雪音「世和」
世和「よ、雪。どうした?」
雪音「お前に聞きたいことがある」
世和「ん?俺にわかることならいいけど?」
雪音「どうしたらお前のような髪質になれるんだ?」
世和「え、髪…?」
雪音「お前の長くて美しい髪にはどうしたらなれるんだ?」
世和「え、んー…どうって言われても特になんもしてねーからなぁ…」
雪音「そうなのか…」
世和「雪のそれってくせ毛?」
雪音「ああ。以前は短かったからそこまで目立たなかったのだがこの長さだとくせ毛なのが目立ってな…」
世和「いやでも普通にイケてるけど。やっぱ顔がいいのって得だよな」
雪音「顔…?」
世和「そういやさ、前は短かったんだろ。何で伸ばしたん?」
雪音「…以前から長いのに憧れていたのだが、父に反対されていてな」
世和「あ〜。そんで今は伸ばしてんのか」
雪音「ああ。紫音は以前から長かったのだが、それが羨ましかったんだ。俺も伸ばせば紫音のように美しい真っ直ぐな髪になると思っていたのだが…」
世和「くせ毛が勝った、と」
雪音「…ああ」
世和「そんな落ち込むなって。髪長いのは俺だけじゃないし。他のやつに聞いてみればいいだろ」
雪音「たしかにそうだな」
世和「あ、花依斗とかどうだ?あいつなんかやってそうじゃん」
雪音「ふむ…たしかに花依斗はいつも身なりが整っているな」
世和「だろだろ?だから影での努力も怠ってなさそうじゃん。お、ちょうどいるじゃん。よぉー!花依斗!」
花依斗「…そんなデカい声で呼ばなくても聞こえる。何の用だ?」
世和「な、花依斗この後なんか依頼ある?」
花依斗「今日はない」
世和「お、終わったんだな。お疲れ。んじゃさ、ちょっと俺たちと話そうぜ」
花依斗「…話すことなどないが」
世和「俺たちがあんの。いいだろ?」
花依斗「…別に構わない」
世和「へへ、花依斗って案外ノリいいよな」
雪音「花依斗、お前に聞きたいことがある」
花依斗「何だ」
雪音「お前のその髪質はどうしたらなれるんだ?」
花依斗「…というと?」
雪音「お前のその絹のような美しい髪になるにはどうしたら…」
花依斗「…」
雪音「どうした?そんな怪訝そうな顔をして」
花依斗「…お前それ言ってて恥ずかしくないのか?」
雪音「?…どれだ?」
花依斗「わからないならいい…で、髪質?だったか、なぜいきなり」
雪音「いきなりではなくずっと気にしている」
花依斗「…そうか」
雪音「何か特別なことでもしているのか?」
花依斗「何もしていない」
世和「え、マジ?」
雪音「…!…そう…なのか…」
花依斗「あからさまに落ち込んだな」
雪音「お前から何か聞けたらいいと思ったんだけどな…そうか…」
世和「なぁなぁ、じゃあもう寝起きからそんなシャキーンってしてんの?」
花依斗「お前の言うシャキーンはよく分からないが特別何かをしているわけでもない」
世和「え、やば。めちゃくちゃ髪質いいじゃん。支度早そう」
花依斗「お前は結ぶのに時間がかかりそうだな」
世和「そうなんだよ〜。花依斗もやってみ?」
花依斗「気が向いたらやってやる」
雪音「…世和も花依斗も何もしてなくてその美しい髪なのか…」
紫音「あ〜!花依斗くんだぁ!…って雪、何落ち込んでるの?…まさか花依斗くんなにかしたの?」
花依斗「俺は何もしていない」
紫音「じゃあ君…?」
世和「いやいやいや、俺もなんもしてないって。雪の悩みを聞いてただけだよ」
紫音「え…!?どうしたの雪。悩みごとはまず僕に話して?」
