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    gryclwn_66

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    gryclwn_66

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    今何月か知ってる?

    大遅刻バレンタインエオケイジャ。
    いろんな光転くんたちお借りしました、あざます(事後報告)

    誰か、蘇生お願いします。エオルゼアは霊1月になると甘い雰囲気に包まれる。各都市にあふれる赤いハートモチーフのモニュメントやどこからともなく漂ってくる甘いチョコレートの気配。それに加えて今年は真っ赤な薔薇が街中にあふれて人々はその上品な香りに酔いしれていた。この空気の中では堅物の男性も普段素直になれない女性もみんなが雰囲気にのまれたように愛をささやきだす。いつから始まったのか、何の意味があるのか、あまり詳しく聞いたことはないが、それがヴァレンティオンデーと呼ばれるイベントだった。
    幼い頃からエオルゼアで過ごしてきた身としてはその雰囲気自体嫌いじゃなかった。普段は都市近くの拠点を転々としている身だったが、こういったイベントのときは珍しく身ぎれいにした大きな兄たちが各都市に連れて行ってくれた。ヴァレンティオンデーだけに限らずイベントの雰囲気は楽しいし、甘いチョコレートをたくさん食べられる。まだ子供だった自分にとってはその程度の認識だった。
    そして現在、冒険者として独り立ちして信頼できる仲間も、愛する人もできた。恋人であるジャクリーンと過ごすヴァレンティオンデーのためにチョコレートや花束の準備も、二人の家だってヴァレンティオンデー仕様に模様替えだってした。普段から少しだけ自分に自信のない彼女のために言葉にも行動にも尽くしているつもりだが、イベントにかこつけていつも以上に甘い時間を過ごす予定だった。
    つもり、だったのだ。
    「ジャクリーンが帰ってこない・・・」
    カンパニーハウスのテラス席に突っ伏し、悲嘆にに暮れている傍らで白い毛並みのヴィエラ、アーサーはそんな僕に目もくれず爪の手入れに勤しんでいる。
    「・・・・・・ジャクリーンが、かえって、こない!」
    もう一度、今度は先ほどよりも大きな声で、アーサーに向かってそう言うと彼はようやく目線だけこちらに向けた。
    「何度も聞いたし何度も言ったけど、ジャクリーンは任務だって言ったのは君でしょ、ケイト。言っておくけど僕だって暇じゃないんだよ」
    「の割にはずっとここにいるよね」
    「・・・・・・帰る」
    「わー!ごめん、ごめんってば!!」
    立ち上がって今にもテレポートしそうなアーサーの腰にしがみつき行動を阻止する。アーサーからは虫をみるような視線が向けられているのを感じるが、そんなことより一人残される寂しさの方が優先だ。
    ピロンピロン!
    アーサーが僕を引き剥がすために手を伸ばしたそのときだった。アーサーの長い耳元でリンクパールが軽快な音を鳴らした。その瞬間、アーサーの手が素早く耳元へ当てられ通信へ応答する。
    「・・・・・・うん、・・・別に、暇してたところ・・・・・・わかった、それじゃ家で待ってる・・・・・・後でね」
    しかめられていた表情がほどけ、心なしか声も先ほどまでより弾んでいるような気さえする。彼をそんな風にしてしまう人物なんて一人しかいない。仕方ないか、としがみついていた腕から力を抜くよりも早くリンクパールから離れた腕がそのまま僕の後襟を掴んだ。
    「ぐえっ」
    突然締まる首元に反射的にほどいた腕に、べりっと力任せにアーサーの腰から体を剥がされる。鍛えているとはいえヴィエラが片手でアウラの体を引き離したという事実に僕が驚いたまま尻もちをついていると、アーサーはそれはそれはきれいな笑顔で僕を見下ろした。
    「用事ができたからこれで失礼するよ」
    その言葉を言い終わるか終わらないうちに、アーサーの姿はエーテルの光となってその場から消えてしまった。

