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    omo641

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    omo641

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    自分の未来を知ってしまったとうやくんに振り回されるしょうとの話

    たこぴーみてたら出来てた お母さんが病院にいっちゃった。
     アイツのせいだ、アイツのせいで、お母さんは……!

    「しょうと」
    「っ、あ……お、……とう、や、にい?」

     呼ばれて振り返ったら、お母さんによく似た顔があって、お母さんって言いそうになってしまった。
     お母さんじゃない、とうや兄だ。初めて話す。
     少し緊張してつま先を見ていたら、頬にとうや兄の手が当たる。
     顔をあげられて、とうや兄がお母さんみたいに笑ってる。

    「かわいそう、かわいそうになぁ、お前はなぁんにも、悪くないのに」
    「う、」

     とうや兄の手が火傷したところを撫でた。包帯の上から、少し強く押さえられてちょっと痛い。

    「とぅ、や、兄……」
    「しょうと、ちょっと遊ぼっか」
    「えっ、いいの!?」

     いつもいつも、とうや兄たちと遊びたかった。
     アイツは居ない、だから、今だけのヒミツなのかな。

    「遊びたい!」
    「じゃあ、おいで」

     目の前に出されたとうや兄の手を握って、とうや兄の斜め後ろを歩く。
     どこに行くんだろう。庭でボール遊びだといいなぁ。

    「とうや兄、どこ行くの?」
    「瀬古杜岳」

     せことだけ? 
     どこだろう。
     歩くのが少し早いとうや兄ついていくために、頑張って早く歩く。息が早くなる。でも置いて行かれたくなくて、足を動かす。だんだん疲れて、足がからまって、前に転びそうになったらとうや兄が受け止めてくれた。

    「とうや兄、」
    「ついたよ」

     歩く事だけ頑張ってたから、いつの間にか知らない場所に居た。周りは木がいっぱいで、川と、変な木の人形があった。

    「とうや兄、ここ、」
    「お前にさ、教えておこうと思って」

     とうや兄、僕の話きいてくれない。
     でも、嫌われたくないから口を閉じる。

    「ふふ、あは、本当は、お母さんがおかしくなる前にちゃんとしたかったけど、思い出したの、一昨日だし。気がついたらもうこうなってたし。仕方ないよな」

     とうや兄、笑ってる。
     でも、なんだか泣いてるみたいに見える。涙を流してるわけじゃないのに、すごく悲しそう。

    「しょうと、可哀想な焦凍。何もかも押し付けられて、それでも前を目指せる、強い、ヒーロー」

     とうや兄の言っていることがよく分からない。

    「お前は将来すごいヒーローになるんだ。だから、最後にこれだけ教えておこうと思って。お前が生み出した凄い技」
    「わざ?」
    「そう、高校生になったお前が作り上げた必殺技」

     そう言って、とうや兄は上着を脱いで胸の前に手を当てた。
     それにしても、どうしてとうや兄の胸は真っ黒になっているんだろう。

    「昨日、試したらできたからさ、ほら、ちゃんと見てろよ」

     息を整えたとうや兄は、胸の前で✗の形に炎を出した。
     青い炎が紫になってすごくきれい。

    「俺は左右じゃなくて、中と外だから、内に氷を、外に炎を。交互に心臓を中心に発露させてる。お前は左右で同じことをすればいい。熱い血と冷たい血が巡って、氷を出すのも炎を出すのも安定する。火力になんか頼らなくて良くなる」
    「きれい……」
    「触ってみろ、熱くねぇから」

