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    べにたま

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    ⚠️捏造二次創作注意。
    怪盗🐣を中心に、なんとなく漫画の最終シーズン冒頭みたいな話。
    #REDあたなる謎解き #あたなるオリ曲2nd

    #あたなるオリ曲2nd

    Last:Mission カチッ、と壁掛け時計が五時十五分を指す、と同時に星乃歌は「っしゃあ!」とデスクから立ち上がった。
    「定時っすね お疲れ様っす お先失礼しまっす」
    「……今日はやけに元気だな」
     テキパキと荷物を片付ける星乃歌に、隣の席から二代目こと夕悠夜が怪訝そうに声を掛ける。
    「そ、そうっすか? 俺はいっつもこんな感じっすよ!」
    「お前が騒がしいのはいつものことだが……。何か用事でもあるのか」
    「ぃやっ! 用事っつかその、なんて言うんすか、あのですね……」
    「……別に、無理に詮索するつもりはない。急ぐんだろう、引き留めて悪かったな」
     お疲れ、と片手をヒラっと振られ、星乃歌は一瞬迷ってから勢いよく頭を下げて警察署を後にした。


    「っと、裏口はここか……」
     指定されたビルの裏手、見逃しかけた薄汚れたドアを開けて中へ入る。蝶番が見かけに相応しい錆びついた音を立て、それを聞いたのか警備室らしき窓から制服姿の中年男性が顔を覗かせる。
    「あ、すんません、俺……」
     と星乃歌は慌てて警察手帳を取り出そうとポケットを探る。しかし警備員はそれを待たず、星乃歌の顔を一瞥して警備室の奥へと引っ込んでいった。
    「え、あのぉ……? 入ります、よぉ……?」
     恐る恐る声を掛け、返事がないので星乃歌は仕方なく沈黙を許可の代わりとして階段に足をかけた。
     人気のないビル内に星乃歌の靴音がやけに響く。屋上までを一息に駆け上がり、手を掛けたドアノブに鍵はかかっていなかった。
    「遅くなりました! 星乃歌ですッ」
     挨拶とともに屋上へ現れた星乃歌に、その場にいた全員の視線が集まる。その内の一人、古めかしい鹿撃ち帽を被った男が一歩前へ進み出た。
    「君は確か、夕悠夜さんの……」
    「っす! お久しぶりです、探偵さん! それに情報屋さんと、占い師さんも! 今日は助手くんは一緒じゃないんすね。ていうか、俺てっきり例のことで何かわかったから呼ばれたんだと思ってたんすけど、全員探偵さんが集めたんすか?」
    「……やっぱり君も、“探偵おれ”に呼ばれたんだね」
    「? それってどういう……」
    「相変わらず元気やねぇ」
     と、星乃歌の疑問を遮って、背後の暗闇から声がした。よく聞き覚えのあるその声にバッと振り返った星乃歌は大きく目を見開いた。
    「なん、で、アンタがここにいるんすか、神辰さん……!」
     そう詰め寄った星乃歌を、けれど神辰はヒラリと躱して「ちょっと失礼」と煙草に火をつける。
    「積もる話はお互いぎょーさんあるやろうけどもや、とりあえず一旦はあちらさんの話を聞いたってくれるか。感動の再会はその後や」
    「……後で絶対っすからね」
     神辰に促され渋々頷いた星乃歌に、「じゃあ、俺から」としぐれは話を続ける。
    「まず、君が受け取ったと思う手紙だけど、俺はそんな手紙は出していない。だけど同じような手紙やメールを、りゅーじさんも彩音さんも受け取ったらしい」
    「メールの差出人に不審な点はなかった。……少なくとも、俺とりゅーこが確認した限りは」
     しぐれの台詞を、眉間に皺を寄せた小日向が補足する。その隣で彩音は我関せずとばかりに小さく欠伸を溢した。
    「つまり、誰かが探偵さんの名前を使って俺たちを呼び出したってこと? でもいったい誰が……」
    「そう、そこなんだ。情報屋の二人さえ欺いてこんなことができる人物……。俺とそっちの、怪盗神辰には当たり前だけど探偵おれ以外から手紙が届いた。その差出人は……」
    「あれぇ、もう全員揃ってんの?」
     突然、場違いに明るい声がしぐれの言葉を遮った。驚いた全員が向けた目の先、屋上への入り口の前に金髪の、ジャージを羽織った少年がニヤニヤ笑いで立っていた。
    「いやー、遅くなってごめんねー? って思ったけど時間ちょうどじゃん! じゃあ俺悪くないじゃん! 遅刻魔がいないと助かるー。みんな真面目だねぇ、感心感心」
    「え、っと、君はまさか……いやでも、そんなこと……」
    「まさか、何? 探偵さん。もっとハッキリ言ってくんないと」
    「えっ! 探偵さんはこのガキ知ってるんすか なんなんすかこのガキ」
    「アハハッ、そっちの刑事さんは失礼だなぁ! そんなに違う? じゃあせっかくだからクイズにしよう!  占い師さんとは初対面だけど、どう? 俺はいったい何者でしょーか?」
    「……それは、君の何を当てれば正解になるのかな」
