ひと夏の こんな酷暑でもなければ、どこぞ遊び歩くことができたものを。
などと、あまり心にも無いことを言うものでもないかと体を捩る。じっとり汗ばんで張り付いたTシャツが気持ち悪かった。
暗がりの中で見失ったエアコンのリモコンを探る。カーテンを開ければいいのかもしれないが、それすら億劫だった。
ピピッ。ゴンッ。
「いった……」
リモコンを叩いた拍子に、ベッド横のテーブルに放り投げていたスマホが額を掠める。画面にはいくつかの通知を掲げていた。
主より早起きな彼の申し出を霞んだ目でなぞる。
「……ん?」
販促と自動通知の合間に、見慣れた名前を捉えた。
『十分後。よろしく。』
眠たい頭で考える。
約束とか、一方通行に投げられた言葉とか。彼との時間を思い返す。
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