烏丸くんと鞍馬くん「玲司くん、僕にも愛嬌ってあると思う?」
「?」
共同生活をしているリビング。
唯臣と2人お茶を飲んでいると唯臣が手にしていたカップをテーブルに置き、口をひらいた。
「この前、奏くんが無表情のロボットを見て愛嬌があるって言っていたんだ。そういうところも可愛いって」
「……」
「僕は、それこそ奏くんのようにいつも笑顔で明るいものに愛嬌があるって言うんだと思っていたんだけど……」
「……奏に愛嬌……?まぁ、ある……か?」
「そのロボットに愛嬌があるのなら、僕にもあるのかな?」
「……俺が、どう思うか、という話か?」
「そうなるのかな?うん……そうだね、玲司くんはどう思う?」
唯臣にじっと見つめられる。
唯臣がなぜこのような質問をしてくるのか、意図がわからない。
ロボットを見て、奏が愛嬌があると言って……自分にも愛嬌があるか?という質問。
まさかとは思うが愛嬌がある、と言われたいのだろうか……?
愛嬌……愛嬌……?つまり、かわいらしいと思うかということか?
唯臣とは長い付き合いになってきたが、愛嬌があるかどうかという見方はしたことがなかった。
誰にたいしても物腰柔らかで、どこか浮世離れした雰囲気がある男。
だが……そう、今のように自分は愛嬌があるか?と真顔できいてくるようなところは愛嬌が、
「ある、と……言えないこともないんじゃないか?」
「ふぅん、そうなんだ」
ある、と答えることになんだか恥ずかしさを感じ曖昧な返答をしてしまったが、唯臣の返答はあっさりしたもので、長考するような話じゃなかったかと気まずくなり目をそらす。
「玲司くんは……」
数秒の沈黙ののち、こちらを見つめたままの唯臣がつぶやく。
「昔はよく笑っていたけど、今は違うよね」
「………」
「でも、表情がどうかは関係がなくて……玲司くんは……」
唯臣が何を考えていて何を言おうとしているのか、察してしまい居たたまれない気持ちになる。
「……」
「……」
「うぅん、よくわからないや」
「………そうか」
からだの力が抜ける。何を言われたとしてもどう反応していいのかわからなかっただろう。
少し考えてみるねと飲み終わったカップを持ち、なんだったんだ?と困惑している玲司をおいて、唯臣はリビングからでて行くのだった。