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    ni12_nnii12

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    書いたやつ 3つ『公園の池を見ている涼くんの話』

    見慣れた背中に声をかけると振り返った涼と目が合う。

    「礼音」
    「そろそろ晩ごはん出来るって、賢汰さんが言ってる」
    「そっか、呼びにきてくれたんだね」

    ありがとうと目を細めると1度向こう側に視線を戻し、そしてゆっくりとこちらに近付いてくる。
    向こう側、礼音が呼びかけるまで涼が視線を向けていた場所には池がある。
    シェアハウスの近くにある、公園の池。


    「最近、涼さんよく公園の池を見てますよね?あれ、何やってるんですか?かなり目立ってますけど」「あぁ、池ではなくカメを見ているらしい」「カメ?」「いるだろう、池にカメが」「はぁ、確かに、いたような…?」「音楽に興味があるらしくてな、色々話をしていると言っていた」「…は?」「ジャイロのライブに招待したいと相談されたんだが、公園のカメを勝手に連れ出すのは良くないだろうという話になって…」「ちょ、ちょっと……は?え、カメ…の話ですよね」「そうだ」「…………からかってます?」「涼にきいてみたらいいんじゃないか?」「…きくの怖いんですけど……」





    『賢汰さんと涼くんの話』

    「あ、ケンケン」

    久しぶりと声をかけられる。
    背が高い男だ。黒髪に金のメッシュ。1度みたら印象に残りそうな風貌の男だが、賢汰には覚えがなかった。

    「賢汰さん、知り合いですか?」
    「いや…」

    バンド練習のためスタジオに向かう道中。
    隣に居た礼音が小声で尋ねてくる。
    礼音も知らない男らしい。
    その間に近づいてきた金メッシュの男が賢汰の前で足を止める。
    男が声をかけたのは間違いなく自分のようだ。

    「…すみませんが、どなたかと勘違いをしていませんか?」
    「してないよ。ケンケンでしょ?」
    「………」

    近くで会話しても、やはりこの男に見覚えはなかったのだが「ケンケン」という呼び方に、ひとつ思い浮かぶことがあった。

    1ヶ月前、賢汰は公園で1人の少年と知り合った。
    名前はりょう、年齢は8歳で長期休暇中で家族とこちらに来ていると言っていた。
    夜の遅い時間に1人で空を見上げていて、気になって声をかけたのがきっかけ。
    りょうは賢汰が背負っていたベースに興味をもち、りょうがこちらに居る間ベースを教えることになった。

    「ケンケン」とはりょうがつけたあだ名。
    今までの人生で賢汰のことを「ケンケン」と呼んだのはりょうだけだ。

    「りょうは良いベーシストになれそうだな」
    「そう?」
    「あぁ、もう少し年が近ければバンドのメンバーにスカウトしていたかもしれない」
    「ケンケンとバンド…楽しそう。何歳ならケンケンのバンドに入ってもいいの?」
    「そうだな…那由多、ボーカルはまだ高校生だし同じ高校生か大学生か……」

    わかったと言ってりょうが借りていたベースを賢汰に返し、立ち上がる。

    「ケンケン、オレ今日で帰るんだ。ベース教えてくれてありがとう。またね」

    ひらと手をふってかけていくりょうを思いだす。あれから1ヶ月。

    「高校生になったらまたこようと思ってたんだけどこの時代に到着する宇宙船になかなか乗れなくて時間がかかっちゃった」 

    口にくわえていた棒つきの飴を手に持ち、気が抜ける笑みを浮かべる。
    その笑みは1ヶ月前公園で"友達"になった少年によく似ていた。
    礼音にはじめましてと挨拶し賢汰に視線を戻す。

    「曙涼。19歳だよ。ジャイロアクシアに入れてほしいな」




    『奏くんと涼くんの話』

    「あ、遥くん」
    「え、どこ!?」
    「あそこの…」
    「待って!言わないで自分で見つけるから!」

    ミニチュアのような町をうつしていたスマホをしまい、広がる町並みを見下ろす。
    ビル、家、車、人……って人なんてミジンコぐらいにしか見えないんだけど!?

    「う~~ん」

    ぐっと目をこらして見渡すが、奏と涼が居る天望デッキは地上から300m以上離れており、ここから地上に居る人間ひとりを見つけられるわけがない。
    ここから自分で見つける!なんてばからしいことを言ってしまった。

    「見つけられた?」
    「いや、無理に決まってるじゃん!ほんとにここから見えてるわけ!?」
    「うん」

    がくっとからだから力が抜ける。
    ふつうはありえないと笑うところだが、涼は冗談を言っている雰囲気ではない。
    涼のこういった言動にいちいち反応してもこちらが疲れるだけ、「へぇ~…」とだけ返す。

    となりの自称宇宙人には見えているらしい兄貴は今何をしているんだろう。
    もし本当に見えているのなら、聞いたら教えてくれるのだろうか?
    一瞬ためしに聞いてみようかと思ったが、自分の知らない兄貴の様子を他人から聞くのはなんだかくやしい気がしてやめた。

    あ~~あ俺が兄貴を見つけられないなんて…。
    目の前に広がる景色のどこかに兄貴が居ると思ったら会いたくなってきた。

    「……宇宙人ってみんなそんなに目が良いの?」

    走ってる車を目で追いながら空を見ている涼にたずねる。

    「どうだろう、色んな宇宙人がいるから」
    「ふ~ん」

    遠くにいる兄貴をそんなに簡単に見つけられるなら宇宙人も悪くないかも、なんて

    「あ、でも地球人?の中では兄貴のこと見つけるの、俺が一番うまいから!」

    そうだねと涼が目を細める。
    あ~~その顔むかつくからやめて!

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