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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

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    ミキとクラ。桜の下に埋められたのは何でしょう。ホラー気味かもしれない。
    2023/3/27にTwitterにアップしたものの再掲になります。

    彼岸には程遠い 桜にはいくつも種類がある。花の色、花弁の重なり方、咲く時期、それぞれ異なっているが、いずれも美しいと思う。しかし、唯一、苦手に感じる桜がある。枝垂桜だ。宵闇に浮かぶ薄紅は妖しく、風に靡く枝は意思を持っているようだ。それが、この世のものではないように感じられて、なんだか薄気味悪い。

     勤務からの帰り道、大きな公園の前を通る。最近は夜桜見物の客で賑わっていたが、今日に限ってはやけに静まっていることに気付いた。園内に目を向ければ、満開の枝垂れ桜が月明かりに照らされている。そして、よくよく目を凝らすと、桜の下に誰かが蹲っているのが見えた。ふらりと立ち上がった細長いシルエットには見覚えがある。三木だ。
     声を掛けようと思い、公園に足を踏み入れようとした。しかし、それは叶わなかった。
     こちらを振り向いたはずの彼の顔に、何も無かったからだ。
     その瞬間、背筋が凍り付いた。拳を握り締めて再度足を踏み出そうとすると、今度は突風に見舞われた。そして、桜吹雪が視界を覆っていく。目を開けていられないほどに、眩しい。

     風が止んで瞼を上げると、目の前には彼が立っていた。
     「いやー、すごい風でしたね」
     なんて目を細める彼は、いつも通りの三木に見えた。先程の姿は見間違いだったのだろうか。きっと、そうに違いない。だって、目の前の彼は、ちゃんと笑っているのだから。
     一人で安堵の息を吐いていると、
     「クラさん、花びらが沢山ついちゃってますよ」
     と彼がこちらに手を伸ばしてきた。あれほどの突風に見舞われたのだから、無理もないことだ。礼を言って、彼の手を受け入れようとしたところで、強烈な違和感に襲われた。

     自分よりも桜の近くにいたはずの彼に纏わりつくものはなく、その姿はまるで闇から抜け出てきたかのように真っ黒だった。
                                          完
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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEミキとクラ♀。クマのぬいぐるみがきっかけでミッキが恋心を自覚する話。クラさん♀が魔性の幼女みたいになってる。これからミキクラ♀になると良いねと思って書きました。蛇足のようなおまけ付き。
    2023/4/8にTwitterにアップしたものに一部修正を加えています。
    魔法にかけられて 「それでは、失礼します」
     深めに礼をして、現場を後にした。ファミリー層向けイベントのアシスタントということで、テンションを高めにしたり、予想外の事態に見舞われたりと非常に忙しかったが、イベント自体は賑やかながらも穏やかに進行した。主催している会社もイベント担当者もしっかりとしており、臨時で雇われているスタッフに対しても丁寧な対応がなされた。むしろ、丁寧過ぎるくらいだった。
     その最たるものが、自分が手にしている立派な紙袋だ。中には、クマのぬいぐるみと、可愛らしくラッピングされた菓子の詰め合わせが入っている。
     「ほんのお礼ですが」
     という言葉と共に手渡された善意であるが、正直なところ困惑しかない。三十代独身男性がこれを貰ってどうしろというのだろうか。自分には、これらを喜んで受け取ってくれるような子どもや家族もいなければ、パートナーだっていないのだ。そして、ぬいぐるみを収集、愛玩する趣味も持っていない。
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