    「……フフッ、確かに? さすがに難しいすぎるかぁ。じゃあそうだなぁ、こういうのはどう、いでッ!」
    「ええ加減にせぇ」
     調子良く軽やかに並べ立てた少年の頭を後ろから神辰が叩いて止める。興を削がれた少年は不満そうに唇を尖らせた。
    「いったいなぁ、暴力反対! 頭悪くなったらどーすんのさ!」
    「それは元々悪いから大丈夫。そっちの悪ノリが過ぎんのが悪い。悪い癖やぞ、イエローセラフ」
    「悪い悪い言いすぎじゃない」
    「……え、神辰さん、今なんて……?」
     キャンキャンと少年に噛みつかれている神辰の台詞に星乃歌が聞きなおす。神辰はそれにわざとらしく溜息を吐き、片手で少年を示して言う。
    「これ、怪盗。イエローセラフ。オーケー?」
    「これって」
    「えぇぇぇぇ」
     少年が言いかけた不満を星乃歌の大声が掻き消した。屋上に響いた余韻も振り払うように、星乃歌は「いや嘘でしょ」ともう一度声を上げる。
    「だってイエローセラフってあれでしょ 絶っっ対違うって こんなんじゃないっすよ」
    「めちゃくちゃ言うじゃん。さすがに傷つくかも」
    「ならはよシャンとせぇ」
    「えー、仕方ないなぁ」
     神辰にせっつかれた少年はそう呟いてカツン、と踵を鳴らし、ふっ、と笑みの種類を変えた。
    「……さて、紳士諸君。今宵は招待に応じていただき、まことに感謝いたします。探偵、怪盗、情報屋と、日頃は立場の違う我々ですが、この場は無礼講。どうぞ私――怪盗イエローセラフとも親交を深めてもらえれば幸いです」
    「……い、」
    「い?」
    「イエローセラフだ」
    「……刑事さん、ちょっと素直すぎない?」
     心配になってきた、と呆れた顔をしたイエローセラフに、「そうっすか?」と星乃歌は首を傾げる。
    「誰でもびっくりすると思うけどなぁ。情報屋さんたちもびっくりしたっすよね?」
    「……いや、俺は元々知っていたから」
    「じゃあ知らなかったら? 知らなかったら気づかなかったし、びっくりした?」
    「しない。この場で気づいていなかったのはアンタくらいだ」
    「でも情報屋さんも、嘘のメールには騙されたんすよね?」
    「……」
    「……ひとついいか、イエローセラフ」
     小日向が黙り込んだのと入れ替わりに、しぐれがイエローセラフに話しかける。返事の代わりにニィッと細められた目に促され、しぐれは険しい顔で問いを投げる。
    「まず、俺たちをここに呼んだのはお前なんだな」
    「あぁ、そうだよ。君への招待状にはきちんと名前を書いておいただろう?」
    「……目的はなんだ?」
    「目的、と言われると、さっき言ったことがほとんど全部なんだけど。少し言葉が遠回しすぎたかな。簡単に言うと……君たちに協力してほしいんだ」
    「断る、と言ったら?」
    「おや、話も聞かずに?」
     二人の間に下りた一瞬の、駆け引きのような沈黙の後、先にしぐれが視線を逸らして「……わかった」と吐き捨てた。
    「罠かもしれないと思いながら、そっちの目的を知るためにここに来たんだ。自分から話してくれるなら都合がいい。ただし、まだ聞くだけだ。協力云々は聞いてから決める」
    「もちろんそれで構わないよ。俺の話を聞いたら君は、協力せざるを得なくなるからね」
     攻撃的なしぐれの視線を不遜に笑って軽く受け止め、イエローセラフはふわりと夜風にマントを翻す。そうして怪盗は舞台に上がった役者のごとく観客の注目を一身に集め、朗と声を響かせた。
    「俺にはひとつ、大きな目的がある。そいつを手に入れるために、今回は君たちの協力が必要だ。力を貸してもらえるのなら、その礼として必ずや各々の望むものを差し上げよう。まず情報屋の二人には、相応しいだけの報酬を」
    「上限は」
    「ない、と考えてもらって結構」
    「ほぅ? 口約束にはさせないからな」
    「僕は、報酬とかはどうでもいいかな。ただどの占い結果も【太陽】……つまり君を向いているから協力はするよ」
    「相変わらずだね、占い師。じゃあ次に刑事さん、だけれど、君への報酬は先払いという形になるね」
    「へっ、それってどういう……」
     急に水を向けられて戸惑った星乃歌に、イエローセラフは片腕を大袈裟に振って神辰を指す。
    「君の望むもの、これ以上はないと思うけれど?」
    「あぁ……なるほど……」
    「気に入っていただけたようで何より。……さて、最後に探偵しぐれなお、そして怪盗神辰J威弦Ⅲ世。俺の目的は君たち二人が求めるモノとほとんど同じモノだ。俺に協力せざるを得ない、と言ったのはそういう意味だね」
    「御託はいい。さっさとその目的とやらを言え」
    「御託は大事だよ。怪盗にとっても、探偵にとってもね」
     そう言ってイエローセラフが星のない空を仰ぐ。金の瞳に月明かりが反射して、爛、と輝いた。
    「――怪盗リコリス。それが今回の、怪盗イエローセラフの標的だ」