    いつまでもカンパニーハウスで尻餅をついているわけにはいかず、肩を落としながらエンピレアムの自宅へと移動する。ラベンダーベッドの明るい雰囲気と陽気な音楽とは対照に、雪のちらつくエンピレアムの冷たい空気がひとりぼっちの僕を慰めてくれるようだ。家の前で軽く体の汚れや雪を払ってドアノブに手をかける。扉を開くとエーテルを利用した暖炉で温められた空気とともに甘い香りが鼻をくすぐった。その正体は部屋の真ん中に積み上げられたチョコレートの山。ヴァレンティオンデーのイベントに合わせてジャクリーンのため、巨大なチョコレートケーキから、ちょっと大人なお酒を使ったもの、それらに合うワインや花束まで、その日を迎えるにあたっての準備は自分で言うのもなんだが完璧だと言っても過言ではない。
    ただひとつ、その本人が長期の任務に出たまま帰ってこないことを除けば。
    愛しの彼女の顔を思い浮かべながら地下へと向かうために足を進めようとしたところで僕の角にかすかに水が勢いよく流れるような音が振動となって響いてきた。聞き覚えのあるその音は地下に設置したバスルームのシャワーの音だ。朝自分が使った後確かに止めたはずのそれを誰かが使っている。確かに友人や知り合いを家に招くことはあるが、地下のシャワールームを使う人物なんて自分以外には一人しかいない。
    「ジャクリーン?帰ってきてるの?」
    はやる気持ちのままに階段を駆け下り、シャワールームへと向かえばピンクのシャワーカーテンの向こうで動く影が見えた。
    念の為、一応念の為言い訳しておくと、その時の僕の頭の中は、久々に会えるジャクリーンのことで一杯だっただけで、別にそんな下心なんてものはなかった。
    だから勢いよくシャワーカーテンを開けた先にいたジャクリーンと目が合って、おかえりと抱きつこうとした僕の視界が一瞬で白く覆われたときも、何が起きたのかわからなかった。
    「〜〜〜ッ!ばか!すけべ!へんたい!」
    そんな可愛らしい掛け声とともに感じる腹部への衝撃。
    「ぐっ?!」
    一瞬遠くなった意識をなんとか手繰り寄せ、よろよろとよろけた僕の前でシャッとカーテンが勢いよく閉められる音が聞こえた。
    「ジャ、ジャクリ「次開けたら鱗で爪とぎの刑だから」ハ、ハイ……」
    視界を覆っていたバスタオルを引っ剥がしながら再びカーテンで分かたれてしまった愛しい人に声を掛ける。
    「ごめんね、ジャクリーン……嬉しくてつい……」
    「うるさいすけべ」
    「そんなつもりはなかったんだって……」
    「……ほんとは?」
    「もっとちゃんと見とけば良かった」
    「ばか!!!」
    カーテンに映し出される耳の影の動きからぷりぷりと怒っている様子が手に取るように分かる。自然と口角が上がりそうになるが、そんな姿が可愛すぎてここで笑おうものなら、本当に爪とぎの刑に処されるので我慢する。
    それにしても視界を奪ってからの一撃は見事だった。今度オリバーに教えて……いや状況を詳しく聞きだされて殺されるからやめとこう。

