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    猫子(ねこ)

    @ndy_14cols

    14色の日常(プチ会話集)を投稿していきます。
    タイトルに◇◆がついているものは今より少し前の話(過去編)
    毎週水曜日更新

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    猫子(ねこ)

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    ◈14色の日常◈
    ◇ある猫の話◆
    🌿💫👑🐱

    #14色の稀石

    成星「樹さん。今いいですか?」
    樹「うん。どうしたの?」
    成星「梓白の話を聞きたいんです」
    樹「…梓白の?というと?」
    成星「シロが俺の元を離れて、人間…梓白になった後の話を」
    樹「…まだ成星くんにはちゃんと話していなかったね。えーと、じゃあ順番に説明していこうか。…少し長くなりそうだけど大丈夫?」
    成星「はい、お願いします」
    花依斗「おい、そこの緑」
    樹「ひゃい!!」
    花依斗「俺にもそれを聞かせろ」
    樹「あ、は、はい…えーと…花依斗さん…ですよね?」
    花依斗「…」
    樹「あ、…朝日さんとお呼びした方が…?」
    花依斗「…花依斗」
    樹「え…?」
    花依斗「俺はお前より年下だ。好きに呼べ」
    樹「え、えーと…じゃあ…花依斗くん…?」
    花依斗「…ふん」
    成星「あんたも梓白の話に興味があるのか?」
    花依斗「得体の知れないやつのことは少しでも知っておいた方がいいだろ」
    樹「えと…少し長くなりそうですけど…大丈夫…ですか?」
    花依斗「構わない」
    樹「わ、わかりました」
    花依斗「…」
    樹「あ、えーと…まだ何か…?」
    花依斗「…敬語はいらない。こいつと同じように扱え」
    樹「い、いや…さすがに…花依斗くんと呼ぶので精一杯です…今は」
    花依斗「…」
    樹「う…これから頑張ります」
    花依斗「ふん…ならいい」
    樹「…ほっ」
    成星「…あんた。あまり樹さんを困らせないでくれ」
    花依斗「困らせた覚えはない。こいつが怯えているのが気に食わん」
    成星「はぁ、あんたのそういうところがな…」
    樹「な、成星くん、僕は大丈夫なので…!今は梓白の話をしましょう」
    成星「…そうですね」
    樹「花依斗くんは梓白が猫から人間になった経緯は知っていますか?」
    花依斗「…ああ。本人から聞いた」
    樹「それなら話が早いです。じゃあ梓白が人間になった後の話をしようか」
    成星「…はい」
    樹「梓白は人間になった後、もちろん僕たちの生活なんて全く分かりません。なのでしばらく僕と生活していました。僕たちが当たり前のようにやっていることから少しずつ学んでいきました。そして人間としての生活が慣れてきた頃、梓白を戦闘班に入れたいと当時の戦闘班のトップから申し出ありました。もちろん梓白の扱う魔法が優れているという噂を聞き付けて」
    花依斗「…そのトップというのは」
    樹「神崎さん…雪音くん、紫音くんのお父様です」
    成星「それで梓白は戦闘班に入ったのか」
    樹「…はい。というより、他の班に入れるには厳しかったと言うのも正しいかと。僕のいた医療班には回復魔法が使えないと入れませんし、他の班は…梓白が興味を示さなかったので本人から拒否されました」
    成星「…なぜ戦闘班には興味を持ったんだ?」
    樹「どうしてでしょう。それは本人に聞いてみないと…」
    花依斗「素直に話すとは思えんがな」
    樹「…そうですね。それで…えーと…僕と梓白は班は違いますがその後も一緒に生活はしていました。梓白は元々素質があったようで、みるみるうちに実力をつけていき、あっという間に幹部クラスになりました。けど…」
    成星「…何か問題が?」
    樹「…全属性を扱える者には代償がつきます。梓白ももちろん例外ではなく。僕は魔力を消費しすぎると精神的なダメージが大きくなりますが、梓白は身体的なダメージが入る代償だったようです。よくフラフラの状態で帰ってきたり、帰った途端に意識を失ったり…色々ありました」
    花依斗「なぜそこを濁した。詳しく話せ」
    樹「い、いや…ちょっと…僕の心が痛むというか…あまり…当時のことは思い出したくなくて…」
    成星「…樹さんが話したくないなら大丈夫です。でも簡単に言うと、梓白の代償が発動するとどうなるんですか?」
