夜風ライダーの歌声 りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。そんな音が聞こえてきてモンたちは一斉に窓の外を見た。ベランダの窓が空いている。網戸の向こうに龍之介の長躯が見えた。りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。何やら不思議な音がお邪魔しますというように風に乗って室内へと訪れる。モンたちは互いに顔を見合わせるとてちてちと窓際まで近づいた。りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。やはり外から聞こえてくる。グラスいっぱいに注がれた氷にも似た音色にモンたちの耳もぴくぴく跳ねる。
「うわっ! びっくりした……みんな揃ってどうしたの?」
網戸にくっついているモンたちに龍之介がしゃがみ込んだ。そよそよと風が流れる。時同じくして流れてきた涼しげな音色にモンたちはぴょんこぴょんこ跳ねてみせた。
「あ、風鈴の音? いい音色だよね、俺も好きなんだ」
そう笑ってからりと網戸を開けて室内に入るとその場に龍之介が座る。「おいで」とやわっこく誘われてモンたちは遠慮なく龍之介の長躯によじ登った。
それぞれが落ち着く場所を陣取る。りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。夏の音が柔らかく夜風に乗って流れていく。エアコンの風と涼やかな天然の風が混ざって心地よさにモンたちは目を閉じる。
りんりんりん。ちりちりちり。かららららん。まるで子守唄のように風鈴が響く。やがてモンたちが寝入っても柔らかく、いつまでも。