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    suno_kabeuchi

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    suno_kabeuchi

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    i7SS100本ノック 19本目
    バーガーショップに来た楽とモンがく

    ##i7_SS

    チャンキー・ジャンキーに踊れ 世界的に有名なハンバーガーチェーン店。その入口付近にあるメニュー表にキャップと薄色のサングラスを纏った姿で楽は視線を走らせた。実に簡単な変装ではあるが、意外と人は気づかないもので。堂々としていれば、今をときめくTRIGGERのリーダー八乙女楽が真剣な顔でジャンクフードのメニューを吟味しているなど思われないのである。
     ジャンクフードの代名詞ともいえるハンバーガーは食べすぎると体型や健康に影響が出るのを理解しているので基本的に口にする事は無い。それは自身がアイドルとして、己の容姿も含めて商品であり価値を齎している事をよく理解しているが故に。だがそれはそれとしてどうしても食べたくなってしまう事がある。今日がそれだった。それが例えば長期撮影の舞台や映画であるのならそれでも律する事は叶うが、幸か不幸か楽はつい先日主演ドラマのクランクアップを終えたばかりである。別のドラマ撮影はあるが、それは来月とまだ期間がある。
     トレーニング増やして食うもん調整しよう。
     速やかに結論を出した楽は手早く身支度を整えると颯爽と玄関を後にし、そして足取り軽くやってきて冒頭に戻る。
     暫く来ないうちにメニューが随分と様変わりしていた。勿論定番メニューと呼ばれるようなラインナップに変化は無いが、それ以外にプッシュされている商品や季節の看板メニューなど新鮮な情報が楽の目にたくさん飛び込んでくる。
     特にカフェメニューなどはシェイクだけでなく、マカロンや有名チョコレートブランドとのコラボ商品などが扱われていて楽は目を瞠ったし興味をそそられた。楽自身に甘味を嗜む趣味は無いが、甘いものに目が無いセンターの姿を見るのは心満たされるものがある。
     これなんか天が喜びそうだ、と口元を緩ませると項周りに違和感を抱いて手を伸ばせば、その手を掻い潜ってにょきりとライトグレーが姿を現した。
    「うおっ⁉ おまえ、しれっとついてきてたのかよ」
     どうやら楽のフードに忍び込んでいたらしい。ドヤァと言わんばかりの顔に毒気を抜かれた顔をして楽は肩に乗るモン楽に「ついて来たいなら次はちゃんと言えよ」と小突いた。
     窘められたモン楽がこくり! と力強く首肯したのを確認すると「よし、じゃあ一緒に見るか」と楽は己の掌の上に乗せた。
     モン楽の視線が上から下からメニュー表を辿る。自分と同じく選択肢の多さに目移りばかりしてしまうらしい。
    「わかるぜ、迷うよな。久々に来たら知らないメニューもすげえ増えてるし……」
     四葉とか詳しそうだけどな、とマイペースな現役高校生の姿を思い浮かべる。何故かハンバーガーでは無く王様プリンを幸せそうな顔で頬張る姿が脳裏をよぎった。印象が故だろうか。
    「あ、でもこの期間限定の美味そうだな。食べ応えありそうだ」
     SNSやCMで見かけた期間限定のハンバーガーに楽の胃は従順に反応した。肉厚のパティにチェダーチーズ、レタスとトマトもたっぷりと挟まっていてボリュームがある。よし、これしよう。楽は即決した。
     自分のメニューを決めたところでモン楽に視線を向ける。表情は変わらないが、雰囲気が熟考しているそれだった。
    「どうした、決まらないのか?」
     楽が問い掛ければ、モン楽の耳と尻尾がちょっぴりしんなりした。
    「どれで悩んでるんだ?」
     続けて問えば、複数のメニューを指し示す。シェイクやマカロンなどのスイーツも指示したものだから楽は驚いた顔を見せた。
     自分たちにどことなく似た風貌のモンたちは、その嗜好もそれぞれに似ている。例えばモン天であれば天と同じように甘いものに目が無い。なんなら食事という行為全般に情熱を持っている。このモン楽も楽と同じように甘いものを嗜好しているような素振りはこれまで見えなかった。何ならモン天やモンつなに積極的に渡しているまである。
     これまでに無い行動に楽は首を捻る。一秒、二秒、三秒。ピコン、と閃きが脳で瞬いた。
    「もしかして、モン天やモンつなにお土産渡したいって事か?」
     心なしかきりりと表情を引き締めたような面持ちでモン楽は楽を見上げてくる。当たりらしい。楽はにかりと気風の良い笑顔を向けた。
    「そうだな、みんなで食った方がうまいもんな。つっても龍は仮眠取ってよな。深夜帯の収録があるっつってたしな……」
     今頃仮眠中だろう龍之介の姿を思い浮かべる。現場に行く前に軽く腹に入れるものでも買って行ってやるか、と再びメニュー表に視線を投げた。
    「天……も今日は遅いって言ってたな。じゃあハンバーガーよりマカロンの方がいいか」
     冷蔵庫に保存出来そうだもんな、と呟けば賛同するようにモン楽がこくこくと頷いている。それに帰ってきて甘いものがあると知ればきっと喜んでくれるだろう。天は甘いものが大好きだから。それに甘いものは疲れを癒すのにも向いていると聞く。楽は今日こそオフではあるが、明日は朝の情報番組に出演する関係で早寝を予定している。逆に天は深夜近くまでの収録だった筈だから、顔を合わせる事は無いだろう。となれば、一層保存がきくものの方が良さそうだ。
    「よし、決めた。龍はこの期間限定のハンバーガーセットにして、天にはマカロンボックスを買って行こう。おまえは決めたか?」
     見れば、モン楽も先程と違って溌溂とした顔をしている。どうやら決まったらしい。
    「お、決まったみたいだな。どれにするんだ?」
     問いかけた楽に応えるように短い手でそれぞれ指し示す。ナゲットとポテト、マカロンボックスにチキンクリスプ。人間たち程では無いにしろ、その体躯に対して明らかに釣り合っていない量である。
    「ハンバーガーまるまる一個はお前らに大きすぎないか?」
     そんな事は無い、絶対に大丈夫だ。そう言わんばかりの屈強な眼差しを向けられた。楽が考える事暫し。
    「まあ、モン天だったら食い切るだろうな……」
     ぽつりと楽が呟けば「そのとおりだ」と言わんばかりにモン楽が見上げてくる。
     脳裏に思い浮かべたピンク色もまた、「あたりまえですが?」と言わんばかりの顔をしていた。
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    suno_kabeuchi

