平安の病弱ム様と幼兄上(同い年設定) 本来であれば貴族の御子息と友達になれるような身分ではない。父が上手く取り入って、親しくなれば中央への登用もあるかもしれないと期待して、歳が同じであった自分を送り込んだが、そんな父の目論見は外れそうだ。
その貴族の御子息は病弱で、御両親からも見捨てられ、元服して間もない自分と同じ歳でありながら大きな屋敷をひとつ与えられ、数少ない使用人と薬師のみの出入りしかない寂しい暮らしぶりであった。
どこぞの姫君との縁談もすべて破談になっているのは病弱さが理由ではなく、その気難しさであることは初日で解った。
「本日より鬼舞辻殿の側仕えをすることに相成りました。継国の長子、巌勝と申します」
御簾の向こうは横になっている人の姿しか見えない。かなり病状が重いのか、返事は聞こえないのに咳き込む声だけが聞こえるのだ。
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