購入場所「そう言えばカルエゴ先生のその鞭って魔力で伸ばせるんですか?」
突然のムルムルの質問に、手にしていた短鞭へちらりと視線を向ける。
「まぁそうだが」
「そのタイプの鞭って中々扱い難しいんですよね。魔力込めすぎると酷いことになりますし」
「えっ。何突然解説に入ってきてんの」
突然ムルムルの背後に現れたマルバスにびくりと体が跳ねた事を無かったかのように、マルバスはカルエゴの手にある短鞭を愛しげに見つめる。
「本当にいつ見ても美しいですよね」
「惚れ惚れするポイントが解らないっ」
「それ以上近付かないで下さい」
「酷いなぁ」
わざとらしくしょげて見せるマルバスに、カルエゴの後ろの席で話を聞いていたダリは笑い声をあげる。
「で、カルエゴ先生はそれずっと前から持ってるけど。どこで手に入れたんです?」
「は?」
「その短鞭一見使いやすそうなのに加減が難しいからって中々手にしてる悪魔居ないですよね」
「って言うか鞭って拷問道具屋で買うんですか?」
「行きつけの店あったりします?」
「拷問道具屋に行きつけのがあるのって何か嫌じゃありません?」
生徒も女性教師達も帰った後の校内だからと言って歯止めのきかない教師陣からの質問責めにカルエゴはふと思考を巡らせる。
実際この短鞭は自宅にあるものを譲り受けた物。特に拷問道具屋へ買い物に行く必要もカルエゴには無い。では何故自宅に短鞭や、それと共に大量の道具があったのだろうか。答えは簡単である。魔関署の最奥を勤めるナベリウス家の悪魔たるもの大抵の拷問道具を使いこなせなければ意味がない。と言う思考からだ。
実際その短鞭を譲り受けた時に、他の道具も試してみるか?と言う言葉に意味が解らず必要ないと答えた記憶だけは残っている。
「いえ。別に買いに行ったことは無いですが」
「え。じゃあそれどこで」
「…………言う必要性が感じられ無い。それよりもさっさとその書類仕上げないと日付変わっても終わりませんよ」
自宅にあるのを等と言えば色々と厄介なことになるであろう事はカルエゴも解っていた。
「カルエゴ先生も色々事情がありますもんね~」
「黙ってて下さい」
シチロウがこの場に居なくて良かったと、他の教師達には気付かれないようカルエゴは息を着いた。