世和「なぁ、花はさ、姫がなんか間違ったことしてたら怒る?」
花葉「知らね。あいつの好きにすればいいだろ、子供じゃないんだし。そりゃなんか犯罪とかに足突っ込もうとしてるなら話は別だけど。ま、俺たち結局兄貴頼りみたいなとこはあるけどな」
世和「花依斗みたいな兄ちゃんなら安心だよな〜。花依斗ってお前らにはどんな感じなん?」
花葉「別にお前らといるときと変わんねーよ?俺たちの前だから〜とかそういうのない」
世和「へ〜そうなんだ。まあ人によって態度変えるようなやつではなさそうだもんな」
花葉「お、雪ちゃんじゃん。あれ、1人?しーちゃんはいないんだ?」
雪音「ああ、たまには羽を伸ばしてこいと叩き出した」
世和「おお…雪もやるときはやるんだな」
花葉「世和、せっかくだし雪ちゃんにも聞いてみれば?」
雪音「俺に何か用か?」
世和「あー、あのさ、弟…紫音とどうやって関わってんのかなって」
雪音「…うーん。俺は…あいつにとってあまり兄らしいことはできていないと思う」
花葉「それって双子だから?」
雪音「いや、それ以前に俺がいつもあいつに助けられてばかりだからな」
花葉「しーちゃんって雪ちゃんの考えてること、何でもお見通しって感じですごいよな」
世和「紫音は俺たちの考えてること何でもわかってそう」
花葉「あー、なんか何手先も読まれてる感じな。しーちゃん、頭いいもんな〜」
雪音「ふ、そんな紫音も梓白のことはよく分からない、と言っていたがな」
世和「え、そうなんだ。梓白の方がすげーのかな」
花葉「梓白はなんかもうぜーんぶ答え知ってますって感じの話し方するもんな」
雪音「そうだな。あいつには全て見えているかもしれない。それで、兄としての振る舞いの話だったか。なぜそのようなことを?」
世和「いやー、前からそうなんだけどさ、朱優に梓紗のこと甘やかしすぎだって言われててな?俺、ずっとそうだったから何が正しいのかなって」
雪音「兄弟のあり方はそれぞれだ。俺は正しいもの間違っているもないと思うが…」
世和「朱優にさ、間違っていることはちゃんと叱ってやれるのも兄の勤めだって言われて、そうなんかなーって。だけど俺、誰かを叱るとかできねーし…」
雪音「…そうか。確かにそれは難しい話だな」
花葉「俺さ、雪ちゃんもてっきりしーちゃんのこと全然怒らないかと思ったらさっきしーちゃんのこと叩き出したって聞いてびっくりしたんだけど」
雪音「いや、何も物理的に叩き出したわけではないんだ。あいつはいつも俺のためにと言って1人でこなしてしまうからな。たまにはあいつ自身のために時間を使ってほしかったんだ。普段はあいつに言いくるめられることが多いが、今回だけは譲れないと思ってな」
世和「…雪が物理的に叩き出したら紫音生きてねーだろ」
花葉「ンフッ…それは言えてる」
雪音「花。お前は兄としてどうしているんだ?花依斗がいるとはいえ、お前だって姫の兄だろう?」
花葉「うーん、俺と姫花はあんま兄弟って感じじゃねーからなぁ…兄貴がいるから俺はあんま姫花にとって兄貴らしいことはしてないかも。…つーかあいつ、俺のこと兄貴だと思ってんのかな」
世和「花と姫はどっちかっつーと双子っぽいよな」
花葉「それ、よく言われる」
雪音「そうだ、世和。花依斗にはもう聞いたのか?」
世和「いや、聞いてない。花依斗ならなんか教えてくれるかな」
花葉「…ふん、この俺が兄なんだ。それ以上に幸福なことなどないだろうとか言いそう」
雪音「花依斗、いいとろに。お前の話を聞きたいんだ」
