虫刺され「かゆい! 変なところ刺された! くっ、手が届かん! せいぜい長生きしろよ蚊のやつ!」
「……何やってんのれおくん?」
リビングで一人、背中をウネウネと動かして角度を変え、襟ぐりから手を突っ込んで必死にもがいているれおくんを見下ろした。
「あっ、セナ! おかえり! あと助けて! 痒すぎておれの神経が悲鳴をあげている!」
「……はぁ? なにそれ?」
「答えを急ぐな妄想しろ! って言いたいところだけれどおれの方が限界だからもう言っちゃう! セナ、背中掻いて…?」
パタパタと背中を掌が泳ぐ。ああ、なるほど、どうやられおくんの手では届かないところが痒くて仕方ないらしい。
「ふぅん…? どうしようかなぁ~?」
「事は一刻を争ってるんだ! お陰でまだご飯が炊けてない!」
1913