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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    @chemical_sheep

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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEミキとクラ♀。クマのぬいぐるみがきっかけでミッキが恋心を自覚する話。クラさん♀が魔性の幼女みたいになってる。これからミキクラ♀になると良いねと思って書きました。蛇足のようなおまけ付き。
    2023/4/8にTwitterにアップしたものに一部修正を加えています。
    魔法にかけられて 「それでは、失礼します」
     深めに礼をして、現場を後にした。ファミリー層向けイベントのアシスタントということで、テンションを高めにしたり、予想外の事態に見舞われたりと非常に忙しかったが、イベント自体は賑やかながらも穏やかに進行した。主催している会社もイベント担当者もしっかりとしており、臨時で雇われているスタッフに対しても丁寧な対応がなされた。むしろ、丁寧過ぎるくらいだった。
     その最たるものが、自分が手にしている立派な紙袋だ。中には、クマのぬいぐるみと、可愛らしくラッピングされた菓子の詰め合わせが入っている。
     「ほんのお礼ですが」
     という言葉と共に手渡された善意であるが、正直なところ困惑しかない。三十代独身男性がこれを貰ってどうしろというのだろうか。自分には、これらを喜んで受け取ってくれるような子どもや家族もいなければ、パートナーだっていないのだ。そして、ぬいぐるみを収集、愛玩する趣味も持っていない。
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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONE病めど狂えないノスと、恐怖に怯えつつ支配されないクラのノスクラ。程度は軽いですが、虫や痛々しい表現を含んでいます。人によっては心に負担がかかると思うので健やかな時にどうぞ。
    2023/2/10にTwitterにアップしたものの再掲です。
    父への献身 これは夢だと気付いている。夢魔の仕業かと見紛う悪夢だ。しかしそれを認識できたからといって、眠りから覚めることはない。どこか遠くから話の行く末を眺める自分と、哀れな登場人物としての自分がぼんやりと交わっていく。

     夢の中で自分は羊になっていた。黒と白の斑の羊だ。荒野を当てもなくさまようのだが、やがて力尽きて動けなくなってしまう。歩みを止めると、何処からともなく鷲が舞い降りてきて体を突かれる。毛皮は既にボロボロで、自らを守るすべと言えば体を丸めて目を閉じるくらいしかない。なされるがまま、肉を食い破られる。血が止めどなく流れ出し、体が冷え切っていくのを感じた。
     満足した鷲が飛び立っていくと、今度は鴉の群れがやってきた。普通の羊であればとっくに絶命しているはずなのに、意識が鮮明に保たれているのは、やはりこれが夢だからなのだろう。痛みはぼやけているが、生きたまま血肉を食われる感覚は何物にも代え難い恐怖となって襲ってきた。それでもまだ目は覚めない。
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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEミキとクラ。映画館に行く。ミッキは自分の気持ちに自覚がありそう。
    2023/1/28にTwitterにアップしたものの再掲です。
    どんな映画よりも予測がつかない けたたましくブザーが鳴り響き、場内が暗くなる。光源となるのは物語を映すスクリーンだけだ。
     隣に座る彼は、映画館にすっかり慣れたものだ。普段は金属でも入っているのかと思うほど真っすぐに伸びた背筋だが、今は力を抜いて椅子の背もたれに体重を預けている。
     彼を最初に映画館に誘ったのはいつだっただろうか。きっかけが単館のリバイバル上映だったことは覚えている。ある日、小さな映画館の前を通りかかったら、昔観たことのある映画が取り上げられていた。上映時間が迫っていたが、二人とも急ぎの用事もなかったので、そのままチケットを購入してしまったのだ。
     癖毛の彼にとってはこれが映画館初体験だったが、思いの外お気に召したらしい。それ以来、それなりの頻度でこの小さな映画館に足を運んでいる。理解可能な言語かつ、お手頃価格で観られるものということで、海外作品のリバイバル上映に偏りがちではあるが、彼はあまりジャンルに頓着しない性質なので問題は無い。ラブロマンス、コメディ、サスペンス、アクション、ミステリー、ホラー等々、食わず嫌いは良くないということで観てみたら、案外どれも楽しめたようだ。あまり前衛的過ぎると困惑していたが、幸か不幸か二人で鑑賞しているので、愚痴やら解釈やらを吐き出す機会を得られていた。
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    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEノスとクラ♀。ノスクラ♀成立済み。お化粧してあげたら誰にも見せたくなくなったノス。女子会の続きですが、色の見分けが付きにくいクラ♀さんがお化粧に挑戦するということだけおさえてもらえばOKです。
    2023/1/22にTwitterにアップしたものの再掲です。
    どうか、ガラスケースに収まっていて 「というわけで、この中から私に合う色を選んでほしい」
     帰宅するなり、大量の化粧品が入った手提げ袋を突き付けてきた我が子は真剣な面持ちだった。全く流れについていけないが、望むことであれば叶えてやりたいと思うのが親心であり、とりあえず話を聞くことにした。

     「つまり、化粧をしたいが、色の見分けがつかないから、私に色を選んでほしい。そういうことで合っているか?」
     「そうだ。面倒事を押し付けて申し訳ないが、協力してほしい」
     「それは構わないが…」
     思いもよらぬ申し出に驚きと困惑が同時に押し寄せてきた。今までに、彼女に化粧の必要性について尋ねたことがあったが、それとなくはぐらかされてきた。その時は、化粧を贅沢や娯楽の一種と思って敬遠しているのだと思っていたが、まさかこんな理由だったとは。しかし、それを踏まえると解決する疑問もある。
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