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    りき色

    置き場

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    りき色

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    むゆち、ぽんちゃん、しっきー、セラフ、よつはぴ

    日常とか非日常とかいつもお世話になってる店員さん


    「ぽんー。なにこれ」
    「うーん?」
    ごちゃごちゃと、色とりどりのモノが並んでいる棚にとあるモノを見つけ天ヶ瀬はそれを手に取り先斗に呼びかける。
    それは群青色の鳥の羽根だった。先には綺麗な硝子玉がついている。
    「あーそれ?まじないの羽根だって」
    「まじない」
    「そう。天ヶ瀬買ってく?」
    「いやー遠慮しとくわ」
    天井からぶら下がっている不思議なシャンデリアから放たれている柔らかな光に羽根を透かすと星空のようにキラキラ光った。
    「…で?あの外のはいつ消えるん?」
    「さぁ?」
    先斗はうんざりしたような目で窓を見る。窓には薄い白色のレースのカーテンが下がっているが、黒い影がチラチラと見えている。
    「まったく。なんであんなモノを連れてきたんだか」
    「むゆだって、悪夢そのものに追いかけられるとは思わなかったんだもん」
    棚に羽根を戻して立ち上がり天ヶ瀬も窓を見る。
    「えー。この店になにかないの?」
    「なにかって?」
    「う〜ん。例えば…箒とか」
    「…箒で何するつもりや」
    「うぇ〜え…叩く?」
    「それで行けると思ってんの?」
    「さぁ…」
    天ヶ瀬の答えに先斗はため息をつく。
    「あっそうだ。ねぇ、魔除けみたいなのない?」
    「魔除け?」
    「そうそう」
    辺りを見回しながら天ヶ瀬は言う。
    「たぶん小さいし魔除けなら直ぐに祓えると思うよ?」
    「へ〜。なんか探してみるよ」
    「ありがとう。お香みたいなのだったら効果があるかも」
    「お香ね〜。あるよ。あるよ」
    そう答えると先斗は、白い布を被ったナニかやテーブルの間を抜けて小さなドアがついた可愛らしい飾り棚の前に行き、そのドアを開いた。
    「ほら。天ヶ瀬、ここ」
    そう先斗に言われ天ヶ瀬も傍に行く。
    そこには色とりどりの小瓶が並んでいた。
    「この小瓶の中にお香が入ってるんや」
    「へぇ〜」
    天ヶ瀬は目の前にあった水色の小瓶を手に取り蓋を開ける。そこには三角形の小さなお香が入っていた。小瓶から漏れ出す匂いは塩辛い、海の匂いだった。
    「で、何の匂いをご所望や?」
    「えーと、ローズマリー」
    「ローズマリー?」
    「そう。魔除けの匂いなんだ」
    「へー。初めて知ったわ」
    海の匂いがした小瓶の蓋を閉めて天ヶ瀬は棚に戻す。
    「これやな。ローズマリー」
    先斗が手に取ったのは青紫色の小瓶だ。くるくると蓋を外して傍にある机の上のモノを退かして少しのスペースを作り、その上に小瓶の中のお香をばらまける。青紫色の三角形の小さなお香が、ぱらぱらと散り、みずみずしい爽やかな匂いが辺りを漂う。お香を一つ手に取り、嗅いでみる。
    「おー。凄い良い香り」
    「そうやねー」
    そう言って先斗は机についていた引き出しを開け、マッチを取り出す。
    「え、マッチなの?」
    「そう。ここにはチャッカマンなんて便利なものは無いんや。さ。天ヶ瀬、窓開けて開けて」
    ぐいっと先斗に背を押され天ヶ瀬は窓を開けに行く。先斗曰く、カーテンを閉めていればこのお店には入って来れないらしい。
    「はい。開けたよ」
    「りょーかい!」
    屈みながら窓を開けて先斗の元に戻ると先斗はマッチの小箱を開け、マッチ棒を取り出し火をつけお香につける。
    ふわふわとみずみずしく爽やかな香りが直ぐに辺りに漂い始める。
    「おー。いい匂い」
    「ねー」
    チラリと開いた窓の方を見ると黒い影は居なくなっていた。
    「あ!消えた」
    「よっしゃ。じゃあ、天ヶ瀬はもう帰ってもろて」
    「えー」
    「えー。って何言ってんの。店もう閉めんで」
    壁に掛かっている時計の針は四時過ぎを指していた。
    「ほら帰り、帰り」
    「は〜い」
    先斗に背中を押されて天ヶ瀬はしぶしぶ店の扉に向かう。
    「はい。カバン」
    「ありがとー」
    「もう厄介事持ち込んで来るなよ」
    「んーうん」
    「おい」
    不満げな顔の先斗に笑いながら天ヶ瀬は肩にカバンを掛けて扉に手をかける。
    「じゃ、またね」
    「うん。またね〜」
    ばいばい。と天ヶ瀬は先斗に手を振り、外に出る。後ろでからんころんと転がるような鈴の音が鳴り、扉が閉まる。
    さて、駅に帰るか。と思って歩き出すとふとある香りがして立ち止まる。服から爽やかな匂いがする。ローズマリーのお香の匂いが天ヶ瀬の服に移ったようだ。天ヶ瀬は思わず笑って薄暗い脇道から大通りに出て駅の方面に歩き出す。すると、見慣れた背中が見えて立ち止まった。


