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    suno_kabeuchi

    twst夢とi7の作品投下垢

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    suno_kabeuchi

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    i7SS100本ノック 17本目
    朝帰りの八乙女と早朝収録のつなしとコーヒー

    ##i7_SS

    モーニング・コーヒーに愛を添えて「お客さん、着きましたよ」
     嗄れ声に揺さぶられるようにして楽は意識を手繰り寄せた。
     瞼を押し上げれば、タクシーのメーターが料金を示しているのが見えた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
    「すみません、電子マネーでいいですか」
    「はい。交通ICですか? クレジットですか?」
    「クレジットで」
     短いやり取り経てタクシーを降りる。日が昇り始めた夜に溶けていくタクシーを見送り、楽は大欠伸するとマンションのエントランスを潜った。
    「あー……ちょっと飲みすぎたかもしんねえ。明日オフでよかったわ……」
     抜けきらないアルコールの酩酊感を自覚しながらエレベーターへ乗り込む。スマートフォンを見れば、午前五時半を指していた。
     主演ドラマがクランクアップを迎えたからと共演した二階堂大和と派手に飲んで食べて飲んでまた飲んでいたらこの時間である。何を話したのかほぼ覚えていないが、やたら楽しかったことは覚えている。
    「ただいま」
     玄関の扉を開けて囁く。時間が時間なので言わなくてもいいのだが、もはや染みついた習慣のようなものなので楽が意識するより先に脊髄反射でまろび出るようになっている。
    「おかえり、楽」
     なので、こうして返事が来ることは楽の想定外だった。
     リビングからひょっこりと長身を覗かせた龍之介に目を瞠る。起こしてしまったかとも思ったが、それにしては身支度が完璧である。
    「あ、今日は朝番の生放送か」
    「そうそう。そろそろ姉鷺さんが迎えに来てくれる頃なんだ」
    「なるほどな。出番いつくらいなんだ?」
    「トークゲストコーナーからだから七時半かな?」
    「わかった。だったら風呂は先に入っても大丈夫そうだな。手洗いうがいだけ先にしてくる」
    「そのままお風呂入っちゃえば? 一回で済んで楽だろ?」
    「龍の見送りはしたいからな。おまえが出たら入るよ」
    「あはは、ありがとう」
     朝の日差しのような顔ではにかむ龍之介に笑みを返し、楽は洗面所に消える。
     レバーを上げて蛇口から水を出す。手に水を潜らせ、一度レバーを下ろして水を止めるとディフューザーに手を翳して掌に白い泡を浮かばせる。両のてのひら、手の甲、指、爪、爪の隙間、指の股、手首。お手本のような所作で入念に擦り洗う。ふわりと清潔感漂う香りが鼻腔を撫でた。
     再度レバーを指先で押し上げる。蛇口から流れ出る水に手を潜らせ、泡の一片も残さず洗い流してレバーを押し下げた。
    「……ん?」
     掛けてあるタオルで拭っていると、ハンドソープの香りとは違う芳醇なそれが鼻腔を擽る。
     リビングからキッチンへと顔を出せば、龍之介がコーヒーサーバーを手に楽のマグカップへコーヒーを注いでいるところだった。寝起きの太陽が柔く照らすその姿は健全な色気が醸し出されており、贔屓目抜きに絵になると思った。楽の視線に気づいたらしい龍之介が破顔する。
    「丁度良かった。コーヒー淹れたからよかったら飲んでくれ」
    「サンキュ。悪いな、おまえこれから仕事なのに」
    「全然! このデカフェコーヒー、すごく美味しかったから楽にも飲んでほしかったんだ」
    「これ、確かこの間まげちょんがうちに来たとき土産にってくれたやつだよな?」
    「そうそう。蜂蜜をたっぷり入れても美味しいって言ってたから、天の分はそうしてあげようと思ってるんだ」
    「なあ、龍。これもう一杯あるか?」
    「あるよ。もう一杯飲みたい?」
    「いや、姉鷺にも飲ませてやりたいと思ってさ」
     こんなに美味しいコーヒーを自分達だけで独占するのは勿体ないし、何よりマネージャーとしてこんな早朝からきびきびと仕事をする姉鷺を少しでも労いたい。そんな気持ちから出た提案だったが、龍之介は間髪入れずに「いいね! 姉鷺さんもきっと美味しいって思ってくれるよね!」と肯定した。
    「俺たちの水筒貸すのもあれだよね……紙コップはあるけど、運転するときに零しちゃうから危ないし………」
    「あ。ちょっと待て龍、確かこのへんに……あったあった」
     そう言って楽が取り出したのはプラスチック製のリッド。
     番組で本格コーヒーを入れるようになったとラビチャしたら、後日飲みに行った時に大和から「これでテイクアウトのコーヒーショップやってくれよ」と十部綴りのそれを悪ふざけで渡されてそのままにしていたものだ。まさか役に立つ日が来るとは、と感心した。
    「紙のスリップもあったぞ。お、ちょうど紙コップに収まるな」
    「すごくお店っぽい! 売り物みたいだ」
    「折角だ、サイン入れてやろうぜ。ほら、サインペン」
    「本格的にカフェの店員さんみたいだね! 楽しくなってくるなあ」
    「確か絵も入れてくれるよな。何にする?」
    「うーん……定番だし、猫とか?」

     その後、降りてきたニコニコ顔の龍之介に差し出されたお手製テイクアウト風コーヒーを見て、「朝から何してんのよあんた」と呆れた一言を向けつつも敏腕マネージャーは顔を綻ばせてくれた。龍之介は一層笑顔を輝かせた。車の中で楽にラビチャをすれば「天にもやってやろうと思う」と一言添えられた上でご機嫌なスランプが返ってきた。
     そして生放送後、ラビチャを見れば恐らく寝起きだろうぽやっとした顔をした天がお手製テイクアウト風コーヒーを飲むの写真が送られてきていたのを見て龍之介は満面の笑みを浮かべた。
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    suno_kabeuchi

    TRAININGtwst夢/イデア・シュラウド
    集中している間に髪と戯れられてるはなし
    待てができるいいこなので ゆらゆらとゆらめくサファイアブルーを見つめること数十分。幸いにしてプログラム生成に集中しているイデア先輩に気取られることもなく、私はじっくりとっくり拝ませてもらっている。
     ほう、と何度目かもわからない感嘆の息が漏れる。昼だろうが夜だろうが、常に薄暗いイデア先輩の部屋ではそのサファイアブルーが陽の下のそれよりも鮮やかに映る。彩度の高いそれは驚くほど瞼に焼き付いては目を伏せてもその名残で閉じた視界に青が散る。
     足首まである長いそれはいざ座ると殆どが背凭れと痩躯の間に隠れてしまうけれど、一筋二筋と零れ落ちるそれもある。カーペットに座っていたけれど、そろりそろりと近づいて音もなくそれに手を伸ばす。燃えているだけあって毛先こそ掴めはしないが、もう少し上の方であれば実体がある。指に絡ませてみれば鮮やかな青に照らされて私の肌が青褪めたように光を受ける。視線だけイデア先輩に向ける。足元にいる私に気づいた様子もなくブツブツと早口で何か捲し立てながらキーボードを叩いている。それに小さく笑みを零して指に絡ませたそれに唇を添える。殆ど何も感じないけれど、ほんのりと温かい気がした。
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