雪音「そうだな。お前にも聞こう」
紫音「うん、なあに?」
雪音「どうしたらお前のような髪質になれるんだ?」
紫音「え、僕の…?」
雪音「ああ。俺は真っ直ぐな髪になりたんだ」
世和「雪、お前に憧れて髪伸ばしたんだってさ」
紫音「え、そう…だったの?たしかにずっと短かったのに伸ばしたいって言ったのは不思議だったけど…」
雪音「ああ、俺はお前の真っ直ぐで綺麗な髪に憧れて…」
紫音「!!ふふ、そっかぁ、雪は僕の髪が好きなんだね?うふふふふ…」
世和「うわ、なんかいつにも増して機嫌いいな」
花依斗「突然気持ち悪くなったな。いや、気持ち悪いのはいつもの事か」
紫音「ふふ、なあに?花依斗くん?まあ今の僕は最高に機嫌がいいから聞き流してあげる。ねぇ雪?僕は雪のふわふわした髪、大好きだよ?」
雪音「俺はお前や世和、花依斗のような真っ直ぐな髪になりたいんだ」
紫音「うーん、そっかぁ。雪の願いとなれば叶えてあげたいところなんだけど…僕も特に何もしてないんだよねぇ」
雪音「そうか…」
世和「うーん、結局誰に聞いても分からなかったな」
雪音「うむ…。そうだ、紫音」
紫音「うん?どうしたの?」
雪音「お前は俺が髪を伸ばすと言ったとき、お前は切って今の髪型にしたよな。どうしてだ?」
紫音「え、そんなの雪と同じにしたかったからに決まってるでしょ」
雪音「それだけ…?」
紫音「そうだよ?」
雪音「そんな理由でもったいないことを…」
紫音「ちょっと!そんな理由って何!?雪と同じにすることは僕が1番優先することだよ!?」
世和「あーあ、また始まった」
花依斗「はぁ…」
世和「なぁなぁ。花とか姫花が髪長いのもお前に憧れて?」
花依斗「さあな。本人たちに聞け」
世和「ふーん、お前らはそういう話しないんだ?」
花依斗「ならお前の弟はどうなんだ?」
世和「え、梓紗?そういやあいつも昔から髪長かったな…」
花依斗「お前はどうだったんだ?」
世和「俺も前から髪は長い方だったけどあいつの理由はわかんねーな」
花依斗「同じようなものじゃねえか」
世和「じゃ、お互い弟に髪伸ばした理由聞いてみて報告会ってどうよ?」
花依斗「はぁ…好きにしろ」
世和「お、それはやるってことだよな?じゃ、聞いとくよ」
雪音「そういえば陽も俺と同じような髪質なのだろうか」
世和「うん?陽はちげーよ?あれはセットしてるからふわふわしてるだけで元は超ストレート」
雪音「え…!そう…なのか…」
花依斗「またあからさまに落ち込んだな」
雪音「勝手に親近感を覚えていたがそうか…あれは元からではないのか…」
紫音「ふふ、雪?やっぱり君はふわふわの方がかわいいよ?うちはストレートが多いからね」
雪音「うーん…だがまっすぐな髪への憧れは捨てられない…。樹に頼めば何か薬を作れないだろうか」
紫音「ちょっと、どうして樹に頼むの?雪にはすぐ近くに頭がよくて頼りになる僕がいるのに」
雪音「お前も作れるのか?薬に関する知識は樹に頼るべきかと思って…」
紫音「雪は僕より樹の方が頼りになるって言うの…?」
雪音「そんなことはない。俺はいつもお前を頼りにしている」
紫音「うん、そうだよね。これからは真っ先に僕を頼ってね?」
雪音「ああ。お前に負担をかけない程度に頼らせてもらおう」
紫音「何言ってるの?雪が僕の負担になるわけがないでしょ?」
世和「…なんか話拗れてきてね?」
花依斗「あいつめんどくせぇな」