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    suno_kabeuchi

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    suno_kabeuchi

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    i7SS100本ノック 20本目
    八乙女楽と龍之介とモンtrgとセンチメンタルな天

    ##i7_SS

    季春、訪れの慶びに香り立つ ただいま、という前に。ふわ、と、天の鼻腔をほのかに優しいにおいが擽った。それでいて胃がきゅるる、と情けなく鳴くものだからあまりにもわかりやすい自分に天は苦笑した。すっかり気が緩んでしまっている事実を改めて実感してしまって気恥しさが淡く込み上げる。
    「あ、出迎えに来てくれたの? ふふ、ありがとう。ただいま」
     その大きな耳で天が玄関の扉を開く音が聞きつけたのか、廊下の向こうからてちてちと小さな同居者たちが姿を現し、天の姿を確認すると「おかえり!」と言うようにぼむぼむ弾んでいる。毎度の事ながら情熱的に歓迎してくれるその姿に天は玄関の扉を施錠しながらくすりと笑みを零した。
    「ただいま」
    「天、おかえり」
    「お、早かったな。おかえり、天」
     モンたちを伴って廊下を過ぎてリビングに顔を出せば、楽と龍之介が穏やかに笑い掛けてきた。その顔に天はまた一枚纏っていた何かがほどけるような心地を覚えた。
    「玄関までいい匂いがしてたけど、今日は何つくったの?」
    「今日はね、楽が筍ご飯を作ってくれたんだ」
    「自信作だから期待しててくれ」
    「へえ、それは楽しみ」
     言葉を躍らせながら天は洗面所に消えていく。晩春ですっかり汗ばむ陽気も珍しくなくなったとは言え、うがい手洗いは欠かせない。自らの身体が資本であり、商品である自覚があるからこそ日々の細やかな体調管理については人一倍気を遣っている。
    「うん、いい匂い」
     弾む心のまま再び天がリビングダイニングに姿を現せば、一層香り高いものが天の備考と胃袋を刺激する。盛大な腹の音が鳴ってしまいそうで天はそれとなく手を押し当てた。流石に気心が知れた間柄であるとは言っても、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。
     テーブルを見れば、モンたちが器用に飾り立てている。見事な連係プレーで危なげなくセッティングされていく夕食に天は顔を綻ばせた。
    「他に運ぶものある?」
    「あの子たちが頑張ってくれたし、こっちももう終わるから大丈夫」
    「座って待ってろ、すぐに行くから」
    「わかった」
     皆が準備している中で一人待つのはなかなかどうして据わりが悪いが、そう言われてしまっては天も引き下がらずを得ない。実際テーブルの上はモンたちの仕事場とばかりに手際よく準備が進められている。なんなら今にも終わりそうだ。
     むず痒い気持ちを抱えながらいつもの定位置に着席すれば、セッティングが終わったらしいモンたちがずらりと天の前に並ぶ。何かを期待する顔をしている。
    「ありがとう。キミたちが手伝ってくれたんでしょう?」
     表情は変わらないながら、こくり! と一様に力強く頷いた。どうやら予想通りだったらしい。
     天からのお褒めの言葉を戴いて満足したらしいモンたちはぞろぞろと彼らの定位置に戻っていく。愛らしいフォルムと仕草に天は小さく噴き出した。
     目の前の料理とキッチンの交互に視線を遣る。九条鷹匡と暮らしていた時はこうして食事を用意してくれているという事は無かった。九条鷹匡はどちらかといえば生活能力に欠けているので、寧ろ天が積極的に準備していた。それが決して嫌だったという事は無い。天は骨の髄までアイドルで、堂に入った奉仕体質だ。それで九条鷹匡の健康が守れるというのであれば喜んでやる。不満など覚えた事は無い。
     ただ、こうして三人で暮らし始めて。帰って来たら温かい食事が準備されているというのは例えようもなく嬉しいと思うのもその通りなのだ。自分を迎えてくれる笑顔も、優しい眼差しも、穏やかであたたかく天の胸に灯りをともしてくれる。
    (九条さんもボクと同じ風に思ってくれたのかな)
     九条鷹匡の世話をする事について報われたいと思った事は無い。自分で望んで、自分で決めた事だ。それに感謝の言葉なら充分すぎるほど貰っている。
     けれど、あの不器用な養父が、同じように思ってくれていたのなら。
    ───それは言葉に出来ないくらい、幸せだと思うのだ。
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    suno_kabeuchi

    TRAININGtwst夢/イデア・シュラウド
    集中している間に髪と戯れられてるはなし
    待てができるいいこなので ゆらゆらとゆらめくサファイアブルーを見つめること数十分。幸いにしてプログラム生成に集中しているイデア先輩に気取られることもなく、私はじっくりとっくり拝ませてもらっている。
     ほう、と何度目かもわからない感嘆の息が漏れる。昼だろうが夜だろうが、常に薄暗いイデア先輩の部屋ではそのサファイアブルーが陽の下のそれよりも鮮やかに映る。彩度の高いそれは驚くほど瞼に焼き付いては目を伏せてもその名残で閉じた視界に青が散る。
     足首まである長いそれはいざ座ると殆どが背凭れと痩躯の間に隠れてしまうけれど、一筋二筋と零れ落ちるそれもある。カーペットに座っていたけれど、そろりそろりと近づいて音もなくそれに手を伸ばす。燃えているだけあって毛先こそ掴めはしないが、もう少し上の方であれば実体がある。指に絡ませてみれば鮮やかな青に照らされて私の肌が青褪めたように光を受ける。視線だけイデア先輩に向ける。足元にいる私に気づいた様子もなくブツブツと早口で何か捲し立てながらキーボードを叩いている。それに小さく笑みを零して指に絡ませたそれに唇を添える。殆ど何も感じないけれど、ほんのりと温かい気がした。
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