    樹「…症状は色々です。おそらく消費した魔力の程度によるものかと。初期段階では目眩、頭痛、吐き気など一般的に見られる不快症状。そしてさらに魔力を消費すると動作が鈍くなったり、その場から動けなくなったりするようで。ときには吐血することもありました。そしてそれ以上に魔力を消費すると意識を失う、場合によって死に至ることも…あるのかと」
    成星「…」
    花依斗「…意識を失ったあとはどうなったんだ?」
    樹「次の日にはケロッと起きてたり、数日間眠ったりと様々でした。消費した魔力の回復時間は個人差があるのでそのためかと」
    成星「…なぜあいつは意識を飛ばしてまで戦っていたんだ?」
    樹「…分かりません。それを聞いても彼は答えてくれませんでした。ただ…“俺に失うものは何もないから”とはよく言ってました。あとは目覚めた後に…“また生き延びちゃったか”とか。なので故意に魔力を消費させていたのではないかと」
    成星「どういうことだ…?」
    花依斗「戦闘が好きなわけでも、組織のために命を全うしようとしていた訳でもない。自分にはにもないから死んだところで何もないということだろ」
    成星「…?」
    樹「…たしかに、彼は毎日退屈そうでした。だから…花依斗くんの言った通りだったのかもしれませんね。あるいはどこまで魔力を消費したら限界が来るのか、と退屈しのぎや興味本位でやっていたのかも」
    成星「…バカだな」
    花依斗「それで、なぜお前たちはここにいる。前の組織はどうした」
    樹「…その…ここ…何でも屋ができる数ヶ月前に起きた事件、覚えてますか?ニュースでも少しやっていたと思いますが…ある組織が崩壊したんです。内部抗争で」
    成星「その組織というのが…」
    樹「…僕たちがいた組織です。当時のトップ…神崎さんが命を落とした」
    花依斗「…その者は戦闘班のトップだったのでは?」
    樹「はい。戦闘班と組織全体、どちらのトップもやっていたんです。そこに別の班…のトップが謀反を起こして組織内で抗争が起きました」
    成星「…それで組織がなくなったのか?」
    樹「いえ、組織自体はありました。けど特に戦闘班はトップがいなくなるどころかほとんどの主要メンバーが亡くなってしまって…次の戦闘班のトップは梓白に任されようとしていました。だけど梓白はそれを悟ったのか、出て行ってしまった」
    成星「…それで樹さんも連絡が取れなくなったのか」
    樹「…はい。僕のところにも出ていくということだけ伝えていなくなってしまいました」
    成星「…なんで俺のところに帰ってきてくれなかったんだ」
    樹「僕も彼が人間になって、少し慣れてきた頃に成星くんの元へ帰るよう言ったんですけど、“彼が望んでいるのは猫の姿の俺でしょう?こんな姿になって帰っても受け入れてくれるの?”と頑なに帰ろうとしませんでした」
    成星「…何だよそれ」
    樹「…ごめんね、成星くん」
    成星「いえ、樹さんが謝ることじゃないです。それだけ俺があいつに信頼されていなかったということですから」
    樹「ううん。梓白は成星くんのことよく覚えていたよ。成星くんに失望されたくなかったんじゃないかな。彼自身、何ともないような態度だったけど、実際は猫から人間になったことは大きなことだったはずだから。それを他人が受け入れてくれるか、となるとやっぱり彼が言っていたように受け入れてもらえるか不安だったと思う」
    成星「…なんであいつは…。いや、何も行動に移さなかった俺も俺だな。俺が無理にでも樹さんに会いに行っていればよかった」
    樹「い、いや〜…あの組織にはあまり近づかないのが正解だったかと…」
    花依斗「…それで、お前は組織に残ったのか?」
    樹「ええ、まあ…他に行くところも考えてませんでしたし…でもそんなときに黒い猫から招待状を受け取りました。なんとなくの気持ちで行ってみようと思って来てみたらこうして成星くんや梓白にもまた会うことができたので僕はここに来てよかったです」
    成星「梓白が組織を出た後、戦闘班はどうなったんですか?」
    樹「残った主要メンバーを中心に立て直そうと奮闘していました。…だいぶ戦力は落ちましたけどね。僕を戦闘班に引き抜こうとしたくらいですから」
    花依斗「…行かなかったのか?」
    樹「はい。僕は医療班のトップでしたし、部下に全力で止められたので。それに、僕自身、前線に立っての戦闘はあまり得意ではないですから。僕がみんなの役に立てるのは魔法くらいなので」
    成星「樹さんはその魔法が素晴らしいんです」
