彼女とのキスはいつも紫色の匂いがする。
「ふ……ん……っ」
小柄な体は膝の上に乗せてもまだこちらが見下ろすけど、立っているよりくっついてる感じがして好きだ。
自分の腕の中で小動物みたいに震えるのも、思わず笑顔になってしまうくらい可愛い。
片腕で頑張ってすがってくる背中をぎゅっと抱き寄せて、気まぐれに髪に隠れたうなじをくすぐると舌の付け根が気持ちよさげに震えた。
「はふ……」
甘いキスに甘い吐息。
そして——紫色の匂い。
グレッグが愛する銘柄は煙が重く、味もひと吸いで舌がしびれ眩暈がしそうなほど濃厚な代物だった。そんなものを日頃から、戦闘中も手放せないせいで彼女には紫色の匂いがしみついている。
ゆらゆら揺れて、夢のように霧散する紫煙の匂いが。
「禁煙してみる?」
全く思っていないことを思いつきだけで言ってみた。
「ぁ……え、臭いか?」
キスでとろけたままでもちゃんと応えようとしてくれるところ、ほんっと可愛い。
「ううん。ごめんね、今のは冗談。グレッグの匂い大好きだよ」
そう言って肩を抱き寄せて前髪に口付ける。
ただのヤニ灰ならこんなに好きにならないよ。グレッグ、貴女の香りだから、こんなに欲しくてたまらないんだ。
「キスしよ」
もっと。
もっと苦味を頂戴。
甘ったるくとろける貴女から、重くむせる苦味を頂戴。