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    りき色

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    りき色

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    アカデミー時代
    凪ママ、みっそーの

    「あ。」
    スマホの画面にでかでかと書かれたGAME OVERの文字を見て呟く。時間を潰すために適当に見つけたこのゴルフのブラウザゲームは予想以上に苦戦して、これで7回目のゲームオーバーだった。
    このままもう一度プレイするか、また別のゲームを探すか。もうすぐで待ち合わせの相手が来る時間なので少し迷う。
    「何しとんの?」
    「うわっ」
    音もなく近づいてきた相手に驚き、スマホを落としそうになる。
    「驚かせるなよ。お前」
    「驚かせたつもりは無いよ。音消すのは癖なんだし。てか、凪ちゃんがゴルフゲーム?珍しいもんだね。面白いの?」
    注意するもさらっと躱されスマホを触られそうになる。
    「お前を待ってる間適当に見つけたんだよ。意外と難しいぞこれ」
    スマホの電源を切り、上着のポケットに入れる。
    「で?今日はどうしたんだ」
    「ああ、ちょっと大変なことになってさ。俺の家に来て欲しいんだ。」
    「大変なこと?」
    「おん」
    こいつはどんな小さな大変なことでも大きな大変なことでも同じテンションで報告してくる。なので見分けがつかない。
    「どんなことだ?」
    「それは俺の家に来てからのお楽しみだよ」
    この言葉で分かった。今日の大変なことは私にとってはくだらないことだ。
    「それじゃあ行くか」
    座っていたベンチから立ち上がりこいつの家の方へ二人して並んで歩き出す。
    「そういや凪ちゃん、俺さぁ、髪染めようと思ってんだよね」
    「髪?お前が?」
    「うん」
    私より高いこいつの頭を見る。少し青みがかった黒色の髪。
    「それでさぁ、俺何色が似合うと思うー?」
    「・・・そんぐらい自分で決めんさい」
    「うえー」
    寄りかかってきた左腕を押し返し答える。
    「というか、髪染めるのはデビューしてからの方がいいと思うが」
    「・・・あー、そうだね〜。デビューするまでに色決まんなかったら今、凪ちゃんが染めてる色にしよ」
    「それは止めろ」



    「いえ〜い。俺の家〜」
    角を曲がって公園を過ぎ、幾つかの横断歩道を渡ってこいつが住むマンションにつく。
    「凪ちゃん階段かエレベーターどっちが良い?」
    「どっちでも」
    「じゃあ階段ね」
    こいつが住んでるマンションに来るのは初めてでつい辺りを見回してしまう。外装は綺麗だが築年数はそれなりにしてそうだ。
    目の前を上がるのこいつに着いていき三階で足を止める。
    「俺の部屋、三階の角部屋なんよ」
    右に曲がって突き当たりに止まる。表札には油性ペンで使用したような名前が書かれていた。
    そこにはちゃんと“美園”と書かれている。
    「あった。あった。」
    鞄から鍵を取り出してガチャンとドアを開ける。
    「どうぞ〜俺の部屋へ〜」
    ぐいぐいと玄関に押し込まれるようにされ部屋に入るとまず目に入ってきたのは、リビングに繋がるであろう廊下にある、三箱のダンボール箱だった。
    「案外綺麗にしてるもんだな。」
    「案外ってなに?」
    「で、あのダンボール箱はなんですか?」
    「・・・」
    指をさして聞くとこいつは黙った。
    「まぁ、見て欲しいのはこれじゃなくてリビングにあってさ、まぁ、上がりなよ。ほらほら」
    呆れたような目をしてこいつをちらりと見たあとに靴を脱いで上がる。
    スタスタと廊下を歩いてリビングに繋がる扉を開ける。
    「・・・」
    「あ〜」
    リビングの惨状を見てじろっと呆れた目を向ける。
    「・・・何が入ってるんだ?これ」
    「カップラーメン。シーフード味」
    「何個入り?」
    「・・・20個」
    「何箱」
    「・・・」
    「何箱ですか?」
    「10箱」
    「はぁ」
    合わせて、200個。簡単な計算だ。
    リビングにはテレビや机。椅子などが置いてあるがそれ以外のスペースには殆どダンボール箱が置いてある。
    「いや〜、ブラックフライデーで安くなってたから1箱注文しようとして間違えて頼んだ・・・」
    「お前なぁ」
    再度、呆れた目を向けるが当の本人はケロッとしていた。
    「これ、私と貴方の二人で消費出来ませんよ。アカデミーにでも持って行ってよっちゃん辺りに配った方が良いと思いますよ」
    「いや〜重くてさ・・・凪ちゃん運ぶの手伝ってくんない?」
    台車も注文したんだ!今日中に届く。と焦るように言う美園に四季凪は改めてため息をついた。


    「仕方ない。手伝ってあげましょう」
    「やったー」
    「カフェのパンケーキな」
    「うげ」
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