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    ミナるでぃ

    @minato_sngw

    モルモットです

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    ミナるでぃ

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    タキ×モルのSS
    妄想の具現化です許してください
    ・モルモット性別不定
    ・捏造設定あり
    ・タキオンのキャラソンを知ってる人向け

    #ウマ娘
    umamusume

    タキオンにピアノを弾かせたい「おや……?」

     地下鉄の駅構内を歩いていたアグネスタキオンの視線の先に、白いアップライトピアノが壁に向かって設置されていた。
     ストリートピアノ、というやつか。確かに大きな駅だから、人々の注目を集めるにはうってつけだろう。

    「モルモット君、せっかくだから何か弾いてみておくれよ」

     無邪気な期待の眼差しに背中を突かれ、タキオンのトレーナーはゆっくりピアノの方に足を進めた。
     見慣れた白衣と同じぐらい真っ白なボディーに、金色でYAMAHAの文字が刻まれている。

    「もうずいぶん弾いてないんだけどな……」

     横長の椅子に腰かけて丸い取っ手を回し、高さを調整しているトレーナーを見て、タキオンの心拍数が少しばかり上昇する。今から私のモルモットはどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか。

     トレーナーは右足で一番右のペダルを何度か踏んだ後、両手をそっと鍵盤の上に乗せた。
     目を瞑り――開くと、先に左手から迷いのない音色が響く。

     聞き覚えのある和音だった。
     いや、それどころか――タキオンにとって最も馴染みのあるコード。

     トレーナーの右手がそれに続いてメロディーを奏でる。まるでピアノが歌詞をそのまま歌っているかのように。

    (色のない夢を見てた)

    (虚数が舞う無限のストーリー)

     ――――――私の曲だ。
     タキオンは目を見開いたまま、ピアノの方へ距離を詰めた。

    (浅い眠りを終えたら、行こうか)

     長い裾を捲った右手を伸ばし、タキオンの音がトレーナーの音と重なる。
     コードの上で、二重のメロディーが同時に跳ねる。

    (さあ順番だ 光速の先へ)

     ふとタキオンが左を見ると、トレーナーと目が合う。

    (もう空間は法則を超えて)

     口元から微笑みが漏れたのに気付いて、鍵盤の上の手元に再び視線を戻す。

    (歪んでいくんだ)

    (そう瞬間で永遠と対峙)

     トレーナーの左手の小指がルートの音を強く叩く。

    (始めてみようかプランB)

     タキオンは紅茶を飲む時のように右手の小指を伸ばし、1オクターブ上の旋律を乗せてユニゾンにする。

    (すべてを……)

     三連符で、世界が静止した。



    (解き明かして)



     三本の手に操られたアップライトピアノが、重厚な音圧でドロップを響かせる。
     16分音符の隙間を縫うように、二人の音が絡み合う。

    (解き明かして)

     タキオンが左手の裾も捲り、ぎこちないながらも自分とトレーナーの間に五線譜をもう一つ作り出した。

    (さあハイファイな世界の先へ)

     トレーナーの左手、右手。タキオンの左手、右手。
     ピアノの全音域を余すことなく使い切りながら、サビを奏でる。

    (超光速で視界はライトレス)

     装飾音符が粒子のように加速し、短3度で衝突する。

    (もう曖昧な正解はないさ)

    (すべてを解き明かして)

     タキオンが決意に満ちた表情で、手の甲を鍵盤の右端から滑らせる。まるで京都の淀の坂のように、グリッサンドが駆け降りる。

    (何度だってやり直すよ)

     フレーズがワンテンポの間を置いて二人の間に反響する。

    (消えない光探して)

    (君へと……いま)

     そして、一寸の狂いもないタイミングで――――――



    (手を伸ばした)



    「……驚いた。いやぁ、驚いたよ。まさか君がここまでピアノを上手に弾けるとは」

     演奏が終わってからいくら経っても、あの感覚がまだ忘れられない。タキオンは何度かまばたきし、大層感心した様子でトレーナーを見つめた。

    「いや、タキオンこそ。そもそも弾けるなんて知らなかったよ」

     トレーナーもトレーナーでびっくりしたように口を開いた。
     担当ウマ娘のことは全て知っていると思っていたのに、まだ自分の知らない才能を隠していたなんて。

    「子どもの頃に少しだけ、ピアノを習っていてね。それにそもそもあれは私の曲じゃないか。君は一体どうやって……? 楽譜もないはずなのに」

    「あはは、最近ずっと聴いてたからかな。好きなんだ、あの曲」

     いつだったか、かつて自らの口から語ったように、タキオンの家族は基本的に放任主義だった。いくら名家のお嬢様とはいえ――彼女が楽器を習っていたというのは、トレーナーにとって意外な発見だった。
     タキオンはまた面白いデータが採れそうだという閃きをもって、トレーナーと共にその場を後にした。

