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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

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    ミキとクラ。寝ている間に髭が生えるミッキと魔が差したクラさん。やや、仄暗いかもしれない。書いている人はミキクラと思っています。
    2023/4/6にTwitterにアップしたものの再掲となります。

    薄明を遠ざける 夜明け前に、ふと目が覚めた。頭はすっかり冴えていて、眠気が戻ってくることはなさそうだ。隣からは規則正しい寝息が聞こえてくる。寝返りの要領で彼の方に向き直ると、薄明りでも彼の顔がよく見える。相変わらず両目の下の隈は色濃く、頬の窪みは深い。気配に聡い彼のことなので、起こしてしまうかもと思いつつ、そっと頬に手を伸ばした。
     すると、彼の肌に掌が触れるかどうか、というところで、チクチクとした感触に阻まれた。髭だ。そういえば、以前、彼に現代の剃刀を触らせてもらったことがある。軽くて扱いやすそうだった。とはいえ、今の自分には無用なものだ。頬に触れる枕カバーのサラサラとした質感を心地よく感じながら、思いを馳せる。
     隣の彼は眠っている間にも変化が生じているというのに、自分はどうだろうか。激しい運動をしたとて、碌に汗も掻かない身体だ。老いさえも遠く感じてしまう。せめて、彼がこのまま眠っていてくれれば、変化が、老いが、緩やかになるのではないか。
     そんなことを思っていると、彼の瞼がぴくぴくと動き始めた。慌てて手を引こうとしたが、彼の意識は既に浮上しているようだ。目は閉じているものの、「……もぅ、朝です、か…?」と掠れた声が聞こえてきた。カーテンの隙間から漏れ出る光は先程よりも濃くなっており、朝日が近付いてきているのは明らかだった。その光から彼を隠すようにして彼の目元を手で覆った。
     「マダ、夜デスヨ。ユックリ、眠ッテクダサイ」
                                         完
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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEミキとクラ♀。クマのぬいぐるみがきっかけでミッキが恋心を自覚する話。クラさん♀が魔性の幼女みたいになってる。これからミキクラ♀になると良いねと思って書きました。蛇足のようなおまけ付き。
    2023/4/8にTwitterにアップしたものに一部修正を加えています。
    魔法にかけられて 「それでは、失礼します」
     深めに礼をして、現場を後にした。ファミリー層向けイベントのアシスタントということで、テンションを高めにしたり、予想外の事態に見舞われたりと非常に忙しかったが、イベント自体は賑やかながらも穏やかに進行した。主催している会社もイベント担当者もしっかりとしており、臨時で雇われているスタッフに対しても丁寧な対応がなされた。むしろ、丁寧過ぎるくらいだった。
     その最たるものが、自分が手にしている立派な紙袋だ。中には、クマのぬいぐるみと、可愛らしくラッピングされた菓子の詰め合わせが入っている。
     「ほんのお礼ですが」
     という言葉と共に手渡された善意であるが、正直なところ困惑しかない。三十代独身男性がこれを貰ってどうしろというのだろうか。自分には、これらを喜んで受け取ってくれるような子どもや家族もいなければ、パートナーだっていないのだ。そして、ぬいぐるみを収集、愛玩する趣味も持っていない。
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