雪音「悪い。突然全員呼び出して」
紫音「雪?どうしたの?何か問題でもあった?」
雪音「…ああ。まあそんなところだ」
梓白「随分と歯切れが悪いね。全員に関わることなんでしょ?」
花依斗「まさかくだらねえことじゃねえだろうな」
梓白「雪がわざわざ呼んだんだよ?さすがにくだらない事じゃないんじゃない?」
花葉「全員に関わることで雪ちゃんにいきなり呼ばれるって…」
紺碧「相当重要な事じゃないか?」
雪音「…今まで何でも屋はリーダーしか決めていなかっただろう。それが問題だと思ってな」
世和「それの何が問題なん?」
雪音「何でも屋全体で動く必要があるものや、組織としての方針、そういった重要なものを俺がひとりで決めていたということがだ。紫音とは事前に話し合ってはいたが、最終的な決断は俺だった」
姫花「うーん…?だってリーダーだしいいんじゃないの?俺たちだって今まで反対してこなかったし」
雪音「いや、それではダメなんだ。何でも屋は俺の組織じゃない。俺たち全員の組織だ。今後何でも屋をよりよくするためには今までのように俺がほぼ独断で決めてしまうよりもっといい方法があると思う」
成星「それで、今回はそれを変えようという話か」
雪音「そうだ。しかし、かと言って毎回全員を集めるのは難しいだろう。そこで俺以外にあと数人、こういったことをまとめられる者がほしい」
姫花「んー、そういうのなんて言うんだっけ…四天王?」
紺碧「…幹部じゃないか?」
姫花「あ、そう。それ」
梓紗「この中からゆき以外にも偉い人を作るってこと?」
雪音「偉い…というかあくまでも立場的なものだけな。俺を含め、これから決めるその幹部で話し合ったものを全体に周知するという形にしていきたい。こういうのは複数人いた方が俺一人で決めるよりお前たちの意見も取り入れやすい。今後はこの幹部で話し合ったものを皆に周知したいと思う。もちろんお前たちの意見を踏まえた上で幹部も話し合うつもりだ」
陽「うん。いいんじゃないかな。1人で組織の方向性を決めるのは大変だからね。雪音くんの負担が少しでも減る方法がいいと思うよ」
樹「僕も賛成です。組織の基本的な構造でもありますし」
雪音「ありがとう。そこでその幹部なのだが…」
紫音「ねぇ、それって誰でもいいの?」
雪音「ああ、立候補者がいるならもちろん構わない。俺が望むのは俺と対等な立場で話せる者だ。それ以外は求めない」
花葉「…簡単なことに聞こえるけどそれって能力込みで、だよな?」
朱優「雪音がどこまで考えて要求しているかはわからん。だが便宜上とはいえ、組織の上に立つ人間を決めるって言ってんだ。そりゃそうなるだろ」
紫音「はーい、じゃあ僕がやる。雪の力になるのが僕の最優先のことだからね」
雪音「ありがとう。やはりお前がいた方が俺も安心だ」
紫音「ふふ、そうでしょ?雪のこと、1番分かってるのは僕だもの。それなら尚更僕はいた方がいいよね?それに、オブシディアンの意見は僕のところにまとまるからね。オブシディアン代表ってことで僕がなるのがいいんじゃない?」
成星「樹さん、いかないんですか?俺は樹さんがいいと思いますが」
樹「え!?僕?ぼ、僕は…そういうのは向いてない…かな」
姫花「前の組織はトップやってたのに?」
樹「…あそこは実力主義でしたから。だけどここは違うし、実力主義だったとしてもここは僕より上の人間はたくさんいます。それに本来の僕は上に立つのは向いてない。だけど…」
成星「なにか気になることでも?」
樹「雪音くんも…そこまでこういうの向いてるってわけじゃないから…そういうのをサポートできる人がいいんじゃないかな?」
姫花「雪が向いてないってどういうとこが?」
樹「うーん…上手く言えないけど雪音くん、本来はメンタルは強くない方だと思う。プレッシャーとかに弱いタイプかと…戦闘以外では。だからこう…グッと引っ張れる人がいた方が雪音くんは安心なんじゃないかな。現に普段こう、みんなで集まる場面では紫音くんが雪音くんの考えていることを僕たちに代弁して先導してくれることが多い。今回もこうして幹部を作ろうって話になったのも雪音くんにとって組織のトップにいること…というよりポジション的に独りだったのが重荷だったんじゃないかな。だから自分1人をリーダーとするより、自分と同じポジションの人を何人か作りたかったのではないかと」
梓白「…」
姫花「うーん…なるほどねぇ…だってよ。兄貴?」
花依斗「…俺にそれを言ってどうする」
姫花「さっきの話、聞いてるの知ってるもーん。兄貴、こういうの得意じゃん。みんなを引っ張る力…カリスマ性ってやつ?ここで活かすべきじゃない?」