    「無意識下での聴音分析とその再現……クククッ、素晴らしいねぇ」



     *



     今日もトレーナー室からは、深く深く思考を巡らせるタキオンの呻き声が聞こえる。しかし今日は実験や研究について頭を悩ませている訳ではない。

    「どこをどう組めばいいんだい、コレは……」

     説明書と、バラバラに解体された名状しがたい何かが、床に横たわっていた。
     トレーナー室の扉が開き、この部屋の本来の主が入ってきても、タキオンは一向に構わなかった。

    「あれ、タキオンもう来てたんだ……何それ?」

    「……なんだ、君か。これは至って普通の電子ピアノだよ」

     ピアノ――たしかに木材の質感は楽器か家具のようだ、とトレーナーは思う。これが組み立てられる前の電子ピアノということか。

    「……え?」

     ところでなぜ電子ピアノがここにあるのだろう。

    「まさか、買ったの?」

    「ああ。両手の指を複雑に動かすピアノは、前頭前野や海馬、脳梁に良い影響をもたらす。トレーニングの一環さ」

     それにエンドルフィンはリラックス効果に繋がるからね、と付け加えて、タキオンは再び説明書に向き直った。

     トレーナー室にピアノ、か。
     もっとも、この部屋は既にタキオンが持ち込んだ様々な実験機材の類で埋め尽くされている。トレーナーにしても今更特に咎める理由はない。

     タキオンはしばらく部品を眺めていたが、ふと肩を竦めると、棚から茶葉を取り出して紅茶を淹れ始めた。

    「組み立て、手伝おうか?」

    「ふぅン……気持ちは嬉しいが、実はもう専門家を呼んであるんだ。じきに来るはずさ」

    「そっか」

     トレーナーはぼんやりとティーポットを眺めていた。専門家、というとやはり業者か――――――

    「はーっはっはっはっは!! 遅れてすまないね、タキオンさん!」

     トレーナー室の扉が開くなり、よく響く声と共に一人のウマ娘が入ってきた。
     タキオンが呼んだ専門家とは彼女のことだ。音楽――特にオペラやミュージカルにかけては、トレセン学園に彼女以上の知識人はいないだろう。

    「紹介するよ。中等部のテイエムオペラオー君だ。そして、こちらが私のモル……んん、トレーナー君」

     さすがに他人の前で自らのトレーナーを実験動物呼ばわりするのはまずいと感じ、タキオンはわざとらしい咳払いをして呼び直した。
     トレーナーは特に気にも留めず、オペラオーに軽く会釈をする。

    「よ、よろしく……」

    「うん、こちらこそよろしく頼むよ、タキオンさんのトレーナーさん!」

     オペラオーは笑顔でトレーナーと固く握手すると、ざっくばらんに開封されたままの電子ピアノの部品を一瞥した。

    「これが噂の電子クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ……なかなか良いものを選んだね」

     ピアノの正式名称をすらすらと口にするオペラオーの傍らで、タキオンは木製のフレームを軽々と持ち上げて立てた。
     ウマ娘の筋力なら、運ぶのも組み上げるのも朝飯前だ。

    「よし。始めるとするか、オペラオー君」

    「もちろんさ!」



     *



     電源を付けると、ややあってスピーカーから小さなノイズが鳴り、すぐに静まり返った。
     生ピアノとは違って調律は不要。あとは弾くのみだ。

     タキオンは振り返り、オペラオーに席を譲った。

    「試奏を頼むよ」

    「いいのかい?」

     オペラオーはピアノを前にして目を見開きながらも、ふっと微笑んで横長の椅子に座った。

    「それじゃあ……君のはじめての奏者を、このボクが喜んで担当させてもらおう!」

     そして――――――彼女の華麗なるショーが始まる。

     劇場の緞帳がゆっくりと上がるように電子ピアノの低音が鳴り響く。姿を現した音の舞台上にたった一人、観客席を前にして堂々と立つテイエムオペラオーの輪郭が浮かび上がった。
     息を吸い、喉を震わせ、オペラオーの美しく高らかな歌声がピアノの調べと交ざり合い、部屋の空気が隅から隅まで彼女の世界で満ち満ちていく。

