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    ni12_nnii12

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    ni12_nnii12

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    凛生くん…狼男、森の中にある牢獄の囚人
    万浬くん…牢獄の看守
    ぽんちゃん…子犬

    ハロウィンパロのぽんりおどこから入ってきたのか。
    凛生の足にじゃれついている知らない子犬を見て、凛生は首をかしげた。
    そういえば、壁に小さな穴があいている場所がある。
    凛生がくぐれる大きさではないため、放置されているのだが、この子犬ならくぐれそうだ。
    手を伸ばすと、待ってましたとばかりに頭をすり寄せてくる。

    「……怖くはないのか?」

    つぶやくと、動きを止めたその子犬は、じっと凛生を見つめる。
    薄暗い牢獄の中のわずかな光を集めて輝く瞳に恐怖の色はみえない。
    凛生が外にいたころは、森の動物たちは凛生を前に怯えたそぶりをするものが多かったのだが。

    森に入ったからか、多少乱れてはいるが毛艶は良く、どこかの飼い犬なのかもしれない。
    それならはやく帰ったほうが良い。
    穴のところまで子犬を連れていき、外にだした。

    久しぶりに感じた命の感触。
    代わりばえのしない牢獄生活の中で珍しいこともあるものだ。
    もう会うこともないだろうと思う凛生であったが、その子犬はそれから何度も凛生のもとにあらわれるようになったのだった。


    ♢♢♢♢


    ジャラッジャラッジャラッ
    ピョン♪ピョン♪ピョン♪

    「3、4!5…!よし、鎖飛び5回成功だ。かなりテンポよく出来るようになったな」
    「キャンキャン!」

    しっぽを振ってよってくる子犬を抱き締めた凛生はよしよしと頭を撫でる。
    凛生の両手首から伸びている鎖も一緒にジャラジャラと揺れた。
    この鎖も、まさか犬の芸に使われるとは思っていなかっただろう。

    「俺の教え方が上手いというのもあるだろうが、おまえはポテンシャルの塊だ。まだまだやれる」
    「キャン♪」

    嬉しそうな姿に表情を和らげていた凛生だったが、すっと引き締める。

    「……看守が来るな。今日はここまでだ。また……いや、ほんとうはこんなところには来ないほうがいいんだが……」


    ♢♢♢♢


    「ちょっと、うるさいよ?何してるの?」

    凛生の担当である小柄な看守が鉄格子の向こうがわから中を覗き込む。

    「少しからだを動かしていただけだ。こんなところにずっと繋がれたままじゃからだがなまる」
    「ふ~ん、そう。メスの狼でも連れ込んでるんじゃないかと思ったよ」
    「まさか、どうやってこの中に入れるっていうんだ?」
    「小動物なら入れそうな穴があいてるのは知ってるけどね」
    「そんなに小さな狼はいないだろう。いたとしても子どもだ」
    「子どもでも、囚人の仲間は捕らえないといけない」
    「……」
    「壁の穴、ずっとそのままだったけど申請が通ってなおせそうだよ。満月までには……間に合わないかも」
    「……小さいとはいえ、牢獄の穴をそのままにしておくとは、修繕する余裕もないんだな」
    「ほ~んと、嫌になっちゃうよ。薄給でさ」


    ♢♢♢♢


    「キミだね?最近勝手に入り込んでいるのは」

    子犬の前にあらわれた2本の足。
    行く手をふさいだ看守の万浬は、ぐっと腰を屈めて子犬に顔を近づけた。

    「逃げないんだ、人に慣れてる子なのかな?」

    逃げるどころか警戒心のなさそうな様子の子犬をみて万浬ははぁとため息をもらす。

    「こんなちっこい子でも捕まえろって?馬鹿馬鹿しい……キミさ、もうここには来ないほうが良いよ。まわりの森も危ないし……あいつだって大人しくしてるけどさ、食べられちゃうかもしれないよ?」

    きょとんとしている子犬を見て、万浬はがくっと肩を落とす。

    「……って、言ってもわからないか。まぁ穴がなくなればもう入ってはこれないだろうし……ほら、はやく帰りな。気をつけてね」


    ♢♢♢♢


    「ここに来るのはやめるんだ。おまえの大切な人たちも心配するだろう」

    どうしたの?というように子犬が立っている凛生を見上げる。
    片ひざをついて子犬と目線を近くした凛生は、言葉を続ける。

    「それに……そろそろ満月になる。満月の時は……何をしてしまうかわからない」

    子犬の頭に手をのせて、その柔らかな感触に目を細める。
    凛生が手のひらに、少しでも力をこめたら"こちらの姿"だったとしても潰してしまうのではないかという恐怖を感じる。

    「傷つけたくないんだ」

    「……んちゃーーーん!!!ぽんちゃーーーん!!!」

    風でざわめく森の中に綺麗に響く声がきこえる。

    「ほら、むかえがきている」
    「……キャン!」
    「っ……ふふ。おまえは暖かいな」

    とびついてきた子犬と顔をすりあわせる。

    「ぽんちゃん……?近くにいるの?」

    先ほどよりも近くで声が聞こえた。
    そろそろ日が暮れてくる。この森に夜ヒトが1人は危険だ。

    「俺の匂いがついてるから、気性が荒いやつらも出てこないだろう。ちゃんと家まで連れて帰るんだぞ」

    抱えていた子犬を床におろし、何か言いたげな瞳をみつめる。
    初めて出会った時と変わらない。この暗い場所に似合わない清らかな瞳。

    「行け!」

    キャン!と悲しげに一鳴きした子犬は外へ向かって走っていった。

    ジャラリと鎖を引きずってソファに腰かける。
    さっきまでそこにあった暖かな気配が遠ざかっていく。
    犬の芸に使われない鎖は、凛生をその場に縛り付けるだけのもので、両手両足の重みを感じながら凛生は目をとじた。

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