    手持ち無沙汰に手元のバスタオルを畳みながらしばらく待っているとキュッとシャワーを止める音が聞こえた。そろそろ出てくるかなと待っていても、ジャクリーンはカーテンの向こうでうろうろとしていて一向に出てこない。湯冷めして風邪を引かないか心配になってきたところでカーテンがゆれ、ジャクリーンの顔だけがひょっこりと出てきた。前髪はまだ水滴が垂れていて、ジャクリーンは僕の姿を見るときゅっと顔をしかめる。
    「…………い」
    「ん?」
    「タオル、それ、ちょうだい」
    それ、と指さされたのは僕が持っていたバスタオル。なんだ、自分が使うやつ投げちゃったのか、おっちょこちょいだなぁなんて思いながら手渡そうとしたところで僕の角に悪魔、いや天使が囁いた。
    「ちょっと!」
    ジャクリーンの手にタオルが触れる寸前、ひょいと取り上げたそれを再び広げばっと目の前に広げる。再び視界が白に覆われる中、その向こうからジャクリーンの戸惑う声が聞こえた。
    「……なにしてるの」
    「何って、ほら!僕が拭いてあげるよ!」
    「いいから早くちょうだい」
    「大丈夫だって、僕から見えてないし!」
    「……」
    ひらひらと目の前のタオルを揺らす。見えてないのは本当だ。
    「……絶ッ対見ないでよね!」
    ジャクリーンがそう念を押して数秒後、シャッと今度は控えめにカーテンが開く音が聞こえた。そしてぺたぺたと裸足で床を歩く音。
    あと5歩……3歩…1歩…
    ジャクリーンの気配を探りながら彼女が手の届く範囲まで着た瞬間、僕は持っていたタオルごと彼女を包み込んだ。
    きゃっという可愛らしい悲鳴とともに白いタオルに包み込まれるジャクリーン。
    そのまま軽くタオルで水気をとってあげれば、しばらくもぞもぞともがいたあと、ぷはっと顔だけ出した彼女の耳がぴるぴるっと水をはじく。
    「やっと捕まえた」
    そう言って抱き寄せると、近づいた顔に驚いたのかジャクリーンは目を丸くしてそしてすぐに顔を赤くする。
    「ちょっと、濡れちゃうから!」
    「いいよ、どうせ後で僕もシャワー浴びようと思ってたし」
    久々のぬくもりに大きく息を吸い込めば石鹸と柔軟剤の香りとジャクリーン自身の甘い匂いが肺いっぱいに広がる。
    甘く甘く痺れるようなその香り、きっと僕は永遠に忘れることなんてないんだろう。
    放さないよう、もう一度ぎゅっと抱きしめて
    「……おかえり、ジャクリーン」
    「……ただいま、ケイト」
    「しばらくゆっくりできる?」
    「……明日、ルディス達と任務の約束ある」
    「え!?今日戻ったばかりなのに!?」
    大げさに肩を落としてジャクリーンの肩に顔をうずめて見せれば、ジャクリーンも流石に可哀そうだと思ってくれたのか、ちょっとぎこちない手で頭を撫でてくれた。うれしい。
    「……そうだ!1階のテーブルみた?」
    「うん、チョコレートたくさんあったね……ケイトが用意したの?」
    「そう、ジャクリーンに!ヴァレンティオンデーのプレゼント」
    「いつ帰ってくるかもわからないのに……?」
    「でも帰ってきてくれたでしょ?」
    「……うん」
    「ちょうど庭に植えてた果物も収穫したばかりだからチョコレートフォンデュ?っていうのもできるよ!」
    「……ねぇ」
    「ケーキはちょっとお酒入ってるから、無理そうだったら食べなくてもいいからね」
    「ちょっと」
    「あと今年は薔薇の花を贈るのが流行りみたいでさ、ちゃんと用意し」
    「待って!なんでしれっと服脱いでるの!」
    「え?」
    ジャクリーンを片手で抱きしめながらもう片方の手で器用に自分の服を脱ぐ。角の性質上、前開きの装備ばかり着てるとこういう時便利なんだよね。Tシャツみたいに上から被るやつは角が引っかかって脱ぎ着しにくいのはアウラ共通の悩みだと思う。
    「いやほら、僕服濡れちゃったし、ジャクリーンもせっかく温まったのに冷めちゃったでしょ?もっかい一緒に入ろ!」
    最後のアンダーシャツを脱ぎ捨てその辺に放り投げる。そのまま逃げようとじたばた暴れるジャクリーンを抱えなおし、靴を脱ぎながらシャワールームへと足を進める。
    「おろして!ばか!へんたい!すけべでぃあん!」
    ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえたのは無視。
    「……だって、ずっと帰ってくるの待ってたのに……すぐ他の男と任務に行くなんてさ……」
    「う……」
    びたんびたんと僕の足をはたいていた尻尾がしお…と力なく垂れさがる。
    「……どうしても嫌ならやめるけど……だめ?」
    彼女の青い瞳をじっと見つめる。僕に罵声を浴びせようとしていた小さな口がぱくぱくと言葉に詰まり、わなわなと震えていた顔がだんだんうつむく。
    そして肩まで真っ赤にしたジャクリーンが小さくコクリと頷いたのを確認して、僕はシャワーカーテンを閉めた。