     華々しい。それでいて、切ない。タキオンとトレーナーは瞬きも忘れて、その歌劇に心を奪われていた。

     永遠に聞いていたいとさえ思えた演奏が、いつしか終わっていた。

    「……うん。良いピアノだ。ありがとう、タキオンさん」

     覇王はさっきまでの凛々しい表情を崩し、にこやかに笑顔を見せた。
     聴衆二人の拍手に応えてカーテシーをする所作は、まさにテイエムオペラオーここにありと言わんばかりの威儀だ。

    「クククッ、素晴らしい演奏だったよ! 今のはたしか、君の一番好きな戯曲だろう?」

    「ああ、その通り。プッチーニの『トゥーランドット』さ。もしかしてタキオンさんもオペラに興味があるのかい?」

    「実は私も幼い頃に少しだけピアノを習っていたんだが……トレーニングと研究の息抜きのために、また始めてみようと思ってね」

     それを聞くと、オペラオーはふと思い出したように自分の鞄の中から何かを探し当てた。
     ファイルに綴じられた楽譜――――――結構な量だ。さっきの長さぐらいの曲が、少なく見積もっても5曲分ほどはあるだろう。

     楽譜を手渡されたタキオンは首を傾げた。これを私に?

    「それは初心者向けのピアノのアリエッタだ。昔弾いていたタキオンさんなら、リハビリ練習にはぴったりのはずさ! ボクはもう使わないから、よかったら全部あげよう!」

     試しに1曲目の楽譜を開くと、確かに難易度は易しいものだった。少し時間はかかるかもしれないが、これなら弾くことができる。

    「ほう……なるほど。面白そうだ。ありがとう、オペラオー君」

    「いつかまた、ここに来てもいいかな? その時はボクとタキオンさんで連弾してみたいんだ!」

    「ふぅン、構わないよ。それまでに私も練習しておかなくてはね」



     その後もタキオンが淹れた紅茶を飲みながら、二人の雑談は続いた。

     トレーナーは普段見られないタキオンの人間関係を眺めて、どことなく微笑ましい気持ちになっていた。彼女はこれからこの部屋で時々ピアノの練習をするのだろう。だんだん上達していくのを聞くのが楽しみだな、と思った。

     実際、いつもの調子で「トレーナーくーん、ここの弾き方を教えておくれよー!」と駄々をこねられるまでそう時間はかからなかったが。
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    ミナるでぃ

    DONEどこからか書けという声が聞こえた、ウマ娘01世代と愉快な仲間たちの水曜どうでしょうパロSSです。n番煎じなのは承知。多少改変あり。元ネタ知ってる人向け。

    〈キャスト〉
    大泉洋役 アグネスタキオン
    鈴井貴之役 マンハッタンカフェ
    安田顕役 ジャングルポケット
    藤村D役 エアシャカール
    嬉野D役 アグネスデジタル
    01どうでしょう #1#1 腹を割って話そう


    深夜0:50 402号室


    タキ「私とポッケ君はもう電気を消して寝ていたんだよ!そこに、出来上がった陽気な君がだ!『ドンドンドン!』ってしてきて、『何だい?』と言ったら『寝てンのか?』って入ってきて……ドカドカドカドカ入ってきて、そこに座ったかと思ったら電気をつけて、『腹ァ割って話そうぜ』って言い出したんじゃないか……」

    全員 「wwwwwwwwww」


    事件の経緯


    タキ「じゃあ説明しよう。今ここで何が起こったのかをねぇ。私は今日アレだよ、皆ご存じのファン感謝祭ツアーの、夜を迎えたわけだよ。皆もう観ただろう? 私はあの雪の中、鬼をやってたアグネスタキオンだ。あの後に、私はやっとこのホテルに着いたわけさ。そうしたらもう時間もなくて、急いで風呂に入ってその後に私はトークショーをして……カフェと共に2時間のトークショーをして、写真を撮って私はもうヘトヘトだよ。さあ寝ようかと思った時にまだ打ち上げがあった……そこに私は顔を出して、やっと寝ると決まったのが12時だよ。いいかい? 12時に私が布団に入って寝ようとしたんだよ……」
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