目障りなくらい眩しい世界で 世界が鮮やかになるから夏が好き。そんな正気とは思えない言葉をのたまった君の顔たるや。
うん、僕には一生理解できない感覚ですわ。夏なんて冷房効かせた部屋でゲームしてるに限る。オルトの誕生日が夏だからそこはまあ、はい。
とにかく。今年の抱負はオルトと思い出を作るために外出することなので色々と頑張ってはいるんだけど、この暴力的な気温と日差しの前には流石に心が折れそうになるよね。
白いキャップの鍔を下げる。熱を吸収して蒸し焼きになるから白がいいですよ、なんて当たり前なことを真剣な顔で君が言ったからそれに合わせてあげたわけだけど、根本的なものは何一つとして解決してないからつらすぎる件。日傘は手が塞がるのが嫌なんでね。
首筋に汗が伝う。軌跡の感触が気持ち悪くて乱暴に襟で拭った。びよびよに伸びますよ、なんて嗜めてきた君が勝手にハンカチで拭ってきたんだっけ。そんな取り留めのないくだらない記憶が浮かんでは消える。
背の高い向日葵がどこまでも両脇を固めている。この激ヤバ天気の中、無限に続いてそうな道を歩くのは率直に言って拷問に近い。帰りたい気持ちがないと言えば嘘になる。
この道が車NGとかいうわけわかめ仕様なせいでこうしてわざわざ徒歩で来てるわけだけど、率直に言ってふざけてると思う。
悪態を吐きながらも歩き続けること数分。やがて道が途絶え、視線の先には小高い丘。青々とした大樹の足元に整形された石の塊がちょこんと鎮座している。
「………僕を外に引っ張り出させるの、オルトと君くらいだよ」