     とうや兄にさそわれて、胸の炎に指先を伸ばした。
     紫の炎の中でカツリと、指先に氷が当たった。

    「すごい、熱くない……」
    「お前もできるようになるよ、これだけ、教えたかったんだ。全部終わりにする前に」

     ふわりと炎が消える。
     指先がとうや兄の胸に当たって、ボロリと、黒いところが落ちた。

    「とうや兄、どうしてここ黒いの?」
    「結局、俺は失敗作でしかなかった。いくら中が冷えたって、外が耐えられないんじゃ意味がない」
    「とうや兄?」
     
     とうや兄の身体が離れる。

    「俺は、この山で燃えてヴィランになった」
    「え?」

     何を言っているのか、ぜんぜん分からない。
     とうや兄はヴィランじゃない。

    「みんなに迷惑かけて、お前にも……たくさん酷いことした……お前は何も悪くないのに」
    「酷いことなんか、されてないよ」
    「するんだよ。俺は」

     しないよ、とうや兄は。だって、こんなにすごいヒミツ教えてくれた。アイツとは違う。人を傷付ける炎じゃない。冷たい炎を教えてくれた。

    「なんで生まれてきたんだろう。俺なんか生まれてこなきゃよかったのに。この家に必要なのはお前だった。俺の存在なんか、邪魔で、不必要で、この世に存在してていいものじゃなかった。みんなを不幸にして、泣かせて、酷いことして。そこまでしても、お前には勝てなかった」
    「とうや、兄、わかんないよ、とうや兄がいてぼく、うれしいよ」

     とうや兄、そんな悲しいこと言わないでよ、なんで、生まれてこなきゃ良かったなんて言うの。

    「お前は、優しいな。最後まで、しょうとだけが俺を見てくれたから、俺と、向き合ってくれたから。だから、教えたかったんだこれを」

     とうや兄がまたばってんの炎を出す。ボロボロと黒い何かが落ちていく。とうや兄の指が黒くなってる。

     あれ、は、こげているの?

     まって、いやだ、とうや兄が焼けていく!

    「とうや兄!」
    「俺、やっと分かったんだ。俺が死ぬのが正しいんだ。俺が居ない世界が正しいんだ。だから、お父さんは俺を見ないんだ。俺が、俺がいたから、お父さんヒーローじゃなくなっちゃった」

     泣かないで、とうや兄、ぼくがアイツなんか、倒すから。そうしたら、笑ってくれる? 辛くなくなる?

    「ごめん、ごめんな、しょうと、酷いことして、ごめん」
    「とうや兄!!」

     手を伸ばしてるのに、とうや兄に届かない。熱い、指が焼けていく。熱くて、熱くて、前が見えない。

    「俺が居なくなれば、きっとみんな、もっと幸せになれる」

     とうや兄が居なくちゃ、意味ないよ。
     嫌だ、行かないで。とうや兄。
     なんて言ったら、とうや兄がぼくを見てくれるのか分かんない。とうや兄が何を好きなのか、分からない。

     目の前が真っ白になって、とうや兄が最後に泣きながら笑っているのが見えた。








     








    「俺らに協力すれば、お前の兄貴も生き返らせてやる。もう何年も寝たきりなんだろ? 俺らの仲間になってくれるなら、どうにかしてやる」

     目の前で白髪の不健康な男が無防備に立っている。
     コイツらはヴィランだ。

     分かってる、分かっている。
     緑谷、飯田、俺は、俺が、コイツらを止めなきゃいけないのに。いつだって氷で拘束できるのに、どうして、出来ねぇんだよ、動けよ俺、コイツらのせいで何人が傷ついた? 何人が泣いたと思って、

    「ヒーローは、お前の兄貴を助けてくれたのか?」

     助けてなんかくれなかった。
     ヒーローは、アイツは、辛うじて生きていた燈矢兄のお見舞いにすら行かない。体の治療だけして、目を覚まさせる為の事は何一つしなかった。
     だからって、俺がコイツらに協力なんかしたら、沢山の誰かが傷付く。

     分かって、いるのに、

    「どんな方法にも縋りたいんだろ?」
    「っ、」
     
     縋りたい。
     あの日、助けられなかった燈矢兄を助けたい。ずっとずっと、記憶の中で燈矢兄が泣いている。

    「安心しろ仲間になるなら、酷いことなんかしない」

     拒めない。
     あぁ、ごめん、ごめんな、みんな。
     雄英に入っても、燈矢兄を治せる人は居なかった。ヒーローの中に、燈矢兄の目を覚まさせてくれる人は居なかった。

     探してないところは、ヴィランの中だけなんだ。

     燈矢兄の好きなものが知りたい。
     燈矢兄の嫌いなものも知りたい。

     燈矢兄と話がしたい。

     あの日救えなかった燈矢兄を、救いたい。

     ごめん。
     ごめんなさい。

     ヒーローでいられなくて、ごめんなさい。

     
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