    樹「ふふ、ありがとう。…それで梓白が組織を抜けた後どうしていたかとか、どういう経緯で招待状を受け取ったのかとかは僕も知らないから本人に聞くのがいいと思う」
    成星「そうですね。いや…でもあいつが言うとは思えないな。これだけ聞ければ満足です」
    花依斗「ひとつ疑問だが」
    樹「はい」
    花依斗「あいつの魔力や戦闘力の高さは納得した。だが人を見抜く洞察力や聡明さ、他の能力まですば高いのはどういうことだ?」
    樹「それはおそらく彼の元々の能力かと」
    花依斗「…偶然、ということか?」
    樹「はい。僕は梓白にこれといって特別何かをしたことはありません。…蘇生の魔法を施行して人間にしてしまったこと以外は、ですけど」
    花依斗「…とんだ恵まれたやつだな」
    樹「ふふ、まったくです」
    成星「ところで。蘇生の魔法は今となっては禁忌とされているものですよね、それだけ危険ということで」
    樹「うん、そうだね」
    成星「当時は禁忌とされていなかったとはいえ、樹さんや梓白になにか弊害はなかったんですか?」
    樹「うん。幸運にも僕と梓白どちらにも後遺症や弊害は何もなかったよ」
    成星「…それなら良かったです」
    梓白「ねぇねぇ、もう入っていい?入っていいよね?」
    樹成星花依斗「!!!!」
    樹「ど、どうぞ…?」
    梓白「失礼しまーす。みんなで真面目な顔してなんのお話してたのかにゃ?」
    成星「あんたの昔の話だ」
    梓白「おや、俺のお話か。どうして本人を呼んでくれなかったの?俺、暇してたのに」
    花依斗「おいアホ面」
    梓白「はいはい、何かな?」
    花依斗「ここに来て代償を何度出した」
    梓白「一度も出てないよ。…まだね」
    花依斗「…」
    梓白「…前いたところはさ、ほーんと、つまらなくて。規律や序列、メンツばかり重んじてほんっとくだらなくて、クソつまらなくて。死んだ方がマシだと思ってたからね。だからよく自分の限界試してみようとか刺激を求めてたところはあるかな」
    成星「…今はどうなんだ?」
    梓白「ここはおもしろそう。だからこうして入ってるわけだし。それにここは精鋭揃いだ。俺が死ぬほど魔力消費する必要もなさそうじゃない?あと代償出て調子崩すと結構しんどくてさぁ。だからここにいておもしろいって思える限りはやらないよ。…ここならきっと生きていた方が楽しそうだから」
    成星「…あんたはどうして命を削ってまで魔力を消費していた?」
    梓白「それ以外にすることがないから。君がずっと魔法を学び続けているのと同じだよ」
    成星「俺はあんたのように命を削ってまで学んでない」
    梓白「よく言う。食事や睡眠も忘れて没頭するくせに」
    成星「あんたはそれ以上にな…!」
    樹「ま、まぁ2人ともその辺に…」
    花依斗「おい」
    梓白「はいはい、今度は何かな?」
    花依斗「ここに来たからには馬鹿げたマネはやめろ。お前が退屈しのぎに命を削るようなことをしているのだったらその時間を俺に使え」
    梓白「ふふ、それって君が俺を楽しませてくれるってこと?」
    花依斗「そうだ。少なくとも貴様の今までのようなふざけた生き方よりもずっと有意義な時間にしてやる」
    梓白「それはそれは。そんなに言われちゃ期待しちゃうね」
    成星「ふ」
    花依斗「何がおかしい」
    成星「あんた、俺だけでなく梓白にも大口叩いたな」
    梓白「ああ…ふふ、君、成星のことは今より上に導いて、俺には楽しい日々を送らせてくれる。随分と仕事が増えたね?」
    花依斗「ふん、こんなの仕事のうちにも入らん。俺が関われば自ずとそうなる」
    梓白「さっすが。顔がいいだけある」
    花依斗「顔は関係ねぇだろ」
    梓白「おぉ〜、ナイスツッコミ。これは本当におもしろい日々にしてくれそうでますます期待しちゃうね」
    樹「か、花依斗くん…2人がお手数おかけします…」
    花依斗「チッ…まったくだ。だがくすぶられたり命を粗末に扱われるよりはよっぽどマシだ」
    梓白「…もしかして彼、正真正銘の聖人君子?こんな人初めて見た」
    成星「口はどうしようもなく悪いけどな」
    梓白「ふふ、それは言えてる」
    樹「…2人はもう少し花依斗くんに感謝しようね」
    花依斗「感謝される必要は無い。俺はまだこいつらに何もしていないからな。だがこの俺に見捨てられていないだけありがたく思え」
    梓白成星「やっぱ態度はデケェ…」
    梓白「でも彼が聖人君子って分かった今はこの言葉の意味もちょっと納得するかもね」
    樹「もうほんと…2人がお世話になります…」