    ……………………

    「始まったみたいだね」
     某所、某時刻。胸元の彼岸花を弄りながら、怪盗リコリスは不意にそう呟いた。
    「あちらは随分と大掛かりなショーを計画しているようだ。それならこちらも、それ相応の準備をしなくては失礼にあたるな」
     その独り言は虚空に消え、それを聞く者は誰もいない。
    「楽しみだなぁ。あぁ、楽しみだ。暫くはツマラナイ思いをしなくて済みそうだ」
     ぐちゃり、と。足元で何かが潰れる。リコリスは靴裏の赤黒い汚れを真っ白なハンカチで丁寧に拭き取り、薄っすらと暗く微笑んだ。
    「君の活躍を期待しているよ……探偵くん?」
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    akira_luce

    DONE七夕の時にあげた丹穹。

    星核の力を使い果たし機能を停止(眠りについた)した穹。そんな穹を救うために丹恒は数多の星に足を運び彼を救う方法を探した。
    しかしどれだけ経っても救う手立ては見つからない。時間の流れは残酷で、丹恒の記憶の中から少しづつ穹の声がこぼれ落ちていく。
    遂に穹の声が思い出せなくなった頃、ある星で条件が整った特別な日に願い事をすると願いが叶うという伝承を聞いた丹恒は、その星の人々から笹を譲り受け目覚めぬ穹の傍に飾ることにした。その日が来るまで短冊に願いを込めていく丹恒。
    そしてその日は来た。流星群とその星では百年ぶりの晴天の七夕。星々の逢瀬が叶う日。

    ───声が聞きたい。名前を呼んで欲しい。目覚めて欲しい。……叶うなら、また一緒に旅をしたい。

    ささやかな祈りのような願いを胸に秘めた丹恒の瞳から涙がこぼれ、穹の頬の落ちる。
    その時、穹の瞼が震えゆっくりと開かれていくのを丹恒は見た。
    一番星のように煌めく金色が丹恒を見つめると、丹恒の瞳から涙が溢れる。
    それは悲しみからではなく大切な人に再び逢えたことへの喜びの涙だった。
    「丹恒」と名前を呼ぶ声が心に染み込んでいく。温かく、懐かしく、愛おしい声…。


    ずっと聞こえなかった記憶の中の声も、今は鮮明に聴こえる。
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