神様のひつじ『神様のひつじ』
窓から差し込む月明かりはほの白く、部屋の主の穏やかな横顔を淡くやわらかく照らす。
ときに見惚れるほどにすべらかな彼の人のすっきりとした輪郭を、大いなる厄災の光は今宵もひどく艶やかに彩っていた。
「ほら、これ。この前、西のバザールで見つけた掘り出し物のお酒」
そう言って小さなデスクの傍ら、のんびりとした仕草ではたはたとレノックスを手招きする人は、いらっしゃい、と呑気な顔でにっこりと笑って、もうすぐおまえの誕生日だからさ、一緒に飲もうと思ってとっておいたんだ、と。
やわく輝く実りの榛色の瞳でなんとも楽しそうに嘯いた。
「さて。ここからはお待ちかねの大人の時間だ」
「フィガロ先生」
「きみ、今日はだいぶ飲んでいたみたいだけど。まだ飲めるだろう」
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