花依斗「…怖気付いた神崎のケツを叩けと言うことか?」
成星「ふ」
姫花「ブフッ」
樹「あはは、そうですね、言い方はアレだけど平たく言えばそういうことです」
花依斗「…いいだろう。あいつがどう思っていようと何でも屋のトップがあいつであることに変わりはない。そんなトップがヘタレで迷惑するのは俺たち…ついて行く人間だからな」
姫花「これは…」
成星「言い方がアレなだけで雪音を心配している」
姫花「そ!成星、兄貴のこと分かってきたね!」
成星「ふん、まあな」
樹「成星くんが魔法以外でこんな嬉しそうな顔するの初めて見た…」
花依斗「神崎。俺もやってやる」
雪音「そうか…!ありがとう花依斗。お前がいると心強いな」
紫音「あは、花依斗くーん、一緒だなんて嬉しいなぁ。僕と仲良くしてね?」
花依斗「…チッあいつがいるのだけは癪だな」
朱優「やっぱり花依斗さんがなるよな」
花葉「…なんでお前が嬉しそうなの?」
陽「梓白?」
梓白「なあに?陽様?」
陽「君の出番じゃない?」
梓白「俺はめんどくさいからそういうのやりたくないの。君こそどう?」
陽「ふふ、僕は花依斗くんと紫音くんが暴れたら止められる自信ないなぁ」
梓白「雪と2人で止めればいいでしょ」
京「え〜、俺もしろがなってほしいなぁ」
梓白「おや、珍しいね。君がそんなこと言うの」
京「うん!だってなってほしいもん」
梓白「ふーん…ま、君たちの気持ちだけは受け取っておくよ」
陽京「え〜…」
雪音「あと1人ほどほしいのだが…立候補が居ないのなら俺はし…」
花葉「はい!」
姫花「…花葉?」
雪音「花。お前がやってくれるか?」
花葉「い、いや、やるのは俺じゃなくて…梓白がいいと思う」
世和「お、梓白いーじゃん。俺も賛成」
梓白「…そうきたか」
樹「僕も梓白がいいと思います」
梓白「はぁ?君ねぇ、トップやってたんだからその経験が活きるんじゃない?君がやればいいのに」
樹「ふふ、さっきの話、君も聞いてたでしょ?それに、僕より君の方がこういうのは向いてるよ?実力も人間性も」
梓白「こいつ…」
雪音「お前はここに来たとき真っ先にトップはやらない、と言ったな。だが俺が今望んでいるのはトップではない。俺と対等な立場の人間だ。だからお前の意に反していないだろう。それに、皆からの推薦も多いようだ。他にいなければ俺もお前に頼みたいと思っていたしな」
陽「ふふ、結局みんな考えてる事は同じみたい?」
梓白「はぁ…なんでこういつも…まぁいいけど。ここで俺が断ったらどっちらけでしょ。わかりました、よろしくお願いしますよ。君から直々のご指名だもんね?リーダー様?」
雪音「ああ、ありがとう」
花依斗「ふん、やはりお前か」
梓白「俺たち、いろんなところで一緒になっちゃうね?」
姫花「お、兄貴ちょっと嬉しそう」
世和「なーんかあのメンツ、前から幹部だったってくらいしっくりすんな」
陽「ふふ、そうだね?」
雪音「紫音と花依斗が暴れたらお前が止めてくれ」
梓白「えー、それも俺がやるの?」
花依斗「俺が暴れるか暴れないかはあいつ次第だ」
紫音「僕は花依斗くんと仲良くなりたいだけだもーん」
雪音「俺では手に負えなさそうでな。お前なら1人でも止められるだろう。そうなったときは頼む」
梓白「止めるためなら壁に大穴ぶち開けても怒られない?」
雪音「ふ、それはどうだろうか」
朱優「いいわけねえだろ。誰が直すと思ってんだ。紫音。花依斗さんに迷惑かけるなよ」
紫音「もちろん。僕は花依斗くんと仲良くするよ?」
朱優「その仲良くするやり方を考えろって言ってんだよこのバカ」
紫音「僕たちには僕たちなりの遊び方があるの。ねー?花依斗くん?」
花依斗「一緒にすんな。お前と仲良くなった覚えはねえよ」
紫音「あは、やっぱ花依斗くんおもしろーい。これからもっと楽しくなりそうだなぁ…!」
朱優「すみません、花依斗さん。こいつがあまりにもウザかったら半殺しくらいにはしていいので」
花依斗「ああ」
梓白「こら、サラッと返事しないの」
雪音「梓白、花依斗ここでも世話になる。これで俺も安心してやっていけそうだ」
梓白「花依斗?我らがリーダー様のケツはこれからも俺たちが叩かなきゃいけないみたい」
花依斗「ふん、そのようだな」
雪音「ケツ…?」
梓白「ふふ、雪には心強い味方が沢山いるってこと」
花依斗「お前がヘタレたときは俺たちが引きずってでも前に進めてやる」
雪音「ふ、そうか。ありがとう。もしそうなったときはよろしく頼む」