『なんでもない、特別な日』ふわりと優しい香りを纏ったトキヤががバスルームからでてきた。
1日の疲れを半身浴で落として、しっかりとボディケアを施してから部屋に戻るとすでに寝巻き姿で台本を読んでいた真斗が気付き、顔をあげた。
「一ノ瀬。さっぱりしたか?」
「はい。やはりラベンダーの入浴剤はリラックスできて、ん?……なにか、音が」
何気ない会話をしていると何かが音を立てていてる。辺りを見回すとマナーモードになったままの真斗のスマートフォンがローテーブルの上で着信を知らせていた。
「……事務所?」
画面を見た真斗は発信元を口にした。
夜に事務所から電話など何か急ぎの用だろうか?トキヤは時計にちらりと目を遣ると針は20時30分を過ぎている。
同じ気持ちなのか、真斗はトキヤと顔を見合わせながら電話に出た。
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