    成星「ところであんた…名前を覚えていないのか?」
    花依斗「美月成星。お前は覚えている」
    成星「逆にバディなのに覚えられていない方が不安になるが。樹さんのことは緑と言い、梓白にはアホ面と…。あんた、記憶力悪いのか?」
    樹「ちょ…成星くん…」
    梓白「いや、興味がないから覚えてないんじゃない?」
    花依斗「そうだ」
    成星「樹さんを緑というのはまだ分かるが…なぜ梓白はアホ面なんだ…?」
    花依斗「常にヘラヘラしているだろ」
    成星「あぁ、なるほど」
    樹「納得するんだ…」
    梓白「ほんと失礼しちゃうよね。このクソガキ共」
    花依斗「ふん、ならば俺に名前を覚えられるよう貴様の価値を示すんだな、夕凪梓白」
    梓白「あれ?俺の名前覚えてるじゃん、えらいえらーい」
    樹「…なんかみんな…言葉がドストレートだね…」
    梓白「あぁ、でも…もしかしたら代償が出るほど魔法を使うときも来るかもしれないな」
    成星「な…!」
    花依斗「貴様…」
    梓白「ちょっとストップ。最後まで話聞いてよ。前の組織は命を張るほどの価値はなかったんだ。だから死ぬために魔法を使っていた。だけどここは…もしかしたら命をかけても守りたいって思えるようになるかもしれないなって思っただけだよ。なんとなく思っただけだけど、今は」
    花依斗「ふん、貴様に守られるだと?寝言は寝て言え。もしそうなったとしても貴様が魔力を枯渇させるほど魔法を使えると思うな。その前に嫌でも戦闘は終わるし戦闘以外の問題も解決する」
    樹「そうだね。ここには梓白以外にも強い人は沢山いるからね。…といっても君には及ばないかもしれないけど」
    梓白「ふふ、それは大変失礼しました。なら俺は手を抜いていていいんだね?」
    成星「そうだ。あんたはここにいる限り一生手抜いてろ」
    花依斗「ふん、この俺がいるんだ。貴様が全力を出すまでもない」
    梓白「ふふ、それは大変心強いことで。なら君も代償に苦労することなくなるんじゃない?」
    花依斗「…そうか。お前も代償持ちだったな」
    樹「あ、はい…みなさんにご迷惑をおかけしないように…頑張ります」
    成星「頑張るのは俺たちの方です。樹さんも一生手抜いててください」
    樹「…うーん、いいことは言っているんだけどやっぱり口が悪いなぁ…」
    成星「梓白」
    梓白「何かにゃ?」
    成星「…あんたは人間になった後、どうして俺のところに帰ってきてくれなかったんだ?」
    梓白「あれ?その話前しなかったっけ?」
    成星「していない。あんたがいつもはぐらかすからな」
    梓白「…さっき樹が言ってた通りの理由だよ」
    成星「さっきって…人間の自分を受け入れてくれるかわからないとかいうあれか?」
    梓白「それ以外に何かある?」
    成星「あんたは本当にバカだな。俺が見た目が変わっただけで受け入れないようなやつだと思っていたのか?」
    梓白「ここにきて話しかけたときあんた誰だ?とか言ってきたくせに」
    成星「そんな胡散臭い見た目してたら誰だってそうだろ」
    梓白「あー、ヤダヤダ。そうなるから帰らなかったんじゃん」
    成星「だがあんたの話を聞いてすぐに信じただろ」
    梓白「はいはい。…俺が君のこと見くびってたよ」
    樹「え、あの…梓白はどこから話聞いてたの?」
    梓白「最初から全部聞いてたけど?」
    樹「えぇ!?どうしてもっと早く入ってこなかったんですか!」
    梓白「こんなおもしろくもないクソ真面目な話してる空気の中に入れって?冗談きついんだけど。俺はね、おもしろくないことは嫌いなの」
    花依斗「夕凪」
    梓白「はいはい、今度は君からの質問ね。どうぞ?」
    花依斗「魔力を消費して貴様の限界を知るというのはおもしろかったか?」
    梓白「ぜーんぜん。おもしろくなかったよ。体調崩してしんどいだけだった」
    花依斗「ふん、では貴様はおもしろいものを求めて生きて、結局それを見つけられずに今までのうのうと生きてきたんだな」
    樹「あ、あの花依斗くん…?」
    梓白「…ふふ、残念ながら君の言った通りなんだよねぇ。だからここではおもしろいもの見つけられるといいな」
    花依斗「おい、俺がさっき言ったこと忘れてねぇだろうな?」
    梓白「ああ、君が有意義な時間にしてくれるんでしょ?もちろん覚えてますよ。俺、君や…ここにいるみんなとなら本当にそうなると思ってるから。…楽しみにしてるよ」
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