    ローズマリーの香り


    「お兄さん」
    くいっと何かに引っ張られたようなあとにそう声をかけられ後ろを振り向く。そこには黒色のランドセルを背負った小学校低学年程の男の子が立っていた。
    「どうしたんですか?」
    「あのね、僕。無くしちゃったの」
    膝に手をついて屈み、男の子と目線を合わせてやる。夕方のオレンジ色の太陽の光に照らされた男の子は四季凪と目線が合うと、にこ。と笑った。
    「無くした?」
    「そうなの」
    四季凪が問うと男の子は首を縦に降って言う。
    無くした。とはランドセルに付いていたキーホルダーか何かだろうか。男の子が背負っているランドセルに目をやるとそれはボロボロで少し、色褪せたようだった。
    「何を無くしたのかな?」
    「えーとね。大事な物」
    「大事な物…」
    「そうなの」
    にこにこと男の子は笑顔だ。
    「だからお兄さんに探すのを手伝って欲しいの」
    膝についていた手を男の子に引っ張られつられるように四季凪は立ち上がる。
    「ここ、ここの道」
    男の子が指を指した道は建物と建物の間にある細い道で、影に沈み暗く、奥まで見通せない道だった。
    「こんな道に大事な物を無くしてしまったのですか?」
    「うん。だからお兄さんに手伝ってほしいの」
    にこにこと相変わらず笑顔の男の子に一瞬たじろぐ。それくらいなら、探しても良いですよ。そう答えようとしたが、再度後ろから服を引っ張られる。今度はさっきよりも強い力で思わず一歩後退る。

    「ダメだよ」

    その声は普段とは違って、優しくそれでも哀愁があるようなそんな声だった。ふわりと一瞬漂ったあまり嗅いだことの無いみずみずしく爽やかな香りは香水だろうか。
    赤ピンク色のツインテールが四季凪の視界の端で揺れている。
    「手伝ってよ」
    「このお兄さんはダメなの」
    その言葉に男の子は地団駄を踏む。
    トンッと横から小突かれて慌てて四季凪も「ゴメン。無理なんだ」と言う。
    「なんでっ!無くしちゃったんだよ!」
    「君は元々それを持って無いんでしょ。そーやって、君は何人向こうに連れて行ったの?」
    天ヶ瀬の言葉に男の子は驚いたように目を見開き、目線を宙に漂わせたあと横の闇に沈んでいる道へ走っていった。
    「四季凪、元諜報員なのにあんなのも分からないんだ」
    男の子が走っていった道を見ていた四季凪は天ヶ瀬の言葉でそちらを振り向く。
    「あれ…なんだったの」
    「さぁ。少なくとも、人間では無いよ」
    「天ヶ瀬と同じようなの?」
    「あんなのと一緒にしないで欲しいなぁ〜」
    天ヶ瀬はぷくっと頬を膨らませる。
    「むゆは生きてるけど、あれは確実に死んでるよ」
    「まじか」
    「まじだよ」
    四季凪は思わず両腕を擦る。
    「そんなの、分かるわけ無いよ」
    「そっか〜」
    「じゃあ、あれは幽霊なの?」
    「いんや。違う。幽霊にも成れない、出来損ないだよ。だから人間を連れて行くんだ」
    天ヶ瀬はそう力強く言った。
    「四季凪も気をつけなよ。お前以外の周りの奴らもあんな感じの引き付けやすいから」
    「…え、周りってセラ夫とか?」
    「うん。うちのぽんとかはぴもだよ」
    「え、あっ、そうなの」
    「そう。まだあっちに行きたくなかったら気をつけなよ」
    じゃあ、またね。そう言って天ヶ瀬は手を振りながら駅の方へ歩いていく。四季凪も手を振り返し、事務所に戻らなければと横断歩道へ向かって行った。