花依斗「何の用だ」
雪音「お前は兄としてどう振る舞っているんだ?」
花依斗「…は?何をいきなり」
世和「花依斗は花とか姫とどう関わってんのか気になったんだよ。みんな花依斗のこと、いい兄ちゃんだって言ってるだろ」
花依斗「…花葉。少し席を外せ」
世和「お?もしかして話してくれる!?」
花葉「え!何で!俺も聞きたい!」
花依斗「お前がいるなら嫌だ」
花葉「なんでなんで!俺も聞きたい!」
花依斗「うるせえ。ガキかよ」
世和「まぁまぁ、花?ここは俺たちのためにお前は一旦退場で」
花葉「え〜…終わったらすぐ呼べよ?」
雪音「ふ、ああ、もちろんだ」
世和「それで?ありがた〜い花依斗サマからのお言葉は?」
花依斗「兄としての振る舞いだろ?そんなの弟のこと思って動いてやるだけでいいだろ」
世和雪音「…え?」
花依斗「弟のことを思って叱り、弟のことを思って褒める。それだけで十分だ」
世和「いや〜、あのさ、弟のこと叱らなすぎって言われてそれ何とかしなきゃなって思ったんだけど」
花依斗「それは兄弟それぞれだ。梓紗は褒められることで実力を発揮できるんだろ。ならそれでいいんじゃないか?お前が真っ直ぐとあいつに向き合ったからあいつも真っ直ぐに育った。それもあって自己中心的な部分もあるがな。仮に俺があいつの兄だったらあいつはもっと捻くれていたかもしれない」
世和「そう…なのかな」
花依斗「あいつは過去に魔法が使えないことで多くの敵がいたんだろう。そんな中でもお前だけは味方でいてくれた、と自慢げに話されたことがある。それだけあいつにとってお前は大きな存在ということだ。だったらお前は今までと変わらずあいつを包み込んでやれ。大方、叱るのは霧里で間に合ってるだろ」
世和「うわ〜…なんか花依斗に言われると説得力すげ〜…」
雪音「お前にとって有意義な時間になったようだな」
花依斗「神崎」
雪音「どうした?」
花依斗「兄弟のあり方はそれぞれとはいえお前はあいつに主導権を握らせすぎだ。お前こそたまには黙らせることも必要だ」
雪音「そうか…俺が何を言ってもあいつは聞いてくれなくてな…」
花依斗「聞いていないと言うより言い負かされてんだろ。あいつはお前にはこう言えば折れる、というのをわかってお前に言っているからな」
雪音「うーん…そうだな…なら俺はどうしたらいい?」
花依斗「知らん。そこからはお前次第だ。これ以上は俺が首を突っ込む話じゃない。それに、我慢ならなくなったら夕凪が手を出すだろうからな」
雪音「ああ、そういえばあいつ、梓白の言うことは素直に聞くな。梓白が俺たちにとっての兄なのかもしれないな」
世和「梓白、そんなのごめんだにゃ〜って言いそうだけどな」
花依斗「ふ、かもな。こんな手のかかる双子、俺でもごめんだ」
雪音「…?」
花葉「あの〜…もう終わりました?」
世和「お、いいタイミングじゃん」
花葉「で、兄貴なんて言ったの?」
世和「へへ、花依斗はやっぱいい兄ちゃんだったよ」
雪音「お前を見ていると花依斗に似ているな」
花葉「うわ、ふわっとした答えすぎんだろ。逆に気になる。あと俺兄貴に似てないと思うけど」
世和「いやいや、似てんだろ、マジメな花ちゃんだもんな?」
花葉「だからそれ言うのやめろって…」
雪音「花。姫のこと好きか?」
花葉「そりゃ嫌いじゃないけど…?」
雪音「ふ、そうか」
花葉「え、なになに?」
世和「ならそれでいいってこと。だよな?」
花依斗「ふん、そうだな?」
花葉「え〜…雪ちゃんたち何言われたんだよ超気になるじゃん…」