    「――というわけで、お疲れのジャクリーンの代わりに僕が来てあげたよ、いいよねルディス」
    「いや、別に俺はいいけどよ……」
    「そもそも長期任務で疲れてるジャクリーンをこれ以上働かせようだなんて、君もずいぶんとひどい男だ」
    「言っておくが言い出したのは俺じゃねえからな」
    翌日、ベッドから起き上がれないジャクリーンの代わりにルディスたちとの任務に行くため、僕は再びカンパニーハウスへと足を運んだ。
    「えっと、ヒーラーがいるんだっけ?他は誰がくるの?」
    「ルーファスとラヴクラフトが来る予定だ」
    「じゃあ、僕賢者で行こうかな」
    「お前、賢者やるとバリアだけ投げて回復よこさねぇのどうにかしろよ」
    「カルディア張ってるし、ルディスならほら肩回せばいいじゃん」
    「おいこら」
    二人を待つ間、テラス席の椅子に座りルディスと会話をしていると、ルディスがふと笑みをこぼす。
    「でもよかったじゃねぇか、バレンティオンデー、ずっと準備してたもんな」
    「ククルビーンから加工するのすごく大変だったけど、頑張ってよかった…!おかげですっごく甘々な時間を過ごせたよ」
    「……へぇ」
    「まぁでも帰ったらきっと鱗で爪とぎの刑だね。朝家を出た時もすごく怒ってたし」
    「そんなにジャクリーンを怒らせたのかい?」
    「まぁ、怒らせたというか無理をさせ、す、ぎ……」
    ここで僕は人生最大の判断ミスをした。背後に立つ人物を認識した瞬間、僕は振り返るのではなくすぐさまその場から逃げ去るべきだったんだ。
    どんな高難易度クエストよりも難しい一瞬の判断。それを失敗すれば待つのはすなわち死のみ。
    振り返った僕の目の前にいたのは、死神の鎌を持ったリーパー、ではなく、にっこりとほほ笑むオリバーだった。
    「どう、して」
    かろうじて絞り出した僕の言葉に、オリバーの隣でいつもより目を細めて笑みを浮かべたヴィヴィアンが答えた。
    「残念ながら(メタ的な理由で)ルーファスがこれなくなってね、代わりに呼んでおいたんだ……兄妹一緒の方が喜ぶと思って、ね?」
    「ありがとう、ヴィヴィアン……僕もね、久々にジャクリーンに会えるとそう思ってたんだ」
    オリバーが一歩足を踏み出す。その途端ずしん、と地が揺れた気がした。
    「それなのに、誰かが彼女を怒らせたみたいだ……」
    視線がルディスに向けられ、ルディスは苦笑いしながら肩をすくめる。
    「説明してもらおうか?ケイト」

    誰か、蘇生お願いします。





    おまけ
    「ジャクリーンずいぶんと長い任務だったけど何してたの?」
    「んー、狩り?」
    「狩り」
    「でっかいカエルとか」
    「でっかいカエル」
    「でっかい熊とか」
    「でっかい熊」
    「あとでかくて赤くなったエンキドゥみたいなのとか」
    「でかくて赤くなったエンキドゥ?!」
    「それを笛で」
    「笛!?」
    「こう(殴る仕草)」
    「こう!?」
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