    ガチャ。と扉の開く音がして暇潰しに読んでいた雑誌からそちらの方へ目を向ける。
    「凪ちゃん、お帰り〜」
    右手を上げて振ると四季凪は驚いた顔をした。
    「うわっ、お前なんて体勢してるんだよ」
    「いーじゃん。誰も居ないんだし」
    ソファに寝っ転がってたセラフは起き上がって机の上に雑誌を置く。
    「てか、結構遅くなかった?コンビニ行ってたんでしょ?」
    「まぁ、色々ありましてね」
    四季凪が対面のソファに座る。その瞬間にふわりと、馴染みの無い匂いがしてセラフはあれ?と思う。
    「凪ちゃん、なんか、いつもと違う匂いしてね?」
    「え?」
    セラフに指摘されて四季凪は服の匂いを嗅ぎ、「あぁ」と納得していた。
    「さっき、天ヶ瀬に会ったんですよ」
    「むゆさんに?」
    「ええ。その時に匂いが移ったんでしょう」
    そう言うと四季凪はふと何かを思い出したのか少し考えこみ、セラフを見る。
    「そう、あなたも気をつけて下さいね」
    「え?気をつけるって何を?」
    「えっと…」
    四季凪は迷ったあとにこう言った。


    「この世のモノでは無いモノ…?」
    「…はぁ?」


    何言ってんの凪ちゃん。
    その言葉はセラフを多いに困惑させた。


    オーナーお手製の割引チケット


    「あ」
    横に居るセラフが小さく呟いたのを聞いて四季凪は横を見る。
    「どうしました?」
    「や、あれ四葉さんじゃね?」
    「あ、本当だ」
    指さした先に居たのは道端に座り込んでいる同期の黄色信号、海妹四葉だった。
    「何してんだろ」
    「さぁ」
    「四葉さん、驚かそうかな」
    「やめろ」
    はーい。と言いながらにやにやとするセラフはスキップをしながら海妹の元へ行き、四季凪はその後を小走りしながら追いかける。
    「よ〜つ〜は〜さん!」
    「にょっっわ!!」
    ポンッと肩に両手を置いたセラフに海妹は変な声を上げる。
    「うわ、びっ、セラダズ??」
    「すんげー変な声出すね」
    「驚いたもん!!!」
    心臓飛び出るかと思った〜。と言いながら海妹は立ち上がる。
    「あ!ママも居る」
    「居ますよ。セラ夫、驚かすなって言っただろ」
    「いや〜。ごめん。ごめん」
    「本当に驚いたんだからな!!」
    「あはは」
    「で、あなた何してたんですか?」
    「や〜、猫が居て」
    「「猫?」」
    「そー。そう」
    セラフと四季凪は顔を見合わせて辺りを見回す。だが、何処にも猫の影は無かった。
    「無いじゃん」
    「あー、あそこ。あそこに居たの」
    もう逃げちゃったか〜。と言う海妹が指さした方は建物と建物の間にある、影に沈み、奥が見えない道だった。そして、その道はなんとなく見覚えのある道だった。
    「うわ、暗いなこの道」
    「ねー」
    「…よっちゃんは何でここに居るんですか?」
    「ん?」
    「何かの帰り道とか?」
    「ぽんのお店探してたの」
    「寧さんの?」
    「そう。この前行ったときに忘れ物しちゃったかもしれなくて。でも見つからないんだ〜。なんでだろ〜」
    眉を下げ困った顔をして海妹は言う。
    「え、寧さんのお店って関西にあるんじゃないの?」
    「ああ、ぽんのお店は不思議なお店だから。色んな所から行けるんだよ」
    「へ〜」
    海妹は胸を張って言う。
    「やっぱり天ヶ瀬に教えてもらう方が良いのかなー」
    「むゆさん?」
    「天ヶ瀬は半人半妖だから」
    「…ああ」
    その海妹の言葉に四季凪は声をあげる。ここは、ついこの間天ヶ瀬と出会った場所だ。あの体験はよく分からなかったがそういえば、天ヶ瀬にお礼を言えてなかった。
    「ねぇ、あなた天ヶ瀬に会う機会ってある?」
    「天ヶ瀬ー?あるよ。今度遊びに行く」
    「じゃあ、これ渡してくれる?」
    海妹に差し出したのはとある三枚のチケットだった。
    「あ、それ雲雀の所の割引チケットじゃん」
    「え?そうなの?」
    「ええ。この間助けて貰いましてね。そのお礼です。三人でも行ってください」
    「わーありがとー」
    海妹は空にチケットを透かしてから二人を見る。
    「それじゃ海妹はぽんのお店探す続きするから」
    「分かった。気をつけて下さいねー」
    「寄り道するなよー。頑張ってねー」
    「うん。じゃ、またねー」
    ぶんぶんと元気よく手を振った海妹は先の交差点まで走って行った。
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