トラベリング・モン てちてちてち。目の前を通り過ぎるモン楽を見る。もこもこまるまるした体を後ろからそっと持ち上げれば、気づいているのかいないのかモン楽は短い足を前後させている。そのままそっと下ろせば再びてちてちと歩き出した。
「………楽、何してるの?」
呆れたような声音が振ってきて顔を上げれば天の顔と鉢合わせた。その声を形にしてような呆れ顔だった。
「四葉に教えてもらったこと試してたんだよ」
「四葉環に?」
ああ、と楽が首肯する。
「歩いてるモンを後ろからそっと持ち上げるとそのまま歩き続けるってな。本当だったぜ」
やや興奮した様子の楽にまたしょうもないことを、と言わんばかりに天が半目を向けた。傍から見ていてかなり奇怪でシュールな行動をしていて自覚がないのだろうか、この男は。口には出さず天は心中で呟いた。
「それに付き合わされるモン楽が可哀想だと思わないの?」
「そりゃモン楽が嫌がったら俺だって反省する。もちろん謝る。でもあいつなんも気にしてねぇぞ」
そう言って指し示したモン楽は窓際で豪快なヘソ天を晒していた。すぴすぴと平和なおかおで気持ちよさそうに爆睡している。モン楽は納得がいかないことについてはその場で猛抗議してくるので、確かに楽の言う通り本当に気にしていないのだろう。それならいいか、と天は溜息一つで納得した。