとこうと思って。……制御出来るようになるか解らないけど。」
「そうだったんですね。あっ、でも長髪似合ってるから良いと思いますよ!……ということは、柳楽さん高校生のときは髪短かったんですか?」
「え、まぁね。水泳やってたし邪魔にならないようにフツーに短くしてたよ。」
「しゃ、写真とか、ないんですか?見たいな、なんて……。」
「ちょっと待ってね、(スマホスイスイ)これ高三の秋くらいかな?」
「かっ……」
「蚊?」
「……かわいいですね、なんか、爽やかで、凄くかわいいしかっこいいです。」
「いや別に可愛くもかっこよくも爽やかでも無いけど……。目つき悪いし眼鏡なのに無駄にガタイ良すぎてバランス悪いって女子からは敬遠されてたよ。インテリヤクザって影で言われてたし」
「高校時代の柳楽さん……モテてましたよね」
「橘さん話を聞こう?」
「だって、こんな男子が同じ学年に居たらすごく気になっちゃいますよね。私だったら気になっちゃいます。それで、柳楽さん優しいから、ちょっと優しくされたら好きになっちゃいますよね。柳楽さん何人付き合ったことあるんですか!?」
「落ち着いて橘さん!そんなに居ないから!」
「なんにんいたんですか!?」
「いや別に普通で、中高と1人ずつ。」
「モテモテじゃないですか!付き合ったことあるんじゃないですか!私とは付き合ってくれないのに!!」
「落ち着いて橘さん!!付き合ったって言っても一緒に帰ったり、テスト勉強したり中高の付き合いなんてそんなもんだよ!!」
「……キスは?」
「………………まぁそれくらいは。」
「柳楽さんのバカ!!」
「待ってよ橘さん!俺たちだってキスしたことあるじゃない!忘れたの!?」
「……あのときは獲猿さんの柳楽さんだったじゃないですか。人間の柳楽さんにしてもらったことはないです。」
「……そういえばそうだね。」
「……して欲しいって言ったら?」
「いや、俺はまだ自分と化け物が信用出来ないからそれは出来ない。」
「やっぱり柳楽さんのバカ!」
「ねぇ、俺も橘さんの高校時代見てみたいんだけど、画像ないの?」
「えっ、見たいん、ですか?」
「俺だけ見られるのフェアじゃないし、純粋に気になる。どんな制服かとか。」
「えー……うーーん、……やっぱりダメです。」
「なんで。」
「高校生のときって、今よりちょっと太ってるし、お化粧もしてないし、髪もなんか今思うとダサいなーとか思っちゃうし、だからダメです!」
「俺は気にしないけど。橘さんなら少しくらい幼くて洗練されてなくてもきっとかわいいよ。まぁ嫌なのに無理に見せろとは言わないけど。」
「……どうしてもって言うなら、今の私が制服着てみますけど。」
「それはなんか恥ずかしい気がするからやめよう。」