    TRAININGtwst夢/イデア・シュラウド
    集中している間に髪と戯れられてるはなし
    待てができるいいこなので ゆらゆらとゆらめくサファイアブルーを見つめること数十分。幸いにしてプログラム生成に集中しているイデア先輩に気取られることもなく、私はじっくりとっくり拝ませてもらっている。
     ほう、と何度目かもわからない感嘆の息が漏れる。昼だろうが夜だろうが、常に薄暗いイデア先輩の部屋ではそのサファイアブルーが陽の下のそれよりも鮮やかに映る。彩度の高いそれは驚くほど瞼に焼き付いては目を伏せてもその名残で閉じた視界に青が散る。
     足首まである長いそれはいざ座ると殆どが背凭れと痩躯の間に隠れてしまうけれど、一筋二筋と零れ落ちるそれもある。カーペットに座っていたけれど、そろりそろりと近づいて音もなくそれに手を伸ばす。燃えているだけあって毛先こそ掴めはしないが、もう少し上の方であれば実体がある。指に絡ませてみれば鮮やかな青に照らされて私の肌が青褪めたように光を受ける。視線だけイデア先輩に向ける。足元にいる私に気づいた様子もなくブツブツと早口で何か捲し立てながらキーボードを叩いている。それに小さく笑みを零して指に絡ませたそれに唇を添える。殆ど何も感じないけれど、ほんのりと温かい気がした。
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