花弁の裏側ひらひら。と、彼がつい先程まで座っていた椅子に桜の花弁が舞い落ちる。
1つの質問に考えた答えを言っただけなのに。と、鬼伏千隼は思った。
考えた答えを口にしたら彼は失望したような、絶望したような、何とも言い表せない顔をして、ポケットから懐中時計のような時計を取り出した。
それを見て(ああ)と納得した。
鬼伏は彼のことも、彼が探している人物も詳しくは知らない。
彼の名前を口にすると、彼は手を止めこちらを見た。
「捜し物。頑張れ」
にこっと笑顔を付けて言えば。
「そう」とだけ返ってきた。その反応から彼は随分捜し物をしているらしい。案外、捜し物を探すのは下手なんだなと思った。
そして、彼が消えて今に至る。
ちらりとコメント欄を見ると「どうしたの〜?」「変なお便りでもあったか」「フリーズした」などのコメントで埋まっていた。消えた彼に言及するコメントは無く、コメント欄をスクロールしても鬼伏へ向けたものしかなくて、最初から彼は居なかったことになっていた。バーチャルだなぁと鬼伏は思った。
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